【第二章】第五部分
こちらも声は出さず、画用紙に書いた文字を全員が示していた。
調度品があまた並べられた体育館級の広大な部屋には、黒いメイド服が二列に並んでいた。
「スゴい数のメイドさん。大きなお屋敷だとこれぐらいは必要なのかしら。よくわからないけど、なにか変だわ。」
たしかに黒メイド服は全員が黒いサングラスにマスクをしており、なんとなく、からだ全体的に違和感がある。
黒メイド行列はL字型二列に並んでおり、いちばん奥にドアが見えた。
『そのまま列の先に行ってください。』
メイド行列は全員でタブレットを持ち、その画面で指示をした。
「あたしを誘導しているみたいね。言う通りにするしかなさそうね。」
列の道なりに移動する玲羅。黒サングラスの中から感じられる視線が肌にイタい。
黒サングラス行列の一番先に到達した玲羅の目に入ったものは、目を開けられないような眩しい煌めきだった。
「全面ガラス張りのドアだわ。それもカットがすごくて乱反射してて、中が全然見えないわ。」
たしかに、薩摩キリコのようにきれいな幾何学的造形が描かれており、豪奢かつ華麗な両開き型のドアである。
玲羅が扉の前で戸惑っていると、ガラス張りの扉は自動で開いた。
そこには左右に四人の黒メイドがその後ろの人物を護衛するように並んでいる。
奥には大企業の社長が座るような大きな木製の机と椅子が置かれており、そこに玲羅の見覚えのある人物が座っていた。ふわふわの襟巻き付きの純白の学ラン、加えて透明なガラス縁のメガネ。レンズがカットガラスでできている。
「あれ?あんた、まさか大王寺学園の王子?」
玲羅は失礼にも王子を指差していた。それも一本指をまっすぐに伸ばしてである。それだけ、びっくりしたということではある。
「オレのことを知っているのか?」
王子には想定外だったのか、こちらも目を丸くしている。
『王子は有名人ですから、そういうことはあり得ます。』
ここでもタブレット会話である。
「ならば仕方ないな。そこの女子。名前、年齢、趣味を述べよ。」
「なんだか高飛車な物言いねえ。まあ面接だからいいけど。新堂玲羅、花も恥かきっこ十六歳、火事全般よ。」
「親が高年齢者で、放火が趣味か。面白いな。」