【第二章】第八部分
防波堤がなくなれば、女の子という波がショタに押し寄せるのは必然である。
『ドスドスドスドス!』
「きゃああああ~!」
地響きを立てて女の子が遼斗をおしくらまんじゅうして、遼斗は有機物から、ただ悲鳴をあげるだけの壊れかけスピーカーという無機物へとメタモルフォーゼした。
女の子集団が遼斗に接触しようとしたその時、神の声が聞こえた。
「みんな~。おやつの時間ですよ~。」
若い幼稚園の保母さんのおやつタイムを告げる呼び声。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「は~い!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
幼女は原則として、男の子よりもお菓子を選択するゆえに、遼斗の前から立ち去った。
助かった。
「毎日これだから、幼稚園はキライなんだよ。でも女の子がコワいなんてことはないんだからなっ。」
涙目を隠しつつ、突っ張る遼斗。
「へへん。どうだ、ボクは女の子にもつよいところをしめせただろう。」
一転、胸を張って強さを誇示する遼斗。
みつあみツインテのまん丸目の幼女が、遼斗の肩を捕まえた。
「あっ、りょうとくん。あたし、おやつよりりょうとくんのほうがすき。みんながいなくなって、コクることができてよかった!」
幼女に話しかけられた遼斗は、突然のことで一分間フリーズした。
「お、お、女の子に声をかけられた。かたをつかまれた。こ、こ、こ、コワい~!バタン。」
万事休すの遼斗は泡を吹いて、仰向けに倒れた。
腹を上にして泳ぐ金魚状態の遼斗。
「これが王子の実態なの?王子って本当に女子恐怖症なんだ?でもおかしいわ。今、こうしてあたしを見てるのは、どこの誰よ。」
「それはこのガラスハイテクメガネ、名付けて、『女子キャンセラーグラス』のおかげだよ。特殊偏光レンズが入っていて、女の子の画像は老若男女を問わず、野菜に見えるようになっているんだ。」
「ハイテクの割にはずいぶん古典的ねえ。だからあたしがここにいても大丈夫なんだ。どれ。そのメガネをよく見せてよ。」
玲羅はずけずけと遼斗に近づいて、いきなりメガネを奪った。
「何をするんだ!それがないと、俺はダメなんだ~。」




