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全ては輪廻の中 転生へと帰っていく

「はあ――はあ……」


 息を整え、自身の存在を確認する。


 間違いない。全力だ。


 オレ様の全ての力、全ての存在を出し切った。

 その攻撃は世界どころか、その上位の空間を斬り破り、理を生むほどに――神すら超越し、この世の原となるその地に傷を刻む力。


「ははははははっ――」


 最大の歓喜に笑いを上げる。

 

「はははははは……」


 不思議だった。

 願いがかなった。本気を出すという。オレ様の最大限を知るということ。それを成し遂げて、オレ様この世の何者よりも強いこと、なにをしてもよい自由を手に入れた。


 爽快たっだ。歓喜だった。


 だが――途端。途方もなく何もなくなる。


 なにも……ぽっかりと。穴が開いたように呆けてしまう。


「したいことがなくなった……」


 それだった。何ももうしたいことはない。

 もともとは、転生の輪廻の輪が嫌になって抜け出したが。いざ出てしまうと何でもできて詰まらなかった。

 だからこそ、力を求めた。強さを。強い力を。

 そうして――やり切った。もうこれ以上は望まない。それほどまでに。出し切った。


 だからなのか……このむなしさは……。


「はっ!人間、目標なくしたら終わりだって言うが、ホントだなおい」


 虚しくなる。


 武曽は瓦礫の山に腰をかけた。


「この世界で――いっそこのまま消えてしまうのもいいかもな……」


 ぼやくオレ様の前に何者かが現れる。

 

「望みは?」


 一言そいつは声をかけてきやがる。


 オレ様の願いは一つ。 


「……転生の中に戻してくれ」


 戻ろう。目標がないのならば、一からやり直して。毎回のように。生きようと思う。

 無限の輪廻は嫌になったが――それがどうしてそうなるのか、なんとなく理解できた。残れば残っただけ、欲するものがなくなる。一度手にしてしまえば次のモノへ、また次のモノへ。だが――すべてを手に入れたら?

 それがオレ様だ。全てを手に入れた結果、最後に残るのは。何もない。いや――なにもいらなくなる。それは、存在すらむなしいことなのかもしれない。

 少なくとも、オレ様はこんな感じ合わない。

 なにせ、今まで何べんも人生という目標を最大限に立てて転生を繰り返してきたんだからな。


「いいだろう」


 その言葉に安心する。

 オレ様は自分で輪廻に戻っちまえば、ゆっるい世界に飛びかねないからな。誰かにされた方が、どこに行くのか楽しみにもなる。


 最後に一つだけ。


「ローザ、テメェは目標がなくなって虚しくないのか?」


 ローザはオレ様と同格だ。そのローザはオレ様とは異なり、こうしている。なぜだ?


 だが、オレ様の質問にローザはいや?と返してくれる。


「お前は欲張りなんだよ。だからそうやって全部手に入れちまう。俺は、多くは望まないだけだ、それが小さく積み重なっている。それでもいつか――俺もお前のようになるだろうな。だが――今はそうはならない。次にやるべきこともある。俺の物語は終わったが、俺は俺以外の物語に関わる。それが俺の目標がなくならない理由。――いつか。俺の住む世界に転生した時、また転生に飽き飽きした時、気晴らしにまた戦ってやるよ」


「はっ……。ザコが――」


 オレ様は転生の中に戻る。次の世界を救うために、新たな命として、どこか知らない新しい世界へ、生まれる。

 そうして、オレ様は今よりも強くなる。今度こそローザという存在を消すために。


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