第40話 朝
…………朝か………。
ええと……………俺、何やってたっけ?確か、族長の所行って、宴始まって、それから、それから…………。覚えてない。まず、宿屋に足運んだ覚えすらないし………。
うぅ………頭痛い……。あと、なんか吐き気も………。全然記憶ないけど、本当に何があったんだ?リッドさんとかに聞いたら分かるかな?
俺は体を起こそうとして………重い。何かと思って毛布をめくると、熟睡してるメレンが俺の体にしがみついていた。あと、俺も無意識の内にメレンの背中に手を回していた。
……………あ、ヤバい。現在進行形で顔が真っ赤になっていくのが分かる。引き剥がそうとしたが意外に力が強く、全然離れない。
あと、女性特有の柔らかい物が強く押し付けられており、それがなんとも………。しょうがないだろ、メレン身長の割りにかなり豊かに膨らんでるんだし………。あと、俺も女子っぽいと散々言われて生きてきたけど、年頃の男だし。
………ヤバい。そろそろ吐き気が無視できないほどになってきた。
「メレン、起きろ!!」
しかし、やっぱり簡単には起きてくれない。
ヤバいヤバい!!早くコイツをどけないとコイツに吐瀉物ぶちまけてしまう!!それだけは避けないと!!
人間追い詰められると思いもよらない力がでるものだ。単に無意識に魔法で力増大させているだけかもしれないが。
とにかく、俺は無理矢理メレンを剥がしてトイレに駆け込んだ。
~エチケットタイム~
ふぅ、吐いたらすっきりした。頭痛はまだ治まらないけど。
俺はベッドに戻り、未だにぐっすりと眠っているメレンの隣に腰をおろした。
やっぱり寝顔が可愛らしい。頭を撫でるとセミロングで艶のある黒髪がサラサラして心地よい。
そのまま撫でる箇所を肩変更していると、急に二の腕を掴まれた。起きたかと思ったが寝息をたてている。そしてメレンは腕を抱き寄せた。力が強くベッドに押し倒されたかのようにメレンの隣で横になっている姿勢になる。シングルベッドなので二人並ぶと随分と狭い。
腕を抱きしめられ、二の腕に柔らかい物が押し付けられる。メレンの吐息が首筋に感じられる。そして、天使のように可愛い寝顔が俺の顔と10センチ程しか離れていない。
心臓がものすごいバクバクいっている。この時頭はメレンで一杯だった。あぁ、可愛い。このままだったらメレンの腕をほどいて俺がメレンを抱きしめていただろう。それ程魅力抜群だった。
コンコン。
ノックの音がメレンを抱きしめようとしていた俺を正気に引きずり戻した。
ガチャ。
そのままドアを開け、リリちゃんが部屋に入ってくる。
「カイン、メレン。二人とも具合はど」
ここでリリちゃんが俺ら二人の状態に気づく。
リリちゃんは10秒ほどその場で固まっていた。そりゃそうだろう。若い男女がベッドの上でイチャついてる(第3者から見ての話。実際はメレンが寝ぼけて俺の腕を抱きしめてるだけ。)なんて不純異性交遊にしか見られない。
そして無言で泣きそうな顔でドアを閉めた。ドタドタと走り去る音が聞こえる。
「待って!!リリちゃん!!待ってーーーーーーーーーー!!!」
その後メレンを引き剥がしリリちゃんに事情を説明するして誤解を解くのに30分程かかってしまった。
……………ハァ。