【第二章】第二十七部分
すでに日が沈み、真っ暗になってきた。何か出そうなフンイキが満載のまま、理世たちは大王寺屋敷に着いた。
「れらが入ったのはこの屋敷でちゅ。ここって、オニイチャンのおうちじゃないでちゅか。」
「そうだね。うちから近いんだけど、あたいらは畏れ多くて近づくことすらできなかったよね。」
会話しながらもすでに四つん這いになり、建物に向かって匍匐前進するふたり。しかし、理世は身長が高いだけに、けっこう目立っている。
「アナちゃんは、目立たなくていいよな。ちっちゃくて、監視カメラにも引っかからないよな。」
「またちっちゃいって言った!あんなはすぐに大きくなれるんだから。」
杏名は、両腕を空に向かって引き上げた。『たかいたかい』を要求しているのである。
「もう仕方ないなあ。アナちゃんは一度言い出した聞かないからなあ。」
理世は仰向けになり、自分のお腹の上で杏名をリフティングした。
「すごいでちゅ。高さはあまりないけど、りぜの敗北顔を見下ろすことができて、絶景かな、絶景かなでちゅ。」
すっかり満足して、恵比須様も逃げ出すような満面の笑みで、頬の筋肉を弛緩させている杏名。
『パープーパープーパープーパープー』
当然ながら、警備の黒メイドたちがやってきた。その先頭にはメイド長が立っている。
「あなたたちは不法侵入者ですね。この屋敷で犯罪を冒すということは、筆舌に尽くしがたい罰を受けることになりますが、それでよろしいでしょうか。ニヒヒ。」
理世が立ち上がって、メイド長の眼を睨み付けた。
「あたいはこの迷子のおこちゃまを探してここに入ってしまったんだよ。ほら、こんなにちっちゃい幼女だよ。かわいいだろ?たかい、たかい、たか~い。」
理世は再びたかいたかいをして、杏名をあやすポーズ。
「あらあら、たしかにかわいい女の子ですねえ。しかし。」
メイド長の見上げる視線の先にあるのは、ふたつの山。タップン、タップンと波打っている。
「なんだか、ひどくムカついてきました。これは決して劣等感なのではなく、犯罪を許さないという正義の怒りです。その物体は幼女ではなく、女子高生であることは明白です。ナヒヒ。」
どうみても笑いに聞こえないメイド長の語尾。
「どうして女子高生だとわかるんだよ?って、大王寺学園の制服だから当たり前か。」
「その通りです。メイドをバカにしてはいけませんよ。バカにするというのは、こういう視線を指すのです。勝利のニヒヒ。」
いつもの笑いを復活させたメイド長は、理世の超フラットな胸と自分のそれを見比べて、悦に入った表情を浮かべている。
「もう頭に来たよ。このあたいに、それだけは言ってはならなかったんだよ。こうなったら、告げ口モード!」
理世は自分の横に咲いている黄色い花に話しかけた。花の回りには黒メイドたちが立っている。




