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第76話  VS魔王 エティ

 私、エティの相手は庭師だと言っていた銀髪の子、グロリアです。私の隣にはドロシア。ノーラお姉の専属メイドですが、一応ネヴィル家のメイドなので、一緒に来てくれる事になりました。とても強いから、その方が安心ですし、よかったです。

 でも、だからって任せきりにするつもりはありません! 私だって、やればできます! 治癒魔術だけじゃない、他の魔術も、更には呪術だって出来るんですから! あのミルヴィナさんに教わったのです、自信はあります! ……まあ、ミルヴィナさんには圧倒的に多く治癒魔術を教わったのですが。

 あれ、後ろから誰かが……。あ、あれは、ラン?! リーナ様の使い魔の一人、ランじゃないですか! 手伝ってくれるんですか? ありがたいです!


「私の相手は、貴女ですか?」

「ルージュの治癒魔術師、エティ・ネヴィルです」

「エティ、ですか。私はグロリアと申します」


 そう言って軽く頭を下げる。そういえば、ドロシアは魔王城に居なかったので、名前を知らないのでした。うっかりしてました。

 さて。一応兵は居ますけれど、みなさんに太刀打ちできるようなレベルじゃないと思うのです。ま、まあ、私も人のこと言えませんね、それはすみません……。

 と、とにかく! 私がしっかりしないといけません! 何故なら、私はルージュの一人、勇者なのです! 治癒魔術師ですが。


 グロリアは剣を引き抜くと、そっと構えを取ります。剣術の知識はないので何の構えなのかはわかりませんが、ルージュの剣士の皆さんとは違いますね。まあ、ルージュの皆さんの構えが変わっているんだと言えば、それはそうなのかもしれないのですが。

 真っ赤な瞳が私を見ます。さらさらとした銀髪が風で揺れる。とても、可憐な少女なのです。まさか、あんなに鋭い剣術が繰り出されるなんて、と思ってしまうくらい。ミレ様と、アンジェラ侍女メイド長が苦戦していたので、とても強いはずです、頑張らないといけませんね!

 ドロシアを見ると、彼女は杖を構えて軽く頷きました。やろう、という事ですね? ええ、行きましょう!


 呪術の発動に気が付くのは、相当強い魔術師メイジか、相当勘の鋭い人だけです。だって、時間を止めている間に魔法を使うのです、気付けるはずがありません。ただ、リーナ様は気付く時がありますね。前に練習で模擬戦をやった時、気付かれたので。魔法の発動、というより、魔力の移動に敏感なのでしょう。尊敬します。

 まあ、普通は気付かれない筈です。ただ、魔力を使うので、出来ればやりたくありません。普通の魔法だけで倒せればいいのですが、そういう訳にもいかないでしょうし……。

 うぅ、やっぱり治癒魔術師は戦場に来ちゃ駄目ですよぉ。もう帰りたくなっちゃいます。


「エティお嬢様」

「あ、はい。行きましょう!」


 私も杖を構えます。グロリアの事をしっかり見て。さぁ、掛かって来て下さい!

 一瞬、グロリアの姿が見えなくなりました。それくらい、彼女の動きは速かったのです。その動きに反応出来たのは、ドロシアだけ。魔力を纏わせた杖で剣を受け止めています。二人は同時に後ろへ跳ぶ。静かに笑みを浮かべると、もう一度構えを取ります。


 と、ランが急に走り始めました。彼女の走った後に水色の、何でしょう、あれは。花のつぼみ……? の様な物が出来て行きます。綺麗な円形を描くと、私達のもとに戻って来て、こういいます。


「水色の花、開花」


 とたんに、全ての花が一斉に開きます。花の中から、沢山の雪と、風が! グロリアを吹雪の様な物が襲っています! なんてすごい魔法なんでしょう、こんなの見た事がありません!

 でも、グロリアは難なく避けて、また、剣を構えて立っていました。どうしたらダメージを与えられるのでしょう?


 って、ああ大変、私、蚊帳の外になっちゃいました。私が勇者なのに……。私が、グロリアと戦うのに!

 何度か死霊魔術の応用編で蘇生を施しましたが、今度は死霊魔術自体を致しましょう。魔力を集めて、霊を呼び集めます。当たりの温度が急激に下がったような気がしました。

 魂を具現化。人の形へ。これで、私の人形の出来上がり。出来は……、まあまあですかね? まあ、即興ではこんなものでしょう。

 人のものではない、青白い肌。髪に掛かった長い前髪。ただ閉じられているだけの口。来ているのは白装束。我ながら、外見だけは上手く行きましたね。それっぽいです!


「さあ、行きなさい」


 私が前を指さすと、彼ら、いや、彼女らは一斉に動き出します。長い髪を降り乱しながら、敵へと向かっていく。これ、結構怖いですね……。私だったらこんな攻撃はされたくないです。

 案の定、グロリアは表情を強張らせました。まあ、これじゃホラーですからね。嫌じゃないですか、ゾンビみたいのに襲われるの。しかも動きは速いのですから。私なら悲鳴あげてるかも知れません。

 まあ、仮初の体、って感じなのであまり丈夫じゃありません。攻撃力だけはあるのですが。だから、数を作ります。が。あまり作りすぎると一帯ゾンビ(?)という何ともシュールな状況になるので其処は注意しましょう。敵どころか味方までダメージを受けそうですし。精神的ダメージを。流石にそれは嫌です。

 グロリアは素早く剣を振り回し、ゾンビたちを斬って行きます。斬られたゾンビたちは、霧の様になって居なくなってしまいます。まあ、もともと魂ですからね。本物のゾンビと違って、死体から出来てるわけじゃないんです。そりゃ、弱いですよね。

 まあ、私は死霊魔術あまりやらないからこんなものですが、人によってはもっと強いものを作る人もいます。まあ、死体から作る方が一般的ですが。ほら、キョンシーみたいな。


「エティお譲様、どうします?」

「どうしましょうね。弱すぎる」


 まさか此処まで弱いとは。ダメージ全く与えてなんですけれど。もっと魔力込めて強いの一体作ってみようかな? その方がいいかも。無駄に魔力使ってても、ですよね……。

 凄く大きな人形が一体出来ました! これなら戦えるんじゃないですか?

 うん、いい感じです。グロリアの剣を見事に避けてます!

 って、ああ! 駄目でした。綺麗な剣捌きの前に敗北しました。やっぱり魂ゾンビ(仮)の力はたかが知れてますね……。


 って、あれ? もしかして、蘇生魔術で強い人一人復活させてみれば良いんじゃないですか? いや、でも上手くいく保証はありませんよね。あ、寧ろ。

 もう一体強い魂ゾンビを作ります。其処に。キュッと目に力を入れて、魔力を集めます。


「死霊秘術・蘇生ノ術!」


 これを蘇生させたらどうなるんでしょう? なんだか、いい感じになりそうです!

 魂ゾンビの欠点は、動きが遅い事。何故なら死人だから。これ、蘇生させたらとても強いものが出来そう!

 青白い肌の血の色が戻ります。髪は相変わらず長いですが、艶が出て、とても綺麗な黒髪に。白装束はいつの間にか白い清楚なだけのワンピースに。これ、上手くいったんじゃないですか?!

 動きは格段に早くなってます! しかも、私の思った通りに動かせるみたいです。なら。ドロシーと動きを合わせる事にします。

 ドロシーがグロリアへ向かって走ります。グロリアの意識はそちらへ。其処で。大きな魔法を放ちます!

 当然、ドロシーは私がこの魔法を撃つ事を知っていたのでもう避けたあと。でも、グロリアは、突然の事に驚いている様子です。だって、魔法を使える事すら知らないのですから。


「やったぁ! ドロシー、やりましたよ!」

「ええ。エティ様、流石です」

「じゃ、私はリーナ様のもとへ向かいますね!」

「はい、行ってらっしゃいませ」


 やっぱり、魔王はみんなで倒したいですよね。そう、みんなで……。ああ、楽しみです!

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