第188話 フロウvsポーテン①
(フロウ視点)
「…………貴様………、獣解放ができるのか………?」
「知ってんのか?これの事。」
「聞いた事がある。普通獣人は人間をベースに獣の血がほんの僅かに混ざっている。姿がほぼ人間なのは獣がとても少ないからだ。だが、ほんの一握りの獣人が、内なる獣を大きく引き出す事ができると。」
「ああ。その通りだ。頭ばっか鍛えて戦闘がからっきしな人間より、弱肉強食の世界の中生きてきた獣のほうが戦闘には適している。テメーをぶちのめすにはうってつけって訳だ。」
「フン………野蛮な事だ。獣解放を行う事のできる獣人は総じて闘いを好む野蛮人だとも聞いている。貴様はどちらかというとこっち側に近い人間のようだな。」
「否定はしねぇさ。アイツら(シニア達)と会わなけりゃ、俺はそっちにいたかもしれねぇんだからよ。ただ、俺はこの力に感謝してるぜ。これでアイナを助ける事ができるんだからなッ‼︎」
ドムッッ‼︎
言い終わると同時に腹に回し蹴りを叩き込む。ポーテンが大きく後ろに吹っ飛び木箱に叩きつけられ、木箱が木っ端微塵になった。
勿論これで攻撃を辞める訳もなく、瞬時に奴に馬乗りになり、顔面をひたすら殴打する。
ドッ、ドッ‼︎ドカッ‼︎
「狼爪衝撃‼︎」
ズパアッッ‼︎
爪を模した衝撃波がポーテンの胸辺りを深く抉る。
「おらよッ‼︎」
更に顔面に踵落とし。これは結構効くだろ。踵落としは女でも簡単に自分の全体重を乗せた攻撃ができる。獣解放で筋肉が増し、100kg近くまで体重が増えた今の俺なら相当な破壊力だ。
ガシッ‼︎
「何!?」
グォン!‼︎
一般人なら軽く死ぬ程のダメージだが、ポーテンは俺の足を掴み、片手で放り投げた。
ドカァッ‼︎
壁に思いきり叩きつけられる。………やべぇ、叩きつけられた衝撃で、上手く動けねぇ、早く避けねぇと、反撃が
ドゴォッッ‼︎
「ぐほぉッ‼︎」
瞬時跳躍からの膝蹴りが腹にモロに入った。あまりの破壊力に後ろの壁にヒビが入る。
「へへっ、効いたぜ、獣解放してもここまでダメージを与えられるとは、大したモンだなッ‼︎」
ドッ‼︎
仕返しに思いきり顔面を殴る。ポーテンがよろめいた。よし、今だ‼︎両手を合わせ、十本の指を奴の腹に向け、爪に魔力を込める。
「クローナイフ‼︎」
ドスゥッ‼︎
鋭い爪を十本一気に奴の腹に突き刺す。………が、どうも感触がおかしい。まるで、頑丈な防刃繊維に突き刺すかのような………。
「フン………オレの腹筋はそんな爪なんぞでは突き抜ける事はできん。」
バゴッッ‼︎
強烈なボディーアッパーを喰らい、爪が奴の体がら引き抜かれ、俺の体が宙を舞う。地面が、遠く………。
ビタァッ‼︎
天井にぶつかり、全身に衝撃が走る。と同時に今度は地面が勢いよく近づいてきて…………。
ドタァッ‼︎
「ぐはあッ‼︎」
地面に体を打ちつける。
「…………驚いた………。まだ立てるのか………。しかも、致命的なダメージではない………。まだまだこれから、という事か………。」
「へへっ、狼嘗めんじゃねぇよ。これくらいで殺られる程ヤワじゃねえさ。」
ドッッ‼︎
お互いのパンチがぶつかり、重々しい音を立てる。そこからお互い殴り合い。
ドッ‼︎ドカッ‼︎ドンッ‼︎ドスッ‼︎ドガアッ‼︎
お互い一発一発が非常に思いため、凄まじい重低音が鳴り響く。
「むぅ………正面からの殴り合いでオレとここまでやりあえるとは、正直以外だな………。」
ヒュン‼︎
瞬間跳躍は読めてんだよッ‼︎
「オラアッ‼︎」
ドゴォォォッッ‼︎
カウンターで繰り出した俺のパンチはポーテンの頭を床に叩きつけヒビを入れる。そこに追撃の踵落とし。更にダメ押しで頭に下段突きを喰らわせた。
………やったか?
ヒュン‼︎
⁉︎
ドガアッ‼︎
気を抜いていたところに瞬間跳躍で後ろに回り込まれ胴体に蹴りを打ち込まれて大きく吹き飛ばされる。
「貴様………流石に、頭にきたぞ………。」
ドッ‼︎ドスッ‼︎ドカッ‼︎ドスッ‼︎ドガアッ‼︎
追撃でパンチやキックが次々と飛んでくる。やべぇ、防ぎきれねぇ………。
ドスッ‼︎ドッドッ‼︎ドンッ‼︎ドカッ‼︎ドスッドスッ‼︎ドガアッ‼︎
左腕にパンチを受けた時、僅かにベキッという音がして左腕に鋭い痛みが走った。ああ、折れたな、これ………。
「流石に………限界か?だが、まだまだ終わらんぞ…………。」
く………そ。攻撃が緩んだ瞬間、反撃しようと思ったが………いつ、攻撃が止むんだ?もう、このラッシュだけで殴られた数は3桁いくハズ………。や、や…………ばい。こ、れは………げ、限界だ。
「トドメだ。」
ドガアアアアアアアアッッ‼︎
強烈な回し蹴りが胸当たりに叩き込まれ、俺は宙を舞う。
ドサァッ‼︎
受身も取れず地面に激突した。これは………
死ぬのか?俺は…………。