第195話 ジェルスVSサーリッシュ②
ガキィィン‼︎
突っ込んできたサーリッシュの攻撃を受け止め、そのまま打ち合いに入る。両手に武器を持っている俺のほうが手数に優れ、攻撃面では有利だが、だからといって攻撃だけ考えていては反撃をもらう。
俺はあまり動かず攻撃は剣で受け止めているが、サーリッシュは受け止めるよりはかわす事のほうが多い。これは死角に回られないようにしなければ。
ブンッ‼︎
よし、やや大振りな攻撃、チャンス‼︎
ヒュンッ‼︎
サーリッシュの視界の無い右目の方に瞬時に回り込み、そこから素早く斬りかかる。
ガキン‼︎
弾かれた⁉︎
ドッ‼︎
「ウッ‼︎」
「飛閃、稲妻‼︎」
ズパアッッ‼︎
「ッ痛ェッ‼︎」
サーリッシュの蹴りで怯まされた直後の飛閃。僅かに身をよじって避けようとしたが右腕にやや深い傷を付けた。
ドンッ‼︎
反撃で蹴りを放つが入りが浅い。
ビュン! ガキィ‼︎
サーリッシュの槍がブーツに当たって火花を散らす。
「…………ああ、板仕込んだブーツ、防刃仕様ね。」
「レザー部分が破れて折角のいいブーツが台無しだぜ。…………見えてない方向から攻撃したってのに、こっちの動きが分かるのか?」
「なんとなく分かるのよ。殺気、とでも言うのかしら?ずっとこんな状態で戦ってきたから。」
ガキィン‼︎
ビュン‼︎
「よっと‼︎」
なぎ払ってきた槍をかわす。
「飛閃、乱れ撃ち蛇弾‼︎」
ドガガガガガガ‼︎
「うおおおおおおッ‼︎」
ばら撒かれる攻撃を部屋の周囲を走り回るようにして逃げる。
「どうしたの⁉︎逃げてるだけかしら‼︎?」
俺はひたすら逃げる。…………流石に逃げきれないか‼︎剣に魔力を溜める。
「斬撃、刃雨‼︎」
上空に大きな斬撃を飛ばす。斬撃は天井近くまで昇った後に弾け、刃の雨を降らす。
「くだらないわ。」
サーリッシュが指を鳴らし、頭上に盾を作る。それに気を取られている隙に俺はサーリッシュに突っ込んだ。
「真正面から突っ込むなんて、バカね‼︎」
「プッ‼︎」
ビシャ‼︎
「‼︎しまった、目を⁉︎」
腕の傷から血を吸って口に溜めておいたのさ。いまなら視界は無し、目潰しに気を取られて殺気も感じにくいハズ‼︎
ドスッ、ガッ‼︎
「っくうッ‼︎」
胴体にフックを当て、足に回し蹴りを喰らわせバランスを崩す。
「斬撃、散弾‼︎」
ドカァン‼︎
散弾でサーリッシュを大きく吹っ飛ばす。
「………まさか血で目潰しとはね。盲点だったわ。」
「卑怯とは言わねぇよな?」
「ええ。これはスポーツじゃない。戦いにおいて反則は存在しないもの。………じゃ、そろそろ本気を出そうかしら。」
本気………、今までは手を抜いてたのか?
「………?」
あれ?何か部屋の空気がひんやりしてきたような
ザンッ‼︎!
いきなり宙から先の尖ったモノが現れ、俺に向かって飛んできた。それは次々に現れ、俺に飛んでくる。いくつかはかわせるが、とてもかわしきれない。
「斬撃、連射‼︎」
ズガガガガガ‼︎
斬撃が命中すると、それは木っ端微塵に砕け飛ぶ。
「‼︎」
砕けた破片まで飛んできやがった‼︎破片が刺さり皮膚に痛みが走る。
「これは…………氷柱か?」
「当たり。結構痛いでしよ?」
「…………そういや、ローザさんが言ってたな。魔法を使う人間にはそれぞれ得意分野があると。普通の魔法使いは通常の魔力弾と軽傷の治療くらいしかできない程の魔力しかないが、得意分野に関しては例外らしい。少ない魔力でも大きな効果をあげられるらしいな。普通そんな氷の塊を一瞬では作れん。お前の得意分野は氷の力か?」
「そういう事。空気中の水分を集めて凍らせてるのよ。」
そういや、俺の得意分野って何だ?ローザさん曰く、得意分野は自分では分からないらしい。得意分野を調べられる魔法もあるらしいが………。
「こういうのもみせてあげましょうか。フリーズッ‼︎」
パキパキ………。
「げ、足が………。」
氷に覆われ動けない⁉︎力を込めるも氷は壊せず、バランスを崩しそうになってしまう。
「ぼさっとしてるからよ。さあ、どう切り抜ける⁉︎氷柱串刺しの刑‼︎」
ギュオオ‼︎
「くそッ‼︎」
これは斬撃を放ってあっさり破壊する。だが、動けないのはあまりにも不利だ。どうやって氷を壊す?足に斬撃を放ってもいいが氷だけ壊すようコントロールできるか?
「一本だけなら大丈夫そうね。じゃ、これは?」
「……………ッ‼︎」
おびただしい数の氷柱が俺に尖端を向けていた。冗談じゃねえよ‼︎動けてもこの数捌ききれるか不安なのに、この状態で………。
「答えは出ないようね。………正直、期待外れ。………じゃあね。」
ヤバい、死ぬ‼︎逃げられねぇ、ああ、氷柱が一斉に飛んできて………駄目だッ‼︎
ゴオオオオオオッ‼︎
「ッ!?」
………、?
生きてる………?
「って熱ッ‼︎」
え?熱い?氷だったら冷たいでは?
「へぇ…………。答え、出てたんだ。」
周囲にある木箱がパチパチと音を立てて燃えている。辺りには氷が溶けてできたと思われる水溜りができていた。俺の足を縛っていた氷も溶けて水になっていた。
これ、俺がやったのか…………。
「ぼーっとしない事ね‼︎氷柱回転銃弾‼︎」
や、ヤバい、斬撃を‼︎
ゴオオオオオオッ‼︎
斬撃が、炎を纏った!?
ドガアアアッ‼︎
炎と氷がぶつかり、相殺される。
「へぇ、面白いじゃない。」
「まさか、俺の得意な事って…………炎の力………なのか?」