表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラス作りの君達へ  作者: リュート
2/5

出会いは始まり

「やぁ、良かったよ人がいてさ」


安堵の息を付く草影から出てきた男性は、30代後半ぐらいだろうか、来ているスーツには所々にシワが付いていた。

仮面に覆われていない反面には人懐っこい顔があった。


「僕は八杉和人っていうんだ、君は見たところ学生かな?」


「えぇ、そうです。天井弥彦です、高校二年生です」


同じような仮面とおじさんの…悪い意味では無い能天気というべき雰囲気で毒気を抜かれた僕は、

人と会えた事に少し安心していた。


「そんな学生の君はどうしてここに居るんだい?」


「僕が聞きたいくらいですよ…」


「いや、それなら君と僕は同じ境遇かな?僕は気がついたらこの森にいてね、

時折聞こえる仮面の指示を聞いて歩いていたんだ」


そういって自分の仮面を軽く小突いた八杉さんは困ったもんだとばかりに肩を竦める。


「指示って何ですか?」


「あれ?君は聞いてないのかい?」


「…えーと、僕の仮面は壊れてるみたいで」


すると男性は仮面のせいで全ては見えないものの昔を慈しむような目をしていた。


「それは大変だ。まぁ物を壊すのは子供の宿命みたいなものさ。僕の子供も……おおっとそれは後でだね。

仮面は皆で東にある建物を目指せって言っていたんだよ、細かく行き方をナビゲートしてくれてね。この川沿いを進めば着くらしいんだ」


「そうなんですか?助かりました、貴方がいなかったら僕…いや俺危なかったですよ。この年で迷子なんて格好がつかないですし」


何も分からず歩き回っていた俺は、仮とはいえ、目的地が分かった事に単純に喜んでいた。


「ははは、それならこんな森に居た私も迷子のようなものだよ。偶然とはいえ、僕も一人じゃなくて良かったよ。よろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします」


そういって握手をすると、建物を目指して川上を目指すことにした。


「あぁ。ちょっと待ってくれ、喉が乾いていてね、やっと見つけられた水場だから少し待っててくれるかい?」


そういうとおじさんは俺の横を通り抜け、川に近づくと、耳元を弄り、仮面を外してしまう。


「え?今どうやって?それに仮面は外しちゃいけないんじゃ?」


「起きたときにポケットに鍵が入ってなかったかい?これで外せるんだ。

それに固いこと言わない言わない、目的地は聞けたんだし少しだけなんだから、

それに僕はたまに外しているけど何にも無かったから大丈夫だよ。

一応僕らを連れてきた人がどこかで見ているかも知れないから付けてはいるんだけれどね」


そういうと仮面を外した素顔をこちらに向けた。予想していたより少し更けた印象の顔には、小ジワが細かく刻まれており、

それを強調するように朗らかに笑うと、水面に顔を近づけていった。

鍵なんてあったか?自分のポケットを良く探すと、右のポケットに固いものがある。

取り出すと、少し錆がついた鍵があった。これで外せるのか…

でも、この仮面って何か嫌な感じがするんだよな。

それでも外して大丈夫って言ってるんだし大丈夫なのだろうか。

おじさんが真横に置いた仮面は鼻の辺りで二股に別れており、全体的にひび割れの模様が入っている。

こんなにデザインが違うし、手の込んだことをするもんだな。

何のために作られたのか分からないこの仮面に忌避感を覚えたのは確かだった。


カチャカチャ


「…開かない」


鍵が違うようで、何度力を込めても鍵は回らなかった。



「八杉さん、これって本当に…八杉さん?」


俺は未だに水を飲んでいる八杉さんに近づいていく。


「どうしました?」


「…ぁぁ」


何だ?言葉にならない呻き声を上げ八杉さんの横に膝をつき、顔を覗き混む。


「どうしたんですか?」


八杉さんは目を見開き、水面を凝視して固まっている。


体が小刻みに震えている?


その震えを抑えようと体を丸めているが、震えは身体中に伝染して抑えきれなくなっているようだった。


「大丈夫ですか!?」


俺は震えている肩を叩く。


「そんな…違う…違うんだよ私はそんなつもりじゃない‼」


まるで人そのものが変わってしまったかのように、

あるいは何かに取り憑かれたかの様に一点を見据えている。

どう見ても正常には見えなかった。


「落ち着いて下さい、どうしたんですか!」


「近づくな!!」


「うっ!」


俺の体を力一杯凪ぎ払うかのように突き飛ばす。


予想だにしない行動に、体の踏ん張りが効かず、地面に体を打ち付けてしまった。


「くっ」


衝撃で肺から空気が漏れだし、一瞬呼吸が止まった。


どうしたんだ一体!?


痛みに立ち上がれずに居る俺の視線の先には、八杉さんがこちらを見ていた。


いや、こちらを見ているようで焦点が合っていない。


俺は無意識に自分の体を抱き締めていた。


彼の光を失った瞳に、揺れ動く数多の感情に身体が震える。


あの目に対する異常な寒気が体に広がってくる。


…なんだよこれ!


「ゆう……た」


八杉さんは何かを呟きながら茂みに向かって姿を消していく。


「…ハァ…ハァ」


何が起こったんだ?仮面を外したから?


「仮面とは欺き、守るもの。それは敵であり、自分でもある。受け入れない限り未来は閉ざされます」


川岸に取り残された俺には不可解な謎と八杉さんに捨て去られた仮面から流れる言葉だけが残っていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ