第194話 ジェルスVSサーリッシュ①
(ジェルス視点)
「…………以上、あたしの昔話。」
「…………そうか。」
サーリッシュの過去を聞いて、俺は一言呟いた。予想以上に重い過去だった。理不尽に不幸な目にあい、一度は自ら死を選択する程…………。
「この話を聞いても、まだやり直せるって言える?」
「…………。」
「ねぇ、答えてよ。あたしやり直せるの?」
「…………正直、分からん。でも、お前、本当にそれでいいのか?お前は本当はリメイカーにいる事を望んでいないんじゃないのか?」
「………確かにそうかもしれない。でも、どうすればいいの?あたしは………リメイカーにいないと生きていけない………。」
「そんな事はないかもしれないぜ。どんなに辛い人生でも一回救いがあれば、やり直せる可能性もある。お前、一回死のうとして救われたんだろ?だったら希望もあるさ。確かにお前を助けたのはリメイカーだが、悪であるリメイカーに無理に固執する必要もないだろう。」
「………リメイカー止めてどうすんのよ。向こうに帰るの?そしたらまたホームレスよ。飢え死にか、凍死か、もしくはチンピラに殴られて死ぬか…………。家には戻れないわ。そしたらパパが拳銃であたしの脳天に風穴を開ける。ホームレスなんてバイトもできない。もうあたしの人生は終わってるのよ。だから……」
「だから悪に身を置く?ふざけんなよ。お前、そのせいで何人を不幸にしてると思ってる?考えてみろよ。ルーテの人々は死ななかったとはいえお前のせいで集団ホームレスだ。ホームレスの辛さ分かってるお前が何の罪もない人々をお前と同じ目にあわせてんだぞ。」
「あたしも理由ナシにホームレスになったんだよッ‼︎憎い‼︎あたしをホームレスに追い込んだ奴等が憎いッ、あたしを自殺に追い込んだ社会が憎い‼︎何も悪くないのに不幸な目にあわせた世界が憎いッ‼︎理由ナシにホームレスになった奴等がいる?いい気味よ‼︎あたしが味わった苦しみを知れ‼︎明日どう食いつなげばいいかもわからない、いつ死ぬかもわからない、その辛さを知るといい‼︎テメェもこの辛さなんて知らねぇ癖にゴタゴタ抜かしてんじゃねぇよッ‼︎」
「知ってるよ…………。」
「…………え?」
「俺もガキの頃、一年ホームレスやってたんだよ。ゴミ箱漁って、街行く人から食い物たかって、明日どう生きて行けばいいか、必死で考えてた。流石に、お前程酷くはねぇけどな。同じくホームレスのおっさん達に助けられながら、なんとか生きてきた。とても辛かったよ。」
「嘘でしょ?」
「嘘じゃないさ。泥水飲んだ事もあるし、虫を食った事もある。空腹に耐えかねて雑草、ダンボール、酷い時には泥そのものを食ってたぜ。トカゲ焼いて食った事もあるな。」
「…………本当に?」
「ああ。だけど、今、俺はホームレスじゃない。向こうに帰る家もあるし、学校にも行ってる。幸せになれるんだよ、きっと。死にさえしなけりゃな。他の奴を不幸に陥れるなんて、只の八つ当たりに過ぎない。」
「…………。」
「リメイカー辞めたって、幸せになれるさ。そもそもリメイカーにいても幸せにはなれないぜ。他人を不幸にして、幸せな気分になってるだけなんだ。大丈夫だ。一歩踏み出せば、きっと味方も出てくる。誰も手を差し伸べてくれないなら、俺が助けてやる。だから………。」
「…………そんなに言うのなら………あたしを救ってみせるというなら………力をみせなさい。リメイカーを辞めろというなら、リメイカーを倒す程の力をみせなさい‼︎大口叩くなら、あたしと戦って、あたしを救って見ろォッッ!‼︎飛閃、燕‼︎」
「ああ、やってやるさッ‼︎助けてみせるッ‼︎斬撃、鷹‼︎」
ガキィィン‼︎ドカァァン‼︎
「………救ってみせるさ。この力で‼︎」
ジェルスの過去についてはまた今度。
というか、ここでジェルスの過去を入れると、流石にグダりすぎます。一応メインはアイナさんですからね。