時空庭園
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「経緯は分かったが。なんでここに来たんだよ」
木製の店内。クラッシクな喫茶店に似たその店で、長方形の机を挟み、カレンは細いおしゃれな形をした背もたれのついた木の椅子に座り。静かに悪態をつく相手の言葉を聞き入れながら、優雅に紅茶をすすった。
言われ、カレンが紅茶から口を放し、机に置き、かちゃりと食器と食器がぶつかる音がなる。
「……船に戻れば迷惑をかけてしまうじゃない」
”船”というのは時空管理者の本拠地のことだ。カレンはあの男。武曽の居る世界から世界を移動して、船には戻らず別の場所へと着ていた。
ここは――いや。この世界は――どこの世界にも属さない世界。”時空庭園”そう呼ばれる場所だ。世界を行き来するとある人間の、休憩の地。世界と世界の間。高次元。異次元。そう言った場所に立てられたこの場所は勿論。時空管理者にとっては違法だ。
いわば、敵地である。ここではカレンが殺されようと文句は言えない。だが、それでもここへ来たのには武曽に言った、約束を守らなければいいけないからだった。
あの男と対等に戦える者。ここにいる。ある人物に声をかけるため。死に体の美代を抱えて、この場所へと訪れた。
美代の血に塗れた自分のドレスを見下ろして、あの場で真横で倒れた美代を思い出し、今更ながら、嫌な気分へとカレンはなった。
机の向かい。壁側のソファーの方へと座す青年が、そんなカレンの様子をみて深くため息をする。
銀髪の幼さと勇ましさを持つ顔立ち。銀のフロックコートにを着た、どこか生真面目な青年を持つ。蒼の右眼と金の左眼の青年だった。
ここの――この庭園の管理者にして創生者だ。カレン達にとっては大犯罪者。コード異端勇者そう言われる犯罪者。
ローザはソファーにだらりともたれ、やれやれと言った感じで言った。
「美代はフィーのたっての願いで、今は修復中だ。まあ、24時間ほどあれば完全に元に戻るだろう。幸いフィーが居たからな。居なきゃ今頃、お前も美代もエリザベートに殺されてたぞ?」
死神を殺すとはなんというジョークなのかという話だが。確かに、そうだ。この庭園へと着た時、ちょうど外の園内の庭に出た時だ。そこでフィーと呼ばれるこのローザの使い魔の少女と、運よくカレンは会った。運よくだ。
元の世界で、フィーと美代が仲が良かった。それもあり、こうして美代は治療へと送られ。カレンはのうのうと紅茶なんて飲んでいられる。
あれがもし、別の誰か。特に――エリザベート。そう呼ばれる魔女にファーストコンタクトしていたならば、容赦なく二人とも消し積みにされていたであろう。
それだけのことをカレンはエリザベートにしたというのは確かだが、それはまた別の物語だ。
だからと言って、カレンにとっても、時空管理者にとってもソレどこではない。背に腹は代えられない状況だった。