【第二章】第十三部分
翌日は日曜日なため、玲羅は朝から赤メイド服で家事に従事していた。手慣れており、そこは特段支障ない。問題は別のところにあった。
黒メイドの中にひとり異質なメイドがいた。純白の短いメイド服を着ている女子。
純白メイドは、白い大きなリボンが頭と腰に付けてある。黒いサングラスとマスクだけは同じであるが、他のメイドとはあきらかに違う。第一、家事などしておらず、ぶらぶらしている。
玲羅が気にしているのは、ある意味当然である。ずっと玲羅のそばに座って、玲羅をガン見しているからである。
純白メイドの隣には黒メイドがいて、椅子を動かしたり、扇で仰いだり、お茶を出したりしている。メイドがメイドを接待している状態である。
さらに、純白メイドは、家事をする玲羅の近くにいては、玲羅が掃除したあとにゴミを落としたり、整えた花瓶の位置をずらしたりしている。明らかに悪意のある営業妨害である。
加えて、純白メイドは、桃色のドングリ眼で玲羅をギロリと睨んでいる。
みるに見かねて、玲羅は純白メイドに物申した。
「ちょっと、あんた、さっきからあたしの邪魔ばかりしてるわね。何かあたしに恨みでもあるっていうの?」
「恨み?そんな生野菜なものじゃないよ。」
「生易しいって言いたいんだろうけど、オヤジギャグにもならないわよ。そんなことどうでもいいわよ。だいたい、あんたもメイドならメイドらしく、家政婦は見たけど、ニタニタしてればいいのよ。」
「何を見たって言うんだよ。メイド服はただのシュミであって、シロはお兄ちゃんのために存在するんだよ。シロはお兄ちゃんと全く血の繋がりのない妹なんだから!」
「それって、真っ赤な他人じゃないの。他人ということはここの使用人なのに、特別なメイド服なんか着ちゃって、特別扱いはあたしだけでいいのに、なんだかムカつくわ。」
「真白お嬢様。おたわむれはやめてください。お嬢様は両親を同じくする超同一血族の妹です。残念ながら。ニヒヒ。」
「メイド長。そんなダメ押ししないでよ。シロはお兄ちゃんのために、作られた実の妹人間なんだから。」
「真白様。そういう表現をすると、倫理的人道的に問題がありますからご注意ください。でも非人間的なところは真白様の魅力です。二ヒヒ。」
「相変わらず、口が悪いよ、メイド長。とにかく、お兄ちゃんはシロを心底愛してくれてるんだよ。ほら、こうしてサングラスとマスクをすればお兄ちゃんに近づけるんだから。お兄ちゃん、抱き、抱き、抱き!」
たまたま廊下を通りかかった遼斗にいきなりダイブした真白。
「ぎゃああ~!」
真白は兄遼斗に触れた瞬間に倒れた。
「真白様は、王子を抱こうとすると、体に電撃が走るのです。ブラザーコンプレックスによるストレスが体内に静電気を蓄積させて、それが王子に触れると一気に放電してしまうという仕組みで、実にいい気味です。二ヒヒ。」
「メイド長。真白を片付けておいてくれ。」
そう言い残して、遼斗は階上に消えていった。
「なんて兄妹なのかしら。これは先が思いやられるわ。」




