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第84話  リーナとラザール

 王都に行くと、みんなが歓迎してくれた。黒魔族シュヴァルツも、だ。

 実は、黒魔族シュヴァルツは、私達白魔族ヴァイスが魔王を蘇らせていると思っていたらしい。それで戦争を仕掛けてきたのだとか。でも、実は違うと知ったから、凄い謝られた。謝ってすむ問題じゃないけどね。でもまあ、仕方ない。私達ヴァイスが外交を怠ったせいだろうし。


 みんなでパーティをして騒いでから、みんなと別れ、グリフィン家に帰る。アンジェラさんとエティはわざとだか知らないけれど、私達よりちょっと前を歩いてる。隣にラザールお兄様がいる。しかも、こんな近い距離で。これからやろうと考えている事もあるわけで、余計にドキドキしてしまう。

 取り敢えず疲れたから少し休憩する事にした。今の時間は四時。六時くらいに起きれば良いか。なんて乱れた……。まあ、今日は許して。

 起きたら、ミルヴィナのところに行こう。少し、相談したい事があるの。

 上手く行きますように!




 起きたら丁度六時くらいだった。髪を梳かしてからミルヴィナのところに向かう。

 ノックをすると、すぐに返事が返ってくる。扉を開けて、中を見て。閉めたくなった。


「な、なんで、ミネルヴァさんと、ジェラルドさんが……?!」

「もうすぐリーナが来るだろうと思ってな」

「ええ?!」

「さ、早く座って、座って!」


 仕方なく椅子に座る。あれ、そういえば、アンジェラさんは居ないんだね。居そうなのに。アンジェラさん、私達の事楽しんでるからね。喜んで来そうなのに。……まあ良いか。

 ミルヴィナは楽しそうに笑うと、身を乗り出して私に訊く。


「で? 今日、行くんだろ?」

「そう。今から、夜、私の部屋に来て、って、言いに行こうかと」

「おお」

「でも、その前に。少しお話したくて……」


 私は、ラザールお兄様との事を色々相談してるの。誰にかって言うと、ミルヴィナと、ユリア、あと使い魔たち。みんなから沢山アドバイスを貰って、その後、自分で考えた。私、魔王を倒したら、ラザールお兄様に告白する。

 そう、今から。上手くムード作って、誘って、それで……。


「リーナ。顔赤いが?」

「あ、いや……。え、えと、上手く誘いたいんですけれど、どうしたらいいでしょうか?」

「誘うって?」

「え、や、その……。部屋で。誘惑……?」


 笑われた。酷い。私は本気だっていうのに。

 仕方ないでしょ、私、ラザールお兄様のこと大好きなの。もう、我慢できない。だって、今まで、さんざん自分の気持ちを押し殺してきた。でも、もう良いでしょ?

 私の言葉に、ミネルヴァさんが言う。


「じゃあ、服から変えなくちゃ」

「えええ?!」

「そんな脱がせ辛い服は駄目でしょ。ブラウスにスカートくらいじゃないと」

「あ、なるほど」

「え、えっと、なにをイメージしてた?」


 もう、からかわないで! なんでみんなしてにやにやするの! やめてぇ!

 にしても、そっか、私の魔服は脱がせ辛いな。ブラウスか。結構婀娜っぽかったりする? 私自身がそんなに、ねぇ? 大丈夫かな?

 私がそんな事を考えていると、ジェラルドさんが口を開く。


「あとは、雰囲気作りだよね」

「ああ、そうだな」

「ランプは消して、明かりは蝋燭一本」

「え……。そういうものですかね?」

「そりゃ、明るくちゃ、ね」


 ジェラルドさんはニコッと笑った。そう。ジェラルドさんが言うならそうだろうね。ミルヴィナと何度も夜を共にしているわけだし……。

 うーん……。ちょっと不安だけど、やってみよう。


「ありがとうございました!」

「あ、そうだ。これ、持ってけ」

「え……?」

「これはな…………」






「ねえ、アンジェラ」

「はい、なんですか、ラザール様」

「さっきね。リーナちゃんに、夜、部屋に来てって、誘われたよ」

「っ?! ッはぁ、え、マジか」

「あ、アンジェラ?」

「なんでリーナ様からなんですか……。普通に考えて、其処は男の人からでしょう」

「うぅ、やっぱりか」


 はぁ、と溜息を吐くと、アンジェラはニヤッと笑って隣に座る。なに……?

 青い瞳が僕を見つめる。ちょっと考えているようだったけれど、纏まったようで話しだす。


「まあ、つまり、夜に呼ばれたってことは、あれですよね」

「う、そうだと思うよ」

「じゃあ、上手く出来る様に、私が教えましょう」

「え」

「私、もう、二度と男の人に見せるつもりはなかったのですが……。ま、リーナ様とラザール様の為です」


「特別ですよ?」




 コンコン、とノックをする。時間は午後十時。夕食とお風呂はもう済ませた。此処は、リーナちゃんの部屋。すぐに返事が来たので、扉を開ける。

 部屋は、なぜかとても暗かった。いつも付いているはずのランプは消えていて、蝋燭の明かり一本だけ。


「ラザールお兄様。来てくれて、ありがとうございます。あ、鍵、閉めて下さい」

「あ、うん」

「そうしたら、こっちに来て下さい」


 言われたとおり鍵を閉め、リーナちゃんの声の方に近づく。ベッドに座っているらしい。

 近くに行って、ようやく見えた姿に、僕は思わずドキッとした。ブラウスとスカートを身につけているんだけど、ブラウスは上から三、四個ボタンが外れ、ずり落ちて肩が見えている。胸はギリギリ見えない。


「魔王、倒せて、よかったです」

「そ、そうだね」

「だって……。倒したらって、決めてたから」


 リーナちゃんは、そっと僕を抱き締めた。






 何これ、凄くドキドキする。私、一体何やってるんだろう。

 ラザールお兄様の顔見たら、それだけでドキドキしてきたのに、こんなの……。死ねる。

 体を離す。ラザールお兄様の顔は、真っ赤。それだけで、とても嬉しい。きっと、ラザールお兄様も、私の事……。

 ミルヴィナから貰ったアレ、使わなくて済みそう。


 ラザールお兄様を私の隣に座らせる。大好きな香りが、こんなに近くに。凄く、嬉しい。

 ちょっと甘えちゃおう。ラザールお兄様の方に、頭を乗せる。黙って頭を撫でてくれた。

 思わず、頬に口を付ける。ちょっと触れるだけ。それが、ラザールお兄様を触発したらしい。

 くるっと体勢を変えて、私の唇にラザールお兄様の唇を重ねる。それだけじゃなくて、開けられた。甘い。

 暫くして、口を離す。乱れた息が部屋中に響く。もう、言わずにはいられない。


「ラザールお兄様、あのね……。私、ずっと、ラザールお兄様の事、好きでした」

「僕も、リーナちゃんの事、ずっと好きだったよ」

「じゃあ、分かりますよね」

「うん、もちろん」


 まだ、夜は長いんだから……。




 火照った体が心地いい。ラザールお兄様に頭を撫でられながら、そう思う。ラザールお兄様の胸に顔を当てると、少しだけ汗の香りがした。

 ずっと、夢見てた事。本当に、かなっちゃった。これ、夢じゃないよね。魔王倒したのも、今の事も。


「リーナちゃん、大好き」

「ラザールお兄様、いや、ラザールさん、私も」

「あ……。リーナ、愛してる」


 は、初めて、呼び捨てで、呼んでくれた……。


「わ?! な、なんで泣くの? 僕、悪いこと言った?」

「ううん。呼び捨てで、呼んで、欲しかったの。ずっと」

「ああ、そういう事……。これからは、リーナって、呼ぶから」

「うん」


 もう一度、唇を近づける。


「私達、その……」

「恋人同士、で、良いんだよ」

「あ……。はい! ラザールさんが彼氏なんて、私、幸せ」

「僕も、リーナが彼女で、幸せ」


 愛してる、心の底から。愛してる。だから、ラザールさん。私から、離れないでね。お願いだよ?




 朝。起きて、隣にラザールさんがいて、少し驚く。其処で、昨日の事を思い出した。


(ああ、そっか)


 なんか、あんまり実感ないな。魔王を倒したなんて。ラザールさんと付き合う、なんて。駄目、嬉しくて笑みが止められない。

 ペンダントもいらなくなった。普通に喋れるようになってる。なんだか、とても平和だなぁ。


「リーナ……?」

「あ、起こしちゃいました?」

「んーん、起きてたから、大丈夫」

「あれ、そうだったんですか」


 そっと唇を付ける。とても甘くて、とろけそう。二人で笑いあってから、一緒にベッドを下りた。




 私にミルヴィナとミネルヴァさん、ジェラルドさんが付いてたみたいに、ラザールさんにはアンジェラさんが付いてたらしい、道理でいなかったわけだ。

 まあとにかく。みんながニヤニヤ私達の方見てくるわけで。何とかしてよ、あれ。


「やぁっと付き合う事になったなんて、遅すぎますよね」

「本当だ。とっくに両想いだったっていうのに、ラザールは奥手すぎるだろ」

「だ、だって、知らなかったし……」

「じゃあ、奥手じゃなくて鈍感なだけだな」

「う……」


 ラザールさん、真っ赤になっちゃって。可愛いなぁ。ほんと、ラザールさんが彼氏で幸せ。みんなと一緒で、幸せ。


「んで、結婚式はどうする?」

「は? 幾らなんでも早すぎるでしょ」

「そうか? 女王がずっと言ってたんだぞ、結婚式はまだなのか、って」

「……」

「付き合ってすらいないって答えたら、随分驚かれたよ。恋人にしか見えなかったしな」


 幾らなんでも気が早いんじゃ……? でもまあ、ずっと一緒にいたわけだし、その、普通に交際する時間くらいは経ってるよね。と考えるならば、良いのかな? でも、年が……。


「一応、お前ら勇者だから、なに言っても許されると思うが」

「そういう問題?」

「っていうか、今やらないと忙しくなるから多分タイミング逃すぞ。それこそ年単位かもしれん。リーナのウエディングドレス姿が見れなくなるかもな」

「それは嫌」

「だろ?」


 でも、流石に早くない? だって、まだ、十、七、歳……。あれ?! もう十七歳か。そんなに早くないのかも。でも、まだ成人はしてないよ。あと一年だけど。

 ああ、でも、そうか。もし後回しにして、私に子供が出来たりしたら。結婚式どころじゃなくなっちゃうし。そう考えると、今しかない……?


「というか、もう手配は始めているのですけれどね」

「アンジェラ?! どういう事!」

「まあつまりですね、私達とアンジェラは繋がっていたので、リーナ様が魔王を倒したらラザール様に告白する事は知っていました」

「ミネルヴァ?!」

「だからね、先に準備を始めてたんだよね。昨日、結婚式の手配、開始したから」

「ジェラルドさん……」


 ラザールさんも、もう逃げられないと悟ったか、私の手を握って宣言。


「良いよ、ちゃんと結婚する。ただし」


「みんな、僕達の事、ちゃんと支えてよ?」

「「「任せて下さい!」」」


 ラザールさんは嬉しそうに笑う。釣られて私も笑った。

 私とラザールさんは、会うべくして出会った。そして、今、こうやって過ごしているのも、運命なんだろう。そう考えると、とても嬉しくて。


「愛してます、ラザールさん」

「僕もだよ、リーナ」


 冷やかされる、なんて、気にしない。甘い甘いキスを交わした。

次で最後です。今まで読んでくださった皆様、ありがとうございます。どうぞ最後までお楽しみください。

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