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【第一章】第二話

 こうして、白雪姫の病状が回復したら、懲りない王子様は再び女探しに励んでいた。

白馬に乗って町を歩くが、なかなかメガネに叶う女子が見つからない。たくさんの女子を食いものにした結果、王子の要求レベルが高くなっていたのである。

「モブにかわいい娘がいるというのはアニメだけの世界。巨乳でナイスバディでおしとやかな女の子、いないかなあ。」

城の中で王子が嘆いていた。一般論として、女子の巨乳率は低く、加えてナイスバディとおしとやかとなると、5%に満たない。小さな町ではそんな女子にはめったに出会えないのが現実世界である。

細目メイドが眉間にシワを寄せている王子に諭すように話しかけた。

「自分ひとりでギャル探ししやがるのは時間的に限界があります。ナイスバディを探すならば、ミスコンを実施したらいかかでしょう。これならば、城下町の活性化としての公式行事として、白雪姫様どころか、万人に気兼ねすることなく、女子探しが可能となります。」

「それはグッドアイデアだ。ミスコンと言えば水着だな。俺も堂々と審査委員ができるではないか。これはあくまで合法的だからな。何の遠慮もいらない。とことん女子ボディを舐め回すように、視姦して、穴があくまで悪魔的に審査してやるからな。ワハハハ。」

「王子様は巨悪をコンプリートしやがったようです。」

こうして、城下町ミスコン開催令が布告された。優勝者には、ガラスの水着が与えられ、街のキャンペーンガールを務めることとなった。

「ガラスの水着を着たら体のいろんなパーツが見えてしまうという、いかにも王子様らしい、ドスケベな賞品です。悪もここまで来やがったという印象です。」

「ほっとけ。庶民にとって、とても手の届かない超高価なガラス細工の水着だぞ。それにミスコンの目的は町おこしなんだから、行政上も特に問題はない。すぐに応募開始だ。」


こちらは街外れのごく普通の一軒家。ミスコンのお触れを見た三人の姉妹が、リビングでソワソワしている。

背が高く、赤いワンピースを着た女の子が鋭い目つきを、牛のような巨乳を保有するブラウンのワンピースの女の子に向けた。

「ドリゼラ。あなたもミスコンに出るつもりじゃないでしょうね?王子様が審査員になるミスコンはこのスーパーモデルのアナスターシャで決まりなんだから、出るだけムダよ。」

 赤いワンピースの女子は、腰まである髪と目が赤く、少し骨張った顎が気の強さを表現している。

「アナお姉ちゃん。スーパーモデルって、誇大広告かつ誇大妄想はやめてよね。背が高くてカッコいいのは認めるけど、ただのJKモデル、それもバイトだし。そもそも何度もオーディション落ちてるし。それにお姉ちゃんの背が高くて、釣り合う彼氏不足に悩んでることを知ってるんだからね。」

「ドリゼラ、人の気にしてることを声高に言ったわね!ムダはその牛チチだけにしなさいよ。体型はすでにデヴュ夫人なんだから、水着着たら体形バレバレになるし、ミスコンに出ても落選確実だわ。」

「アナお姉ちゃん、ひどいよ!アタイだって痩せる努力をしてるんだよ。ボリボリ。」

「言ってるそばから、その脂ぎった高カロリーポテチ食べて。」

「このポッチャリ体型が王子様のハートをブレイクさせるんだよ。王子様は巨乳好きらしいから、この2つのおっぱいで、メロメロメロメロンだよ。」

ドリゼラは自分の丸顔に似た形状の青い瞳をぐるぐると回して見せた。背中まで伸びた茶色のポニーテールも同時に揺れた。

「それは巨乳じゃなく、爆乳だわ。過ぎたるは、及ばザルという新種猿人は滅ぼされるわよ。」

「ひっど~い!もうヤケ食いしてやる!バリバリ。」

ドリゼラがポテチを乱れ食いしたため、カスがあちこちに散乱した。

「あ~あ。こんなに床を汚しちゃって。ほら、シンディ。ボケっとしてないで、早く片付けてよ。三姉妹の末っ子なんだから、メイドとして働くんだよ。」

「はい。わかりました。アナスターシャお姉様。シンデレラは誠心誠意、お姉様たちに尽くします。それがシンデレラの生きがいです。」

薄汚れた箒を持って、立っているメイドがいた。濃紺のメイド服の裾が少し擦り切れている。金色の長い髪とつぶらだが強い同色の瞳が輝いており、地味なメイド服と対照的である。

「それでこそ、シンディだよ。いつも素直にアタイたちの言うことを聞いていればいいんだからね。」

「はい、ドリゼラお姉様。たくさん言いつけをしてもらえるとシンデレラは光栄です。」

体を少し動かしたシンデレラの胸が大きく弾んだ。ドリゼラの爆乳ほどではないが、かなりのボリュームを誇っている。メイド服の上からでも形がお椀型で整っていることがよくわかる。

「まさかとは思うけど、シンディは、ミスコンの日も家でメイドを務めるわよね?」

「アナスターシャお姉様。当然です。そもそもシンデレラがそんな大会に出るなんて、大それたことはできません。第一、ミスコンに出るための水着も持ってませんし。そんなことより、家を綺麗にすることがメイドであるシンデレラの生きがいです。」

「ハハハ。シンディ、自分の立場がよくわかってるわね。本当に素直でいい妹だこと。」

「お姉様に誉めていただいて光栄です。シンデレラはこれからもメイド道に精進します。」

 姉ふたりは機嫌よさげにそれぞれ自分の部屋に戻っていった。

 リビングにひとり残されたシンデレラは、箒を持つ手を動かしながら、ちょっと悲し気にポツリと呟いた。

「ああ。アタシもミスコン出たいなあ。王子様って、どんな男子なんだろう。一度見てみたいし。王子様がアタシを見たら、どんな顔するだろう。でもかわいい水着もないし。出たいけど、出ることができない。つらいわ。ううう。」

 シンデレラの箒は、自分の涙でぬれた床を掃除するための道具になっていた。


 町中の女子たちがミスコンで勝利を勝ち取るために、日夜美顔や、ボディ磨きにと努力しようとエステやスポーツジムに通い始めた。

 その結果、そういう店の売上だけでなく、ついでに立ち寄る飲食店の来客数も増加した。もちろん、水着店の売上も過去最高となった。

 つまり、町全体への経済効果が出てきたのである。これにより王子様の人気はさらに高まっていった。ミスコンの参加者もさらに増加して、王子のシュミを大きく超えて、一大イベントとなった。

 そしてミスコン当日。たくさんの水着女子が城の大広間に集合した。普段は社交パーティーなどに使用されている部屋である。ステージが設営されており、審査員席もある。ひとつだけなので、審査員が誰かはすぐにわかる。

 大広間の控え室から女子たちを覗く王子。

「これは絶景だな。こんなにいっぱいの水着を生で見られるとは、俺は幸せ者だな。よりどりみどりとは、まさにこのことだな。ワハハハ。」

「王子様。ミスコンの前にこれはどうでしょうか。」

 細目メイドが黒いビキニを着て、王子の前に出てきた。水着のまま、四つん這いになり、女豹のポーズを取った。意外なほど、胸の谷間が強調されている。

「ぐッ。こ、これは!ごくん。」

「フフフ。王子様の喉越し、いい感じにしやがれです。」

「なんて、冗談はさておき、早く始めてくれ。」

「ちッ。せっかくのメイド脱却チャンスだと思ったんですが。忌々しいですが、ではミスコンを始めやがれです。」

 白いタキシードの王子が白馬に乗って、ステージに出てくると、黄色い拍手の大喝采となった。馬上で会場の女子たちに向かって、大きく手を振ると、会場のボルテージはさらに高まった。

 王子は馬を降りて、審査員席に腰を下ろした。

「今日はみんなここに来てくれてありがとう。厳正な審査に努めるから、自分の最高のボディ、じゃなかった、パフォーマンスをみせてほしい。」

 会場の女子たちは王子を見てざわついた。

「さすが、王子様」「かっこいい」「でも王子様って、女漁りに忙しいというウワサもあるわよ」「ミスコンって水着でなくてもいいんじゃないの」「水着は王子様ご指定らしいわよ」「健全な青少年ならそんなこと当然よ」「それって健全なのかな」「王子様なんだからなんでも許されるのよ」「これぞ玉の輿なんだから」「あたし、この前王子様にナンパされたけど」「私もだけど」「アタイもだよ」「うちも声をかけられたけど」「どんなにスケベでも王子様は王子様よ」「このミスコンの先には王妃ロードが待ってるんだから」「そうよ」「そうだわ」

 女子の狙いはいつも権力・経済力・社会的地位であることは、どこの世界でも同じである。

王子のためのミスコンであることから、ギャラリー不在で、オタクたちの余計な喧騒はない。

ステージの脇にはガラスの水着が飾ってあり、スポットライトを浴びて輝いている。

「それではエントリーナンバー一番の方、どうぞ出やがってください。」

「よし、行くわよ。ガラスの水着と王子様のハートをゲットしてやるからね。」

細目メイドのアナウンスに従って、ステージに上がる花柄ビキニの女子。Cカップで胸を誇示して、ウェーブかかった黄色の髪をかき分けている。

女子は右腕を後ろ頭に回して、腰をひねり、ウインクするという、定番かつ鉄板な悩殺ポーズ。王子は顎に手を当てて考えていた。

「う~ん。いい感じなんだが、パンチが足りないなあ。落選。」

「ええ?この日のために、どれだけエステに通ったと思ってるのよ?」

「クレームはいっさい受付けやがりません。この審査に不合格でもあなたは綺麗になりやがりました。輝きを持つことができたのです。自分磨きに成功したことが自分への贈り物なのです。」

「そう言われればそうかも。ま、いいか。」

花柄ビキニ女子は納得して、ステージを降りた。

「エントリーナンバー二番、どうぞ。」

次々と水着女子がステージに上がっていく。

「これもいい線いってるんだけどなあ。」

王子の審査は厳しく、次々と落選していく水着女子たち。しかし、細目メイドの巧みな話術で、不満を持ち帰る女子はいない。

不埒な審査は夜まで続いた。



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