第196話 ジェルスVSサーリッシュ③
「………なるほど。死を覚悟した体がなんとかして生きようとして自覚してなかった力を引き出した、って訳ね。」
………確かに、俺はあの時死ぬかと思った。正直諦めてたが、体は生きようとしていたのか?
とにかく、助かったのは確かだ。
「さぁ、続けようか。」
「ええ。炎と氷………、こういうの、いいんじゃない?」
ガキィィンッ‼︎
キン、キンキンキン、ガキィィン、キィィン‼︎
槍と剣が激しくぶつかり、金属音が響き、時折火花が散る。
「ラアッ‼︎」
「ハァッ‼︎」
サーリッシュのハイキックと俺の肘がぶつかる。
「………ッ‼︎」
肘が、凍る⁉︎
「クソ、燃えろッ‼︎」
ゴオオッ‼︎
自らを炎上させ、凍った体を溶かすと同時に反撃する。サーリッシュはバックジャンプで回避する。着地際を‼︎
「火炎機関銃‼︎」
「白銀輝鏡‼︎」
………伏せがれたか。
バキャァァァァッ‼︎
氷の盾が弾け飛び破片が飛んで来る。
「斬撃、回転十字‼︎」
破片を弾き飛ばしながら斬撃が飛ぶ。
「飛閃、鮫‼︎」
ガキィィン、ドガアアアッ‼︎
「炎斬撃、炎輪‼︎」
「冷輝結晶‼︎」
炎と氷がぶつかり相殺される。………正直、分が悪い。向こうの方が得意分野を使い慣れている。俺の炎は俺自身からしか出せないがサーリッシュは空気中の水分を冷やして凍結させる事ができる。奴の自由なタイミングで空間から氷柱を出したり俺の体を氷で固める事ができるのだ。いくら得意分野といっても常時体を炎上させると途中で魔力切れを起こす。なんとか突破口を見つけなければ。
「氷塊散弾‼︎」
「熱波‼︎」
ジュッ、と音をたて、氷が水、水から水蒸気へと瞬時に変化する。
「凍れ‼︎」
「‼︎」
瞬時にしゃがんで氷柱を回避。あいつ、熱膜を解除した瞬間、俺の周囲の水蒸気を凍らせて反撃しやがった。だが、水分が凍って氷柱となり俺を襲うまでに1秒程時間がある。見切れれば回避は難しくない。それに、奴が氷柱を使う際には不自然な程空気が冷える。厄介な攻撃だが、対処できないわけでもない。
回避した後何度もバックジャンプして距離を離す。
サーリッシュが走って近づいてくる。奴がある程度近づいたら、空気が冷えるのを感じた。
「包み込め‼︎炎卵‼︎」
ゴオオオッ‼︎
………奴は何故距離を詰めてから氷柱を放った?立ってた場所から近づかなくてもいいだろうに。
「………なるほど、射程距離があるな。半径10mってところか。半径10m以内の水分を凍結させることができるんだな。それに、放った氷も射程距離を外れると魔力がきれて元の水や水蒸気に戻ってしまうと見たね。」
「正解。でも射程距離から逃げてるだけじゃあたしには勝てないわ。」
俺は炎を飛ばす事ができる。放射状に放つ炎は射程距離はせいぜい5mだが、炎を凝縮して放てば20mは飛ばせる。斬撃もそれくらいだ。しかし、そんなに飛ばすと、飛んでる途中で威力が弱まり、決定打にはならない。つまり、相手の射程外から一方的に攻撃は無駄だ。だが、危ない時は射程外に逃げる事ができる。
パキ……、パキパキ、パキ………。
全身に氷が………、
「爆風‼︎」
ドガアアアッ‼︎
あえて目の前で爆風を起こし、吹っ飛んでサーリッシュから離れる。よし、氷が溶けた‼︎
俺は炎を凝縮して何発も撃ち込む。威力は期待してないが、牽制には十分だ。これで奴を上手く近づかせる事はできない。徐々に下がりながら炎を放っていく。
「貴方、大切な事忘れてない?」
「………しまったッ‼︎」
壁‼︎しかも隅‼︎こいつ、炎をかわしながら俺を上手く隅まで追い込んでいたのか?
やべ、体が凍る‼︎
体を炎上させ、氷を溶かそうとする。
「それだけに気を取られすぎよ?」
ドッ‼︎
「がは………ッ‼︎」
サーリッシュに鳩尾を蹴られ、息が詰まる。しかも蹴られた部分から更に凍っていく。
「くッ‼︎」
なんとか逃げようとしたが、足が凍っている上に寒さで体が上手く動かない。
ザクッ‼︎
「うぁぁッ‼︎」
なんとか体を捻ったためモロではなかったが槍が脇腹を掠める。傷口が凍り血が流れない。
「氷塊散弾‼︎」
ズドン‼︎
直撃を受け吹っ飛ばされ壁に叩きつけられる。
サーリッシュに腕を掴まれ壁とは反対に投げ飛ばされる。
「飛閃、鮫‼︎」
鮫を模した攻撃が俺を襲う。体を覆う氷のおかげで重症は免れたがダメージがでかい。更に氷が俺を覆う。ヤバい、このままじゃ動けなくなる。ダメージと寒さで炎を上手く出せない。
「飛閃連射‼︎」
上に飛閃を………、まさか‼︎
ドガアアアッ‼︎
やはり‼︎天井を崩しやがった‼︎
「貴方の言葉………少し嬉しかった。でも………あたしに希望なんてないの。今までも……、これからも。………さよなら。」
ドガアアアアアアアアッッ‼︎
「うわああああッ‼︎」