【第二章】第六部分
王子は大きな勘違いをしたようだが、ここでは置いておく。
「ではスリーサイズを述べよ。」
「ちょっと、それってセクハラ直球棒球じゃないの。」
玲羅の抗議に即座にタブレットが反応した。
『よくわからない表現とお見受けしますが、勘違いしないでください。この屋敷の制服採寸のために必要なのです。タブレット画面を大仰に見せたメイド服。イラストのメイドが個人情報は厳密に守ります。王子は例外です、ゴメンナサイ。』
「し、仕方ないわね。上から◎◎、〇△、××よ。」
◎、△などの評価記号で回答した玲羅。意味が通じたのか、メイド服たちは納得していた。
「最後の質問だ。玲羅とか言ったか、学校はどこだ。」
「大王寺学園よ。王子のことは知ってるけど、たまたま通りかかって見かけただけなんだからねっ。」
「同じ学校だと?メイド長、大王寺学園からの採用はダメだとあれほど言ってただろう!どうしてこんなことになったんだ?」
『さあ、ポスターには『学園生徒を歓迎しません』と明確に書いていたはずですが。』
やはりタブレットでの会話を行うメイド。みんな同じタブレットで同じ文章を見せているので、誰がメイド長なのか、定かではない。クローンの可能性すらあり得るかもしれない。ここは人体実験を辞さないと噂される大王寺製薬の邸宅なのだから。
「あたしが見た電柱ポスターには、『歓迎します』と書いてあったわよ。」
玲羅がそう発言した瞬間、その電柱が映し出された。監視カメラを設置しているらしい。ものの見事に、玲羅の主張は証明されて、検事サイドな大王寺側はあっさりと敗訴した。
『この筆跡からしてどこかの子供がイタズラ書きしたに相違ありません。』
「そんなことは当然予想されるだろう。それを回避するようにしておくのが危機管理じゃないのか!」
椅子から立ち上がって憤る王子だったが、時すでに遅し。
『こうなったら、仕方ありません。この女子にガラスのクツワを嵌めて記憶を消すしかありません。』
「まだ秘密はバレてないだろうが!」
「秘密って何のこと?」
『王子は女子にモテモテです。それも半端ないレベルです。』
「そ、そんなことぐらい、知ってるわよ。でも、あ、あたしは王子なんかに、全然興味ないんだからねっ!」