第47話 休息(ジェルス)
(ジェルス視点)
暫く寝心地が劣悪な落ち葉の上で眠っていたからか、城のふかふかのベッドが天国のように思えた。そのベッドで思わず寝過ごしてしまい………。
起きたら既に昼だった。
カインによると酒場で聞き込みをするのだが、酒場の営業時間が夜からなので、別に構わないと言う。
カインから夜まではゆっくり休んでいいと言われたが、娯楽のごの字もないこんな世界でそんな事言われても正直暇なだけだ。
何かいい暇潰しがないか暫く考える。
まぁ、まずは武器庫に行って武器を調達するか………。
で、武器庫に到着。ファンタジー小説やゲームでしか見たことの無いものがたくさんある。
とりあえずいろいろな武器を素振りしてみる。バトルアックスやモーニングスター(トゲのついた鎖鉄球)なんかは全く扱えなかったが、槍や剣はいい感じ。
俺が思うに、カインのように片手ががら空きはメリットが少ない気がする。何かを掴む事はできると思うが………。盾かもう一本剣を持った方がいいと思う。
と、いう訳で、俺は刃渡り60センチ程の扱いやすい剣二本にした。二本持って素振りしてみると結構しっくりくる。
………名前彫っておこ。
剣二本選んだけど、一時間も経ってないな………。どうやって暇を潰そうかな………。
ここ、大きなお城だよな………。当然、こんな城の中を歩き回れる機会なんて、そうそうあるものではない。
城の中を見て回ってみようっと。
とりあえず、この階から見てみることにした。
カインとメレンの部屋は流石に駄目なので、使われていない他の部屋を見て回った。
部屋ごとに広さは少しずつちがうものの、置いてある家具は変わらない。と、いうよりあまり置いていない。どうでもいい事だが、俺の部屋は中でも狭い方だった。
次は下の階。基本的にはメイドの休憩室とか、仕事する部屋だ。仕事の邪魔をするのは悪いし、何より女性なので、部屋には入らなかった。メイドが普段何やってるのかは気になるけど。
部屋に入らずとも、廊下をウロウロしていると、ふと、壁の色が他と僅かに異なっている部分に気がついた。
こういうのは、秘密の通路とかがあるのが相場である。俺はその色が違う部分を調べてると、中心辺りが押すとへこむのが分かった。
とりあえず、奥まで押し込んでみる。
ゴゴゴゴゴ……。
という低い音が響いて、色が違う壁がドアのように開いた。ドアの向こうは、狭く、薄暗いが、通路になっているようだ。
興味を持った俺は、通路の奥へ入っていく。一分程で、一番奥まで着いた。
一番奥には台座があり、そこには、酷く錆び付いているものの、黒い剣が刺さっている。
なんだ?この剣は………。俺はこの剣を掴もうとした。
しかし、剣に触れようとした瞬間、手に電流のような何かが走り、手が弾かれた。
何だ、この剣は………。
と、その時、こちらに向かってくる足音が聞こえた。更に、剣を鞘から抜くシャーッという音が聞こえる。
「そこの者、何者ですか!!」
高い女性の声が響く。俺は咄嗟に両手を挙げて敵意がない事を示した。
「おとなしく降伏………て、ジェルス様ですか?何をなさっているのですか?」
茶髪で眠たそうな目をした色っぽいメイドだった。ていうから貴女ロングソード携行してるんですか。
俺は今までの事を簡潔に説明した。
「なるほど……、わかりました。でも、気を付けてくださいね。このお城には、こういうのがいくつかあって、本当に重要な物が置いてあるのですから……。」
「はい。ところで、あの剣は何ですか?普通の剣じゃなかった………。」
「あの剣ですか?私もよくわかりませんが、あの剣は世界を破滅させる力持っていると言われております。」
「世界を破滅?」
「はい。かつて、この剣を振るい、世界を破滅させようとした者がいるという伝承が残っております。使い手によって、世界の命運が分かれるとも………。この剣は恐ろしい力を持つと同時に使い手を選ぶと言われているので、誰も触れる事はできませんが。」
「そうなんですか………。」
俺達二人は城の廊下まで戻って来た。
「さて、もうここに入らないでくださいね。普通は重罪なのですから………。」
「はい。ごめんなさい。」
茶髪のメイドはメイドの休憩室へと戻っていった。
なんか、この城にはあんな場所が他にもあり、しかも、入るのが重罪となると、探索する気が失せた。結構時間経ったし、あとは部屋でのんびりするか………。
特にやることもなくボーっとして夜。
「おい、そろそろ酒場に行くぞ。」
そうカインに言われ、俺達は酒場へと向かった。