【第二章】第十一部分
広い屋敷を案内される玲羅。壁のあちこちに、絵画が飾られている。笛を吹く天使や子供が躍る絵が多い。中でも目を引いたのが、聖母マリアの絵であった。
「これは知ってるわ。有名なエル・グレコの『受胎告知』だわね。」
絵画の他にもポスターなども貼られているが、赤ちゃんや小さい子のものが多い。
メイド長は玲羅を地下に案内した。
廊下を進んでいくと、筆で書かれた書道の文字が2枚見えてきた。そこには、『子孫繁栄』、『子孫栄光』とある。
「すごく達筆だわ。きっと書道初段クラスね。」
実際は書道の達人が書いたもので、初段とかにランクされるものではない。玲羅の鑑定眼は小学生レベルであった。
さらに、そこから先にも横幕が続いているが、『安産祈願』『子作豊作』『永久子種』『常時情事』『単独H禁』『最悪複製』などという言葉が連なっている。
「信じられないわ。子供を産むことに関連している言葉だらけじゃないの。」
ビミョーにそうでないものが混入していることの指摘は省略する。
「玲羅さん。これが王子を縛る頚城なのです。もちろん、勉学、運動、芸術、乗馬等は当然習得すべきことですが、子孫維持が家を継承する最大の使命なのです。その動機付けとして、標語を屋敷中に施しているのです。これで『夜力斬』を発揮しない男子はおりませんでした。ニヒヒ。」
「おりませんでした?過去形なの?」
「当然です。だからこそ、大王寺家はここまで続いているのです。しかし、何の因果か、次期当主の遼斗様だけが、女子恐怖症になってしまいました。これは大王寺家にとって一大事なのです。これだけ、洗脳、いや訓練をしても王子に改善が見られないのが現状なのです。ニヒヒ。」
「今、洗脳とか言ったけど。スルーしとくわね。」
「さあ、もう少し奥へ行きましょう。ニヒヒ。」
メイド長はさらに先を見てニヤリとした。
地下の奥から、今度は階段で下った。
「ちょっと、すごく暗いんだけど、足元もなんか冷たい感じで不安なんだけど。」
「大丈夫です。この先にモンスターがいるダンジョンがあるなんていう設定はありませんから。でも井戸とか、ほら穴とか、ホラーとか、ポロリとかあるかもです。ニヒヒ。」
「その四つはどれもイヤな予感しかしないんだけど。」
「冗談です。さあ、到着しました。」
扉のない殺風景な部屋。そこに、ひとりの影がある。
「ゆ、幽霊だわ!こ、コワいわ!」




