表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

シュート

 おそらく、次回が最終回です。この物語、実はある歌から思いついた物語です。この物語のタイトルを見れば、分かる方には分かると思います。

 ちなみに、今日の私は、「あーあ。世の中って厳しいな。」と思っています。本当に、リアルタイムの話で申し訳ありません。「誰か励ましてくれぇい!」と叫びたい気持ちでいっぱいです。

 こんなこと書かれても、困りますよね・・・。すいません。そのくらい、ショックなことがあったんです。大目に見てください。

炭酸飲料を失ったが、俺は新しい飲み物を買おうとはしなかった。顔にへばりついた砂糖を含む液体をハンカチで拭う。水で顔を洗ったときのような清々しさと涼しさ、爽快さはない。炭酸飲料では顔を洗えない。それが分かっただけでも120円の価値はある。そう思い込むことにする。

「先輩。仕事、まだいいんっすか?」

 タカシは缶を完全に開け、炭酸が抜けきった飲料をこれまたチビチビと飲んでいる。

「ああ。まだいいんだ。時間じゃない。タカシはいいのか?」

「僕もまだまだいいっすよ。まだ朝っすから。」

 そう言い終わると、タカシは缶を空にする。両手を上に構え、3メートルほど離れたゴミ箱に狙いを定める。タカシが缶を放り投げる。空き缶は一定の速度で回転しながらきれいな放物線を描き、きれいに地面に落ちる。ゴミ箱の手前1メートル。「あちゃー。」とタカシが悔しがる。

「先輩。俺の敵をとってくださいよ。」

 俺は戸惑う。しかし、タカシの純粋無垢な顔を見ていると無下にも断れない。俺は缶にわずかに残った液体を飲みほし、ベンチから立ち上がる。

 ゴミ箱からの距離を目で測る。やはり、3メートル位だろう。俺は何度も頭の中でシミュレーションをする。

 2、3歩退く。1歩、2歩と順々に足を出し、徐々に加速する。4歩ぐらい助走をつけると、俺は右足に力を入れ、飛び上がる。飛び上がると同時に、右手を後ろに引く。最近、脂肪がついてきた身体ではあったが、頭で考えたくらいには高く飛べた。瞬時に狙いをつける。狙いがつくと同時に、右腕を思い切り、振る。

耳元で風が鳴る。缶は回転することなく、まっすぐ、ゴミ箱に向かって落下する。俺は足を曲げて着地する。地面からの抗力が足にかかる。カーンという金属音が聞こえ、空き缶は回転しながら空を飛ぶ。ゴミ箱の向こう側に静かに落ちる。

「惜しーい。先輩、惜しかったすよ。なんか、本格的でしたっすね。カッコよかったっす。」

 俺は足を伸ばす。まだ足が痺れている。

「本格的というより、バスケとハンドボールの違いだろう。」

 そう言うと、俺の中に疑問が生じた。俺は口に出せずにはいられない。

「なあ、おまえ―」

「先輩、次の仕事場はどこっすか?」

 タカシが遮る。慌てた様子もなく、偶然重なったらしい。

「あのマンションだよ。」

 俺はここから見える高層マンションを指さす。平日の昼間のためか、部屋の数の割にはあまり人が出入りしない。タカシは感心した声を漏らす。

「やっぱり、先輩只者じゃないっすね。あんな高級マンションに目をつけるなんて。」

 そうだ。頼まれたのではなく、目をつけたのだ。

「でも、気をつけた方がいいっすね。あそこのマンション、隠しカメラつけたっぽいですから。」

 隠しカメラ?あのマンションには監視カメラのほかに、隠しカメラがあるのか?

「別に盗撮されても問題ない。」

 タカシは笑う。しかし、今度は声を出すことなく、口角を上げ、目を細め、表情で笑っている。気がつけば鳩は一匹もいなくなっていた。

「先輩。せっかく忠告してあげてるんすよ。素直に受け止めてくださいよ。捕まっちゃいますよ。」

 俺は、目を細める。家電の修理業者が捕まるはずはないだろう。捕まるのは空き巣だ。

 そして、俺は修理業者ではなく空き巣だ。だから、カメラに映れば捕まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ