【第二章】第二部分
放課後となり、部活に入っていない玲羅は帰宅していつもの通り掃除をしていた。
この家の掃除当番は三人姉妹の末っ子の玲羅が担当するというのが新堂家のキマリに
なっていた。
玲羅は自分から進んでやっているわけではないので、いつもブツブツと愚痴を言いながら、職務を遂行していた。気持ちが入ってない仕事は、いきおい雑になり、それが原因で、ふたりの姉と玲羅の折り合いは悪かった。
今日も床に掃除機をかけている玲羅。そこに姉たちが喋りながら二階から降りてきた。身長差がかなりある姉妹である。
「大王寺オニイチャン、いつも凛々しいでちゅ。あんなのナイスバディを包み込んだお気に入りのワンピースで、オニイチャンのハートを鷲掴みするでちゅ。」
ワンピースではあるが、スカイブルーの幼児服を着た外見はほぼ幼女。手書きで、『あんな』と書かれている。幼児文字である。しかし、出るとこはしっかり出ていて、名札が立ち上がっている。名前は新堂杏名、玲羅の姉で長女である。
「あははは。そんなちんちくりんな身長じゃ、王子とはまったく釣り合わないしぃ。あたいのようなスレンダーガールが王子の横に立つと見栄えがするじゃん。だからアナちゃんには無理だしぃ。」
こちらはポニーテール、蛍光黄色のシャツをブラウンのパンツに押し込んだ高身長の美少女。長い睫毛には赤いマスカラ、通った鼻筋に、ラメの頬紅が魅力的なギャルである。全体的にスレンダーで、起伏が欠乏しているのが、玉にキズ。こちらは新堂理世、次女である。
「また、アナちゃんって言ったあ!りぜ、あんなの方がおねえちゃんなんだから、名前を短くして呼ぶのは不敬罪でちゅよ。」
「名前が長い方が不経済なんだよ。それにアナちゃんの方が呼びやすいんだよ、穴だらけ、隙だらけの女の子みたいで。あははは。」
「またあんなをバカにしたでちゅ。こうなったら、こうなったら、この怒りをどこに持って行けばいいのでちゅか?パシっ!」
「痛いよ、杏名お姉ちゃん、どうしてあたしに当たるのよ?」
杏名の怒りの矛先は不当にも玲羅に来ていた。
「悔しいけど、背の高いりぜには手が届かないからでちゅ。」
「そういうことなら、こうしちゃうけど。たかい、たかい、たか~い。」
玲羅は杏名の両脇を抱えて持ち上げた。
「ホントに高いでちゅ。これなら、りぜと対等に渡り合えるでちゅ。って、違うでちゅ。あんなはこんなことしたいわけじゃないでちゅ。りぜ殺すにゃ、刃物はいらないでちゅ。れら、あんなをどりぜらの方に向けるでちゅ。」
「なにがしたいのか、よくわからないけど、こうかしら。」
玲羅はリフティング中の杏名の全身をドリゼラの方に転換した。ポジション的には、杏名の顔が理世の胸部に面した格好である。
「この一言があればいいでちゅ。どりのド貧乳!」
「カチ~ン!あたいのいちばん気にしてることを!」
「や~い。そんなおっぱいじゃ、オニイチャンはぜったい振り向いてくれないでちゅ。健全な青春謳歌中のオニイチャンはきっと、巨乳好きでちゅ。だからオニイチャンはあんなにゾッコンになるでちゅ。」
「そんなちんちくりんなアナちゃんを王子が相手するわけないじゃん。」
「またちんちくりん言った!」
ふたりは取っ組み合いのケンカを始めようとしたが、身長差が大いにジャマをした。
「お姉ちゃんたち、やめてよ。掃除の途中だよ!」
仲裁に入った玲羅だったが、ふたりの服を引っ張ってしまった。
『ビリビリ、バリバリ。』
「あっ!!」
家の空気が停止した。
お気に入りの服を破られるのは、女子のお宝を破壊するに等しい。