結晶封印の楔
ローザのため息は、もはや呆れを通り越して落胆へ変わる。
だが――カレンは正気であった。
それしか、ないと。あの強大な力を持つ者を封印できないと確信を持っていた。
<<結晶封印の楔>>(フォールシール)
封印術の一つである。
ただ、ただの封印術とは異なり、この封印は封印で対象を閉じ込めるとともに、閉じ込めた者の記憶を奪う。
そして、奪った記憶をいくつかの欠片に分け、特定の人間に宿す。という封印術だ。
この封印、封印し拘束する力はそこまで強くなが、記憶を奪うというとこが、一種のキーとなっている。
対象になった相手は記憶を奪われ、封印されるため、自身がそもそも何故封印されているのか分からなくなる。
場合によっては、知性が失われ、廃人になってそのまま封印され続ける。
なので、封印力は強くないが、所謂、どんな相手にも通用する封印術である。
エリザベートは以前、この封印術によって封印されていた。それに手を貸すということは、エリザベートに封印されていたころのことを、思い出されることになる。
記憶を失って数千年。途方もない時間、監獄に閉じ込められるそれを――。
故に、ローザの返事は反対だった。
その話が出てしまえば、エリザベートの主人のローザにとってそれは許せないことである。
それでもカレンは食い下がらない。
「これしかないとおもうのよ……」
真剣な表情をして言う。
「理由と策は分かったが。それならエリザベートはダメだ。それこそ、お前らの船を潰しに行くぞあいつは。――そうだな。銀河はどうだ?あいつなら真理の瞳を持ってるだろ」
<<真理の瞳>>(イストワール)
所謂、魔眼といわれる特殊な瞳。ローザ金の瞳がそれにあたるが、時空管理者の中で銀河というとある人物が持っている特殊な力だ。
この瞳は普通の魔眼とは異なり、神眼と言われることもあり、持っているものは世界の真理、世界の理その物に干渉することができる。
能力としては、簡単に言ってしまえば未来予知に当たるが、実際はそうではなく、真にその力を使いこなす者は、自身が願った見たいを導き出して、その未来を実現させる力にもなりゆる。というもの。
この力を使えば、今回の件もどうにかなるのではいのか?というのがローザの意見だった。
しかし、カレンは首を横に振る。
「ギンガはダメよ」
「それは何故?」
「何故ってぇ。ワタシたちの世界以降、彼はあの力を使いこせていない。理想の未来を導き出せない。だから――こうして頼んでるのぉ」
カレンの答えにローザは頭を抱えるようにする。
そして何かを考え沈黙をする。
しばらくして――。