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エピソード2:10 years③

 それから、3日ほど個別メニューが続いた福岡合宿。政宗が体調不良から回復し、統治が3日3晩続いた修練から解放されて……とある朝、朝食前の時間に、3人は久しぶりに顔を合わせた。

「――名杙!! お前大丈夫だったか!?」

 寝癖頭とジャージ姿のままリビングに入ってきた統治を、朝食用の皿をテーブルに並べていた政宗が見つけて、慌てて駆け寄る。

 統治は正直、面食らっていた。大丈夫か――そう聞かなければならないのは、むしろ、自分の方なのだから。

「あ、ああ……佐藤こそ、大丈夫なのか?」

「おう、俺はもう大丈夫だ。なんか……迷惑かけちまったな」

「それは違う、俺が――」


 迷惑をかけたのは、自分なのに。

 彼はどうして、こんなに優しいのだろう。


 統治は口元を引き締め、政宗に向けて頭を下げる。

「佐藤、今回は……悪かった」

「名杙……」

 初対面の時に感じた、プライドの高さはどこへやら。そんな彼の変化に今度は政宗が驚いたが、すぐに口元に笑みを取り戻すと、顔をあげるように促した。

 そして、どこか心配そうな彼に、握りしめた自分の右手を突き出して。

「改めて……これから宜しくな、統治」

 両親や身内以外から、下の名前で呼ばれることに……こんなに抵抗感がないのは初めてかもしれない。

 統治はどこか不思議な感覚のまま、自身も右手を握りしめ、彼の拳に少しだけ乱暴にぶつける。

「いでっ!! ちょっ……何するんだよ統治!! もっと優しく、優しくだな……!!」

「人を勝手に下の名前で呼ぶからだ」

「なんだよ~。別にいいだろう? あ、統治も俺のこと、政宗って呼んでくれていいんだぜ」

「そんな日は来ないから安心してくれ、佐藤」

「何だよー!!」


「――ちょっと!!」


 次の瞬間、じゃれ合う2人の間に、1リットルの牛乳パックを持って、不機嫌そうな表情のユカが割って入る。

「こんなところで遊んでないで、さっさと手伝って下さい。佐藤さん……瑠璃子さんの目、笑ってませんよ」

「うげっ!?」

 慌ててキッチンを見た政宗は、瑠璃子が笑顔(ただし目は笑っていない)で自分を手招きしていることに気付き、大急ぎで移動する。

 そんな彼の背中にため息をつきつつ……ユカは、持っていた牛乳パックを統治に押し付けた。

「これ、全員のコップについでください。あたし、料理持ってきますから」

「あ、ああ……」

 統治が戸惑いつつ首肯すると、ユカはそんな彼をチラリと見上げた後、キッチンの向こうで瑠璃子から顎で使われている政宗(と一誠)に視線を向けて、ため息混じりにこんなことを言う。

「……名杙さんがいなくて、佐藤さん、本当にうるさかったんで。今度からちゃんと面倒みてくださいね」

 そんな彼女に、統治はやはりため息混じりで、心の底から実感していることを呟くのだ。

「俺1人じゃ無理だ」


 ここから本格的に、改めて、3人での研修が始まった。

 午前中は一誠の座学を聞き、午後からは麻里子の実践(『縁』の視え方の切り替えに慣れる、自分や相手の『縁』を触ってみる、など)をこなし、瑠璃子の用意する食事で力を蓄える。

 3人をまとめているのは政宗だった。座学についていけなくなりそうなユカをフォローして、1人で先へ行こうとする統治を引き止めて……やがて、ユカも統治を、統治もユカを意識するようになる。

 そんな研修が8日ほど続いた、とある日曜日。時刻は間もなく11時になろうとしている。気がつけば研修が始まって2週間近くが経過しており、研修も後半戦に差し掛かっていた。

 土日は基本的に全てのメニューが休みである。折角の休日なので、3人をどこかに連れて行こうかと打診した一誠だったが……外へ出た瞬間、あまりの暑さに全員が無言で家の中に戻ってきたのだ。

 と、いうわけで、今日は各自、自由に過ごすことになっている。1階のリビングでテレビを見ていた一誠が、昼食の仕込みを始めようと、ビスケットを咀嚼しながらキッチンに向かう瑠璃子の背中に声をかけた。

「瑠璃子、佐藤君……凄いと思わないか?」

 瑠璃子は立ち止まり、口の中身を飲み込んでから……肩越しに振り向いて苦笑する。

「正直言っていい? 私達……たまにいらんかなーって思うよねー」

「だよな。何だあの理解力とコミュニケーション能力の塊みたいな子は。俺、あんなに人間の出来た『縁故』なんぞ見たことねぇぞ」

「それはさり気なく我々をディスってるってことでいいのかなー?」

「俺も含む、だよ。って、そういえば……3人、どこ行った?」

 ここでリビングに3人ともいないことに気付いた一誠が、周囲をキョロキョロと見渡す。

 瑠璃子はそんな彼に背を向けて、キッチンへと移動しながら返答した。

「名杙君は麻里子さんと、別室で、自分の影響力を抑える自主練中。政宗君は、ちょっと……お姉さんからのお使い、ってところかな」

 そう言って、天井を見上げる。


 4人が外出を諦め、政宗が2階に、一誠がリビングに、統治が麻里子のいる別室へ移動したタイミングで……廊下にいた瑠璃子に気分が悪いと訴えたユカの顔色は、明らかに白かった。

 夏風邪を疑った瑠璃子だったが……彼女の額に触ってみても体温は特別に高くないし、本人も突然気分が悪くなったのだと言う。

「んー……名杙君の影響かねぇ……とりあえず2階で休んどかんねー。午前中の名杙君は1階におるけんが、あんまり降りてこん方がいいかもね」

 スイマセン、と頭を下げて2階へ引っ込んでいくユカと入れ違いに、政宗が1階へ降りてきた。

「瑠璃子さん、ケッカ……大丈夫ですか?」

 恐らく彼も、ユカの体調不良の理由は察しているのだろう。普段は余裕のある笑顔に、若干の陰りが見える。

 そんな彼に瑠璃子は努めて明るく言葉を返す。

「うん、少し離れて休んでいれば大丈夫だと思うよー。後で私も様子を見に行くけんが……」

 ここまで言って、はた、と、何か思いついた瑠璃子は……一度リビングに戻ってメンズの長財布を持ってくると、階段下の廊下で首をかしげる政宗に、笑顔で1000円札を手渡した。

「近くのコンビニで、5人分のアイスでも買ってきてくれるー?」


 その後、無事に瑠璃子の『お使い』を終えた政宗は、買ってきたアイスをユカと一緒に2階で食べてこい、というミッションを仰せつかっていたのだ。

 リビングからは「食費用じゃなくて俺の財布から金抜いたのかよ!?」と驚愕する一誠の悲鳴が聞こえる。そんな彼の声をBGMに、政宗は2人分のアイスを持って、ユカが瑠璃子と一緒に使っている部屋の前に来ていた。

 2階には3部屋あり、最も広い左側の部屋を政宗と統治の2人で、次に広い真ん中の部屋をユカと瑠璃子で、右側にある他より少し狭い部屋を一誠が使っている。

 一応、瑠璃子から「入ってよかよー」という許可は得ている。とはいえ……普段は女性だけが使っている部屋にズケズケと入るのは気が引けた。

 しかし、瑠璃子からは「ユカがちゃんと寝ているかどうかも含めて確認して欲しい」と言われているので、中に入らないわけにもいかず……政宗は意を決して、引き戸の扉を2回、軽くノックしてみる。

 反応は、ない。

 政宗は一度深呼吸してから、ベージュの引き戸を開き、室内に足を踏み入れた。


 フローリングで8畳ほどの部屋の中は、各自の荷物がスーツケースに片付けられており、下着などが乱雑に置いてあったらどうしようと少しだけ期待した政宗少年の期待をあっさり裏切っていくスタイル。

 その部屋の真ん中で、ユカが、ぼんやり座り込んでいた。

 その目は虚ろに虚空を見つめ、焦点が微妙にあっていない。

 小柄な彼女が、もっと、小さく見えた。

「ケッカちゃん……?」

 政宗の声に、彼女がぼんやりしたまま振り返った。そして。


「……何ですか?」


 どこか苦しそうな声を必死で隠しながら、部屋に入ってきた政宗に怪訝そうな表情を向ける。

 クーラーの冷気が逃げるため、とりあえず後ろ手で引き戸を閉めた政宗は、手に持ったコンビニの袋を掲げると、ユカの方へ近づいていく。

 そんな彼へ、ユカが容赦ないジト目を向けるものだから……彼は慌てて、事細かに、現状を説明するのだ。

「瑠璃子さんからのおやつを届けに来たんだ。あ、部屋に入って様子見てこいって行ったのは瑠璃子さんだからな。決して無断で入っているわけじゃないぞ」

「……そうですか、ありがとうございます。置いといてください」

 いつもならばアイスにもう少し喜んでくれるユカだが、今日は特に反応が薄い。しかし、こんなことでめげる政宗ではない。

「そんな寂しいこと言わないでくれよ。一緒に食べようぜ?」

 相変わらずの政宗に、ユカは何度目か分からないため息をついてから……投げやりに言い放った。

「……好きにしてください」

 とりあえずユカの許可がおりたので、政宗は本格的に彼女の近くへ向かう。そして、しゃがみこんでから視線をあわせ、いつもよりずっとぼんやりしているユカに、心配そうな表情を向けた。

「こんなところに座って……横になるとか、壁にもたれかからないで大丈夫?」

「大丈夫です。なんか……寝たりすると余計に気持ちが悪くなって」

「そっか。大変だな。じゃあどっち食べる?」

 すぐに話題をそらして袋の中身を見せる政宗に、ユカは苦笑いで指摘するのだ。

「……コレ、両方とも同じアイスじゃないですか」


 部屋の中央に座って、2人仲良くブラックモンブランをかじっている間……政宗は、ユカが時折ふらつくのが気になっていた。

「ケッカちゃん、やっぱり壁際に座ったら? 寝るんじゃなくて座ってるなら大丈夫じゃない?」

 寝るのがダメなら、壁を背もたれにして座っていればいい。先に食べ終えた政宗が、ハズレの棒を袋の中へ片付けながら提案する。

 まだ半分ほど残っているユカは、そういう政宗から視線をそらしつつ……正直に白状した。

「……実は……座り込んだら動けなくなっちゃって……」

「は!? 足が痛いってこと?」

「その、なんというか……命令系統がうまくいってないっていうか……」

 ユカは言葉を濁すが、それはつまり、自分の意志で上手く体を動かせないということだ。

 彼女の状態から予想以上に深刻であることを察した政宗は、のん気にアイスを食べてしまった自分の行動を後悔しつつ、すぐに気持ちを切り替える。

「重症じゃねぇか……ちょっと瑠璃子さん呼んでくる」

 そう言って立ち上がろうとする政宗の服を、ユカが慌てて掴んだ。

「だ、大丈夫です、大分マシになってきたし、多分、もう少し休んでいればきっと……!!」

「ケッカちゃん……?」

「大丈夫です、から……」

 小さな手で政宗の服を強く握りしめ、そう自分に訴える表情が、あまりにも真剣で、深刻だったから。

 政宗はそんな彼女を振りほどくことも出来ず、その場で少し思案して……。

「……分かった。ただ、そのアイスを食べ終わるまでに改善されてなかったら、俺は瑠璃子さんを呼びに行くからな」

 そう宣言してから、ユカの隣から彼女の後ろに回り込み、どっこらしょと腰を下ろして足を伸ばす。

 そして、彼の動きとともに首を動かして疑問符を浮かべるユカに、笑顔でこう言うのだ。

「よしケッカちゃん、俺にもたれかかっていいよ」

「へっ!?」

 唐突な提案にアイスを落としそうになるユカ。そんな彼女に政宗は胸を張る。

「大丈夫大丈夫、お兄さん、中学生だから」

「知ってますけど……だ、大丈夫ですよ」

「いいから。あーもう年長者の言うことを聞くっ!!」

「ひゃぁっ!?」

 煮え切らない態度のユカに業を煮やした政宗が、彼女の両脇を持ち上げて自分の方へ引き寄せ、半強制的に密着させる。

「佐藤さっ……!?」

 そして、伸ばしていた両足を折り曲げて、おおきくあぐらをかくように座り直した。足で彼女を囲い込みユカが簡単にここから出られないように。

「……ここまでします?」

 ため息混じりに呟くユカに、政宗はいけしゃあしゃあと返答するのだ。

「ああ。俺はまだ、ケッカちゃんのことを信用していないからね」

「ひっど……」

 そんなやり取りの後、ユカは政宗に自分の体重を預けて……ふぅ、と、大きく息をはく。

 その様子を上から満足げに見ている政宗は、次の瞬間、横からユカの顔を覗き込み、分かりやすくため息をついた。

「辛い時はちゃんと言ってくれないと、もっと心配するよ」

「すいません……」

「ま、いいや。アイス溶けちゃうから食べちゃいなって。食べられる?」

「はーい」

 どこか安心した声になったユカが、脇から溶け始めたアイスを口に含んだ。

 このブラックモンブラン、長方形のバニラアイスをチョコレートでコーティングして、その上からチョコクランチをまぶした棒アイスである。食べ進めていくとチョコクランチがポロポロ落ちたり、コーティングがパキッと折れて中のバニラアイスごと落下してしまったりするのでご注意あれ。

 ユカは時間と戦いながら溶け始めたアイスを食べ進めていたが……いかんせん、棒アイスはバランスを崩しやすい。政宗が危ないなぁとハラハラしながら見守っていた次の瞬間、棒に少しだけくっついていたバニラアイスが、チョココーティングの重さもあり、ボトリと塊で落下した。

「うわっ!?」

 落下した先は、政宗の左手の甲だった。ひんやりしたアイスのドロリとした感覚に、思わず顔をしかめる。そしてこれらは糖分の塊なので、早めに対処しないとベタベタになってしまうではないか。しかし、手に届く範囲にティッシュはない。そして自分も持っていない。

 しょうがないので自分で食べるか、と、彼が結論を出して実行する前に……棒に残っていた残りを食べ終えたユカが、アイスがのっている政宗の左手を持ち上げ、自分の口元へ近づける。

 そして、彼の手から滴り落ちそうになっていたバニラアイスの塊を、パクリと口に含んだ。

「ケッカちゃん!?」

 さすがに驚いた政宗が大きな声をあげると、彼の手に残った甘みを丁寧に舐め取ったユカが、平然とした表情で彼を見上げてこんなことを言う。

「……これ、あたしのアイスですから。佐藤さんにはあげません」

「いやいやいやいや、絶対そうじゃないと思うんだけど……お、美味しかった……?」

 左手に残る彼女の唇や舌の感覚を思い出して、顔から変な汗が出てよく分からないことを聞く政宗。そんな彼に、ユカは満面の笑みで返答するのだ。

「はい、美味しかったです。ごちそうさまでした」

「――……」

 その笑顔が、あまりにも無邪気で、無防備だったから。

 政宗はもうどうでもよくなって、肩をすくめて苦笑いを浮かべるしかない。

「……それは良かった。お粗末さまでした」


 その後、政宗に完全に体重を預けて寝息を立てるユカの体を支えつつ……ふと、考える。

 彼女は一体どうして、ここにいるのだろう。

 小学生が夏休みに親元を離れ、こんな特殊な研修機関にいることは、決して普通のことではない。恐らく彼女にも、自分と同じくらい――もしくはそれ以上に深刻な、そんな理由があると思う。

 野次馬的な理由で彼女の話を聞きたいわけではない、ただ……。

「……面白い子だなぁ……可愛いけど」

 自分で呟いて苦笑した。初めて見せてくれた無邪気な笑顔を思い出すと、その直前の彼女の突拍子もない行動まで思い出して、顔がにやけてしまうのだ。


 嬉しかった。

 彼女がまた少しだけ、自分に心をひらいてくれたような気がして。

 もっと、色々な表情を見せて欲しい。自分だけじゃなくてもいいけど、たまにはこうして、自分だけでも構わないから。


 政宗がそんなことを考えていると、不意に、背後の扉が軽くノックされる。

「政宗君、入ってもいいー?」

 扉越しに聞こえたのは瑠璃子の声だ。政宗は顔だけを扉の方へ向けて、「今、ケッカちゃん寝てるんで静かにお願いします」と声をかける。

 扉をゆっくり開いた瑠璃子が、2人の様子を見て……ニヤニヤしながら扉を閉めた。

「あらら……お姉さん、お邪魔だったかしら?」

「そうですね、あと15分くらい遅いほうが嬉しいです」

「おっと言うわね政宗君。まぁ、そういうの嫌いじゃなかよー」

 声のトーンを落としてコチラに近づいてくる瑠璃子は、ユカの正面に回り込んで腰を下ろし、顔色や脈拍などを簡単にチェックした。

「うん、さっきよりマシになっとるねー。でも……どうして布団で寝てないの?」

「なんか、本人が寝転がると気分が悪くなるって、ずっと座ったままだったんです。足腰も動けないくらい悪いのに……どうしてそんなに頑固なんでしょうね」

 その時のことを思い出して政宗が肩をすくめると、瑠璃子は「まぁ、ユカちゃんは頑固なところあるけんねー」と1人で納得してから、丸い眼鏡越しに政宗を真っ直ぐ見つめた。

「政宗君、お昼ごはん用意出来たけど……どげんするー? 交代しようか?」

 その瞳は、政宗の答えを知っていたけれど。

 政宗は考えることなく、瑠璃子に自分の意志を告げる。

「俺が……ここにいても、いいですか?」

 そんな彼に「よかよー」と返事をして、2人分のゴミを持って立ち上がった瑠璃子は……ズボンのポケットからポケットティッシュを取り出して、政宗の傍に置いた。

「左手、汚れとるよ。よかったら使ってねー」

「ありがとうございます……」

「じゃあ、私が食べ終わったら交代するけんが……ごゆっくりー」

 そう言って部屋から出ていく瑠璃子を見送って……政宗は天井を見上げ、ため息をつく。

「……何してるんだ、俺は」

 自問自答しても、まだ、答えは明確に出てこない。当然だ、こんなこと、初めてなのだから。

 小学生の、自分より年下で、妹みたいな女の子を……もう少しだけ、独り占めしたいと思うなんて。


 瑠璃子が退室し、政宗がユカの座椅子になって……20分ほど経過した頃。

「……ん……」

 今まで規則正しい寝息を立てていた彼女の口から、言葉が漏れた。

 ポケットに入れておいた自分の携帯電話をいじっていた政宗は、それを少し離れた場所に置いて、ユカの様子を観察する。

「ケッカちゃん?」

「……え、あ、あれ……」

「あ、起きた?」

「――っ!?」

 次の瞬間、一気に意識が覚醒して現状を――政宗に抱きすくめられるような体勢で彼にもたれかかっているユカが、足をもつれさせながら移動し、彼と距離を取った。

「ちょっ……ケッカちゃん?」

 急に動いて大丈夫かと不安になりつつも、政宗もまた、何が起こっているのか分からない。

 ユカはそんな彼を睨みつけ、ポカンとしている政宗に向かって……こんな言葉を投げつけるのだ。


「な……っ!! ひ、人の部屋で何してるんですか!? る、瑠璃子さんに言いつけますよ!?」

「え……?」


 話が噛み合わない。

 政宗が混乱で言葉を失っていると……階下から、階段を登ってくる足音が聞こえた。

 他人の手の上に落ちたアイスをペロペロ舐める女の子は嫌いですか?

 ……霧原は内心どうかと思うところもありますが、政宗少年は嫌いではないみたいです。(笑)


 そしてブラックモンブラン!! 帰省したら絶対に買って食べてますよ……日本のどの辺まで流通しているのかなぁ……。(http://takeshita-seika.jp/)

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