第189話 フロウVSポーテン決着
もう………体が動かねぇ………。全身が血で濡れている。骨折は………左腕と、肋骨と、右にもヒビ入ってるな………。もう呼吸すら苦痛だ。
徐々に膨れていた体が縮んでいく。体が損傷し過ぎて獣解放に耐えられなくなり、強制的に解除されたのか………。
手足も顔人間の物に戻る。いい男に戻ったがこの大怪我では台無しだ。体中に生えた狼の体毛も引っ込んだ。もう………戦えない………。
申し訳………ありません、アイナさん………。貴女を助ける事もできず、ここで散ってしまう私を許してください………。
シニアさん、ルルカさん………。約束、守れそうに………ありません………。本当に、ごめん………なさい………。
………私、女性の為に生きていくって、決めたのに………。女性を悲しませないって、あの時から、決めたのに………。情けないなあ………。結局、助けるって決めた女性を助けられないし、大切な人は悲しませる…………。
自分の不甲斐なさに涙が出てきた。もう涙を拭う事さえできない。涙が途中で血と混ざり、赤い液体が頬を伝う。
「………神に祈りは済ませたか?」
ポーテンさんが屈み込んで私に話しかけてくる。
「……………………神は………とっくの、昔に、私を………見捨てているでしょう………。祈ったって………別に、何も、変わりは、しません…………。」
そう言いながら、私はポーテンさんを見上げた。………私がここで元気一杯なら、一撃かましてやるのになぁ………。あの、胸の傷に…………、………ッ‼︎
そうだ…………。一つだけ、勝てるかもしれない方法がある………。幸い、右手は完全にイカれてはいない………。奴は今油断しきっている………。
動け…………、ここで動かなけりゃ、誰も助けられない…………。そんなんでいい訳がない‼︎動け‼︎私の体‼︎動け‼︎‼︎
「うおあああぁぁぁぁぁぁぁッッ‼︎」
ドスッ!
「‼︎」
貫手をポーテンさんの胸の傷に突き刺す。
「スパー、ク………ッ‼︎」
バリバリバリィ‼︎
全神経を集中させ、腕から電撃を流す。ポーテンさんが大きく痙攣する。目が虚ろになり、口から泡を吹く。
ドサアッ!
ポーテンさんが後ろに倒れた。起き上がらない。
「や、やっ、た…………。た、お………した……。」
バタッ。
私も力尽きて倒れ込んだ。体が自分の物ではないかのように重い。
そうだ、腕輪…………。腕輪、壊さないと………アイナさんを………助けられない………。
う、動け………。あと、もうちょっとだけでいい………。
何とか這いつくばって腕輪に手が届くところまでたどり着いた。距離にするとほんの1メートルなのに、この体では、とても遠い。
「さ、サン……ダー、ナイフ………。」
この体ではマトモに魔力も溜められないが、体に鞭打ってなんとか魔力を絞り出し、ナイフを造りだす。
パキィン‼︎
なんとか腕輪が壊れた。これで、アイナさんを助けるのに一歩近づいただろう。
………もう、本当に動けない。神経を集中させても指一歩動かせない。
本当なら、アイナさんを助けるために先に進むが…………この体ではもう無理だ。………ダメージと出血で、このまま死ぬかもしれない。
よくわからないが体が軽くなったような不思議な感じだ。痛みも徐々に無くなってくる。視界が霞む。
………そうか。もうダメなんだ。いくら獣人が丈夫だといっても、ここまでされたら………流石に無理か………。
「皆………さん………。あと………頼み、ます。必ず………アイナ、さん、を………助けてください。シニア………さん、さよなら………。ありが…………とう、ござ、い、ま………し、た………。」
………………………………………………。