後④
「ええ。ですので、煮るなり妬くなりと。その代わり――我々をどのようにしてもかわいませんが。一つ。頼みを訊いてほしいんですよ」
「お前――まだ陛下に頼ろうというの?」
エリザベートが美代を睨み言った。
「はい――そうです」
頷く。
「頼みって?」
「陛下!?」
ローザの思わぬ答えに、エリザベートが驚く。
「まあまあ――聞こうじゃないか。人手不足は俺らも同じだ。それが増えるならそれに越したことがない。それに――美代。お前のことだ、俺に不利益なことではないのだろう?」
美代ならば、ローザにとって不利益な交渉は持ちかけない。ローザは自分に不利益ならば、了承をしないことを知っているからだ。
「ワタシ達二人が逃げる際、手を貸してくた人が居まして……」
「銀河と月か?」
「そうです。他数名――ワタシと同じ世界の者。彼らのおかげでどうにかここに逃げ込むことはできましたが……」
美代が沈黙して、カレンが続ける。
「どうやらぁ――捕まっちゃったみたい。流石にそうなるわよねぇ。本艦の連中相手だと」
それを訊いて。ローザは深くため息をついた。
「助けて欲しいのです。そうしていただければ、ワタシ達二人は勿論。他の方々もアナタに協力します。ですので、お願いします」
美代が頭を下げる。
「ホントはこんなことしたくないのだけどぉ……。カレンからもお願いするわぁ。――助けて欲しいの」
カレンも頭を下げた。
「陛下」
「お兄様」
腕に抱き着く、左右の二人が不安そうにローザ見上げ、見つめた。
それにローザは目を瞑り、小さく息を吐く。
――目を開け。
「この後、頑張ってくれた子たちと、守りの境界ができた祝勝会だったんだが……仕方ない。たまには招待客を増やしてもいいか」
そうローザは笑って、言って見せた。
「それでは」
「いいの?」
二人は顔を上げた。
「祝勝会前のパフォーマンスだ。庭園総出で招待しよう」
ローザはいたずらじみた顔をし、ティアラが目覚め。エリーゼとエリザベートが不満な顔を見せる。
喫茶店に気配を消すように居た、少女たちがローザ達の席を自分たちの席から眺めた。
庭園の喫茶店に、ステンドグラスで薔薇の紋章の刻まれた扉があらわれる。
-完-




