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炭酸飲料

 この物語に出てくる炭酸飲料の飲み方、私は小学生のころによくしていました。流行っていたとか、おいしくなるとか、そういったことではなく、ただ単に「炭酸の泡を楽しみたい」という興味本位でやっていました。懐かしい思い出です。

 ちなみに、この物語にはおまけコーナーを設けるつもりはありません。(書く事があまりないので・・・)ですが、メッセージや感想は随時受け付けていますので、送ってくださると、大変嬉しいです。

「先輩。あの自販機シけてますよ。炭酸飲料しかなかったっす。」

 そう言って、タカシは自販機と同じデザインの炭酸飲料を俺に手渡す。「シけている」とは「つまらない」という意味だろう。

「そんな自販機もあるんだな。売れているのか?」

 タカシは俺の独り言を聞くと笑い出した。

「それがっすね、ほとんど売り切れだったんすよ。」

「やっぱり、人気があるんだな。」

 俺がそうつぶやくと、タカシは笑いながら首を横に振る。ネタを披露する前に自分が笑いだす漫才芸人、という表現がふさわしく感じた。

「でしょう?そう思っちゃうっすよね。でも、それはまんまとはめられてますよ。実はあの自販機、見捨てられているんっす。」

「見捨てられている?」

 タカシは大きくうなずく。そこで、笑いが止まらなくなったために話はまた中断される。その間、俺はありとあらゆる可能性を模索する。しかし、どの可能性も笑い出すことができるものではなかった。

「そう。あの自販機、新しいものが供給されてないですよ。その証拠に、この缶のデザイン、二年前のままっす。」

 そう言って、タカシは自分の持っていた炭酸飲料の缶を俺に見せる。炭酸飲料を飲まない俺は、そのデザインが二年前のものなのか百年前のものなのかの区別もできないのだが、タカシがそう言うならそうなのだろう。俺は納得したふりをし、うなずく。

「賞味期限は大丈夫なのか?」

 大丈夫っすよ、死にませんよ、とタカシは笑いながら、缶を振る。そして、缶をわずかに開ける。わずかな隙間から勢いよく押し出された液体を啜る。

「なんだ、その飲み方は?」

「あれ?先輩知らないんっすか?一昔前、流行ったんっすけどね。こうするとうまいんすよ。」

 いや、さすがに炭酸飲料を飲まなかったからといっても、そんな奇妙な飲み方が流行っていたら流石に気がつく。

「先輩もしてみたらどうっすか?」

 俺は手元の炭酸飲料を見る。冷たい。すると神経が刺激されたためか、どうでもいいような知識が頭を横切る。

「知っているか?炭酸飲料には、二酸化炭素が溶けている。」

「二酸化炭素?あの二酸化炭素っすか?」

 タカシが俺が話の途中で割り込む。あの二酸化炭素って、他にどんな二酸化炭素があるんだ?しかし、その発言は不快なものではない。関心が知識の原動力だ。

「そうだ。二酸化炭素が炭酸の元だ。そして、気体は液体が冷たいときの方がよく溶ける。だから、冷たいビールは最高だ。」

「へー。シャンパンも同じっすかね?」

 俺はうなずく。タカシが隙間を指で押さえ、再び缶を振る。

「飲み方を教えてくれたお礼だ。」

 そう言うと俺は缶を振る。3秒ぐらい降った後に、力の加減をうまく調節して、隙間を作る。まだ液体は出てこない。俺は少し力を込める。空気が溢れる音がする。

「あ、先輩。危ない!」

 タカシの言葉が耳に入ってくるのと液体が俺の顔に届くのは同時だった。俺は信じられない勢いで顔にぶつかってくる液体をただ受け止めていた。勢いが収まったときには、缶の中に液体は残っていなかった。

 タカシが俺の方を優しく叩き、自分の缶を差し出す。

「先輩、俺のあげますよ。もう、だいぶ炭酸抜けちゃってますけど。」

「タカシ。こっちを見ろ。」

 タカシがこちらを向く。その顔は込み上げてくるものを抑えきれず、歪んでいた。

「笑いたければ笑え。」

 タカシは短く息を漏らしたかと思うと、その息が声になり、笑い出した。口角が引きつるのを感じるやいなや、俺も声を出して笑っていた。


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