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【第三章】第十一部分

黒メイドたちが廊下でヒソヒソとやっている。そこを玲羅が通ると、急に静かになる。これだけを見ても、黒メイドたちのウワサ話の対象が玲羅であったことが容易に想像できる。

「フンだ。いくら悪いウワサをしようたって、所詮モブな黒メイドごとき。それに首謀者は無能な白メイドだし。できることなんて何もないんだから。」

強気な玲羅だが、表情には険しさが滲み出ていた。


凛子は空き部屋をストーカー部部室として勝手に使い、杏名と理世を集めて部活を行っていた。

「あんたたちは赤メイドの身内じゃろ。あんたたちは赤メイドに恨みつらみはないのか?」

「あんなはれらのこと嫌いでちゅ。全然言うこと聞かないし、あんなのことをちっちゃい言うし。でもたまにたかい、たかい、をやってくれるのはうれしいでちゅ。」

「そうだな。あたいは好きでも嫌いでもないかなあ。あまり害がないっていうか、文句言いながらも家事やってくれてるしなあ。」

「そうじゃろうな。でもそれじゃあ、困るんじゃよ。怒りにまかせて、爆発してもらわないと。」

「そう言われてもあんなはそこまで怒らないでちゅ。」

「あたいもアナちゃんに同じかな。」

「それなら仕方ないのう。強制的に怒ってもらおうかな。」

凛子はドリンクを二本手に持った。胸より下のポジションで構えている。

「なんなんだよ、それは。アナちゃんの目の前だから何かわかるかな?」

「『大王寺製薬徳製リンゴジュース』というラベルが貼ってあるでちゅ。ちっちゃい子のあんなにも飲めるでちゅか?」

「自分でちっちゃい、言うな。もちろん、飲めるぞ。このジュースは略称『徳リンゴジュース』と呼ばれておる。これを飲んだら、胸はパンパンになるし、背は伸びること請け合いじゃ。」

「本当か?それがホントならあたいは飲むよ。」

「あんなもほしいでちゅ!」

「大丈夫じゃ。大王寺製薬のロングセラーヒット商品で、厚生労働省認可済の医薬部外品じゃ。」

「それならあたいは飲んでもいいな。」

「あんなも飲むでちゅ。」

 ストーカー部のふたりはドリンクを飲むと、『ぎゅるるる』という音がからだから鳴った。

 理世は胸の辺りを押さえて、杏名の背筋がぎゅんと伸びている。

「おふたりさん。ほら鏡を見なよ。」

 真白は鏡を二つ示して、理世と杏名をそれぞれ映した。

「む、胸が大きく膨らんだような感覚があるよ!ふあああ~。」

「長年待ち望んでいた背が伸びたでちゅ!ふあああ~。」

 ふたりはあまりの嬉しさに、気持ちが切れて、目の色を失った。

「よし。うまくいったぞ。これでおまえたちはワシの奴隷じゃ。ストーカー部としても命令はできたかもしれぬが、心底言うことを聞かせるためには、こうしないとじゃな。なお、この商品が売れている理由は、ガラス製のオマケが付いていることなんじゃ。容器のビンを加工する技術を応用して、ガラスの指輪やブレスレット、定規やペンシルなどの文房具などを付けておる。それがミソなんじゃがな。」

 凛子は鏡を床に投げ捨てた。ふたつとも凹面鏡であった。


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