親愛なる子供たち
「一つ確認をしておきたい」
何か思いついたローザがカレンへ問う。
それに、カレンはなに?と――。
「この件について俺たちが手を貸すメリットは?曲がいなりにも俺たちは敵どうした。ハッキリ言えば、俺たちは、お前の頼みを訊く理由は勿論。その意味もない」
その問いに、カレンは小さく笑った。
「あらぁ――メリットならあるわよ?もう気づいているのだと思ったけど?思い違いだったかしら?」
「というと?」
カレンの言い方に、ローザは顔をしかめて言う。
「武曽――問題になっている男がもし、アナタの世界に現れたら?せっかく元に戻した世界なのに、破壊されちゃうかもしれないわねぇ」
いたずらっぽくカレンが言った。
それをローザは邪見に思いカレンを睨んだが、全てはカレンの言う通りだった。
ローザの異世界転移の旅は終結している。
長い長い旅路の末、その目的であった、ある一つの世界を修復するという偉業を成し遂げた。数百ねんだろうか数千年だろうか途方もない時間、いくたもの世界を回った。その上で成し遂げている。
それは――世界を探すこと。世界を修復の土台となる、修復元と似通った別の世界を探す。その旅の果てが今のローザ。
左腕をなくし、足を悪くし引きずり、黄金に輝く真実の瞳をエリザベートに右片方くれてやり、代償の元ようやく手に入れた結末。
それが、破壊されることは――ローザも本望ではないであろう。
「そう言えば?カレンが切り落とした右腕は治っているのねぇ?髪も黒から銀に変わっているまるで別人ね?」
策略家のように、ローザの先を行くようにカレンは態度を偉そうに言う。
「……お陰様でな。世界を修復した後フィーに一度裏切られてな、人間の体は死んでしまったよ」
「それで――人造人間?作ったのはエリーゼとエリザベートね?」
「そんなことはどうだっていい。だが――お前の言う通り、その男がこちらの世界に来る可能はある」
ローザは声を少し荒げ、関係ないことを話始めようとしたカレンを止める。
「――いいだろう。復活させた世界にセキュリティをつけるついでだ。脅威になっているそいつが、どれくらいなのか参考にさせてもらう」
「あら?いいのねぇ?」
「ただし――条件だ。今後一切、時空管理者は俺たちの世界には口出ししないこと。俺の仲間に手出ししないことだ」
その言葉を訊いて、紅茶を飲み干し、小さく笑った。
「いいわぁ。だたし――アナタのお仲間の件はアナタの世界に居る時のみね」
「いいだろう」
「で?――策はあるのよね?それだけ大口叩いて言うのだもの。それとも――アナタ自ら?」
商談は成立した。だが――肝心な対象法は?
「無茶言ってくれるな。そんなデタラメ人間、相手に俺が開いてできる訳ないだろう。 今回は――親愛なる子供たち(チルドレン)を使う」
「親愛なる子供たち(チルドレン)?」
繰り返したカレンを、喫茶店に潜んでいた小さな瞳の視線がいくつ注いだ。