ウサギ小屋の住人
私の小学校にはウサギ小屋があったが、どういうわけか1年に2.3匹行方不明になるウサギがいた。
施錠もきちんとしているし、地面に穴が空いているわけでもない。
不審者や脱走といった類ではなさそうだ。
そんな不可思議なウサギ失踪事件が相次いだせいか、子供たちの間でまことしやかに囁かれた噂があった。
「ウサギ小屋には何か化け物が住んでいて、時々ウサギを食べてしまう。」
噂は広がり、低学年の子供たちをパニックに陥れたほどだった。
ある日の放課後、肝試し感覚で友人達とウサギ小屋を訪ねた。
当然中には入れず、外からウサギを眺めていただけだったので、私たちは飽きてしまい10分も経たずにウサギ小屋の前でボール遊びを始めた。
ボール遊びをしているうちに、掴み損ねたボールがウサギ小屋に入ってしまった。
外側からボールを取ろうと試行錯誤したが、けっきょく取れず、諦めて帰ることになった。
私たちは家に帰ろうと背を向けた瞬間、友人の背に何かが当たる音がした。
私たちが振り返ると、そこにはウサギ小屋に落ちたはずのボールが転がっていた。