第83話 戦う狼
雷が俺の視界を覆う。予想以上の大きさで辺りを吹っ飛ばした。光が収まったらそこらじゅうの木々が薙ぎ倒され、黒焦げになっていた。炭の匂いが鼻をつく。
「やっぱりこれだけじゃあ終わりませんか……………。」
フロウがそっけなく呟いた。
「やるジャン……………異世界の人間でもねぇ癖にィ……………。」
ゲリズの上半身の服はほぼ焼失し、皮膚は所々火傷していた。
「もちろん、まだいけますよね?」
「当たり前だアアアアア!!!テメェら二人纏めて消してやるよオオオオォォ!!!」
ゲリズが突っ込んでいく。
「雷剣。」
バチバチバチィッ!!!
静電気のようなバチバチした電気が集まり剣を型どっていく。そして1メートル半程の剣となった。ゲリズが距離をとった。
「すごいジャン…………雷で武器を造るなんてねェ…………。攻撃だけじゃなく、相手の攻撃を受ける際相手を感電させられるゥ……………。しかも、自分が感電してないとなるとォ…………思ったより戦闘馴れしてるんじゃないィ~~~~~?」
「雷を扱うのは得意なんですよ。」
それだけ答えて斬りかかる。
「チィッ!!」
ゲリズが剣をかわして太い枝を折り手に取った。枝がみるみる剣の形になっていく。木材は絶縁体程ではないが、かなり電気を通し難い。これで少しでも感電を和らげるつもりか。
「甘いですよ。」
ズバァン!!
「ぐあッ!」
木の剣が豆腐のように真っ二つになった。さらに感電でゲリズにダメージを与える。
「なんという高圧電力……………ッ!!形の無いハズの電気で木を叩き斬る程とはァ……………更にィ……………電気を通し難いハズの木材を通してここまでのダメージィ……………相当な魔力と経験がないとォ……………できない芸当ォ……………!!!」
「お褒めいただきありがとうございます。」
フロウは冷たくいい放ち、更に斬り込んでいく。ゲリズはかわそうとするが、間に合わず腹を斬られた。傷ができた瞬間電熱によって焼かれていく。
「ギャアアアァァァ!!!」
ゲリズが悲鳴をあげる。
「痛そうですね……………降参しますか?降参して立ち去るなら見逃しますよ?」
ゲリズが凄まじい怒りを込めてフロウをにらむ。
「誰がァ……………誰が降参するかよオォォォオオ!!犬ッコロなんぞにイイイイィ!!!テメェら地獄に叩き落としてエエエェェエ!!!うさ晴らしにそこの村の奴等を血祭りに上げてやらアァァアアアァァア!!!!」
それを聞いて、フロウの態度が一変した。
「今、何て言いました?」
今までのひょうひょうとした感じの口調とは違う、殺意の籠った口調。
「な………………」
驚くゲリズ。すぐに答えられない。
「聞こえませんでしたか?今あなたが言った事をもう一回言ってくれと頼んだんですよ?」
「へ…………へへ…………言っただろォ…………?そこの村の奴等皆殺し………………。」
フロウが大きく息を吸った。怒りのせいか体が細かく震えている。
「ふざけるなアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ものすごい怒鳴り声。大気が震えるかのような迫力。後ろ姿だから表情は不明だが、きっとものすごい顔なのだろう。俺に対して言い放った訳ではないのに、俺は一瞬殺されるのではないか、という強い恐怖を覚えた。鳥肌が立つ。背筋が震える。冷や汗が吹き出す。本能が危険と直感していた。第三者の俺が、ここまで恐怖を覚えたのに、直接言い放たれたゲリズはどこまで恐怖しているのか。想像もつかたない。
「へ…………へへ…………や、やってみろよォ………………。」
更に挑発するゲリズ。しかし、明らかに逃げ腰になっている。
「こ、こいよ、口だけかァ?え?」
ゲリズが嘲笑する。しかし、恐怖でひきつっているのか上手く笑えていない。
「どうしたんだよォ、大口叩いて、びびってんじ」
ドカアァァァッ!!!
ゲリズが言い終わる前にフロウの拳が炸裂した。地面に顔が叩きつけられ口から血が溢れ出す。
「か……………はぁ………………ッ!!(断末魔)」
更に腹を蹴りあげた。ゲリズの体が宙に浮く。浮いたゲリズの胸ぐらをフロウが掴んだ。何故か、フロウの腕が、先程より毛深くなっているような気がした。
「ラアアアアァァアアアァァァアア!!!!」
グシャアアァァァッ!!!
顔面に右ストレートが炸裂ッ!!ゲリズは軽々と吹っ飛ばされ、向こうの大木に命中し、大木をへし折る。しかし、それでも止まらず、さらにもう一本の大木に激突し、崩れ落ちた。
フロウは肩で大きく息をしている。ゲリズがよろよろと立ち上がった。
「まだやるか……………?」
「油断したよォ……………今日の所は見逃してやるよォ……………。瞬間移動…………。」
「二度と来るんじゃねェ…………。」
ゲリズが消えた。フロウがそれだけ呟いて振り返り、こちらに駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか?カインさん?」
先程までとはうって変わっていつものひょうひょうとした口調に戻っている。
「ああ、大丈夫だ……………。それにしても、さっきの……………。」
「ああ、わたしとした事が、つい熱くなってしまいました。申し訳ありません。」
その時、向こうから足音が。
「ちょっと、どうしたの!?さっきすごい爆音が、それに、フロウの声も……………。」
シニアさんが駆けつけて来た。そして、この惨事に呆然とする。
「な、何よ、これ……………喧嘩でもしたの………………?二人とも…………カインなんて、どうしたのよ、その怪我………………。」
「喧嘩……………そう、ですね。喧嘩でしょうか………………。」
「ああ、そう……………喧嘩……………ですね。」
「ちょっと……………疲れました…………わたし、これからすこし休むので、カインさんの手当てを頼んでよろしいでしょうか……………。」
「う、うん。わかった……………。」
フロウが家の中に入っていく。俺はシニアさんにに支えられ、シニアさんの家へと運ばれていく。
帰る途中シニアさんがしきりに何があったのか聞いてきたが、俺は何も答えなかった。
流石に…………リメイカーの事は言えないよな……………。
なーんか、ゲリズが噛ませ犬になっちゃったなあ……………。カイン殴っただけであとはボッコボコ。しかも性格がアレ。
………………ま、いっか。あんなキャラも必要だろ……………多分。




