第67話 逃亡
あ、しばらくメレン視点続きます。
私はこの日、超珍しい事に、真夜中にふと目が覚めた。こんな暗い時に目を覚ますのは5年ぶりだ。辺りは当然の如く真っ暗………………ではなかった。
窓から明かりが差しこんできている。勿論太陽の光ではない。炎の光だ。窓をそっと覗くと、何人かの男性が松明を持ち、この家の周りを囲んでいた。
それだけなら良かったのだが、男性の中には武装している人もいる。見たところグルカナイフ(くの字の刃を持つ農業用ナイフ。警察や軍隊も使用しており、ククリナイフとも呼ぶ)のような刃物、弓、農業用と思われる鍬、鎌、そして銃まである。この世界にも銃なんてあるんだ…………。見たところタネガシマ(お父さんがこう呼んでいた。正式名称は知らない)みたいな物だけど。
……………………でもなんでこの家に?
と、その時、扉の向こうから微かな足音が聞こえた。恐らく意図的に忍び足をしている。
………………多分この状況を知っているだろう。聞いてみようか。
私は自分から扉を開けた。私を泊めてくれている女性が立っていた。女性は一瞬驚いた表情になって右手を背中に隠した。
「あ、あら…………どうしたの?」
……………何か隠している…………。
「あの…………すいません、トイレに行きたくなって目が覚めちゃったんですけど……………。」
私は咄嗟に嘘をついた。
「そ、そう。トイレね。早く行ってらっしゃい。」
「はい。」
と行って一階のトイレに行こうと見せかけ、私は咄嗟に女性の右手を掴んだ。いきなりなので女性は抵抗できない。そのままアームロックで腕を締め上げる。
ゴトッ!
女性の右手からナイフが落ちた。私はそれを蹴り飛ばす。
「…………………どういう事ですか。」
女性は崩れ落ち、手で顔を覆いすすり泣き始めた。
「ごめんなさい……………村長様の…………命令だったの……………。」
「村長の……………命令?」
女性は私に全て白状した。
どうやらこの村の言い伝えに『海より来た少女が災いをもたらす。殺さねば村が滅びる』というものがあるようだ。なんてムチャクチャな……………。
で、それを信じた村長が私の暗殺を試みた……………と。困ったなぁ……………。
とりあえず、逃げよう。と、言ってもどうしようか……………。
私は女性のナイフを拾い、一階へと降りた。女性は泣きじゃくっているため放っていく。差し込む松明の明かりが部屋を明るくしている。窓から見られないように外への扉まで近づく。
私は大きく深呼吸した。一回、二回。よし。
ドガアアアアン!!!
私は扉に魔力を送り込み散弾の様に吹き飛ばした。爆音と共に扉の破片が吹っ飛んでいく。
「うわああああ!!」
「何だ!!」
「と、扉が爆発したぞ!!」
男達が動揺してる隙に私は一番近くにいた男に向かってナイフを投げた。勿論わざと外したが男が怯む。私は一気に森へ向けて走り出した。
「いた、いたぞ!!」
「逃がすな!!撃てぇ!!!」
「躊躇するな!!殺せぇ!!!」
男達が叫び、矢と弾丸が飛んでくる。私はジグザグに走り狙いを定めさせない。何発か掠めるが気にせずに走り続ける。
あともうちょっとで森に入れる。と思ったその時。
ズドン!!
私の右頬を銃弾が掠めた。焼けるような痛みと顔に弾丸が飛んできた恐怖で少しスピードが落ちた。
ズドン!!
「う、うあああぁぁぁぁぁ!!!」
右の太股に矢が刺さった。私は悲鳴を上げ転んで地面に倒れる。
私は歯をくいしばって後方にエネルギー弾を投げた。威力は低いが音と煙が凄いものを。
男達の目を眩ませた瞬間、私は魔法で右足の痛みを無理矢理抑え、森に向かって走った。
痛みを押さえてもとてつもなく痛い。痛みで涙がぽろぽろ零れた。でも死にたくなかったから必死で走った。
はぁ、はぁ、はぁ……………。
どうやら撒いたみたい。私は太股の矢を抜くことにした。腰のナイフの柄を噛んで強引に引き抜く。激痛だったけど我慢した。
抜いた傷跡を魔法で治療する。すぐには治らないけど普通に走れればいい。
………………これからどうしよう………………。ここがどこかもわからない。二人が生きているかもわからない。どうやって西の大陸へ行くのか、はたまたお城へ戻るのかもわからない……………。
……………。今は逃げよう。生き延びれば何とかなる。多分。
遠くで足音が聞こえた。マズイ、急いで逃げるか隠れないと!!
少し走ったところでやや大きな茂みを見つけた。あそこに隠れれれば……………!
私は即座に茂みに飛び込んだ。しかしこれが間違いだった。
茂みのすぐ後ろは崖だった。急いでいたから気づかなかった。
「きゃあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
垂直の崖じゃなかったからまだよかったが私は崖を転がり落ちていった。転がっていく途中であちこちを強打する。しかし、どうする事もできない。
崖の下まで来た時にはもう私はボロボロだった。全身が痛い。頭を打たなかっただけマシだけど、もう一歩も動けない。右腕は手と肘の間にもう一つ関節ができたかのように曲がっている。
口からは真っ赤な血が溢れてくる。脇腹がズタズタになっているのも分かる。
駄目……………激痛で意識が……………逃げ…………ないと…………殺される……………生き…………延び…………て…………二人を……………ジェル………ス…………カ………………イ……………ン……………………。




