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ABDUCTION!! ~IN THE ANOTHER WORLD~(凍結)  作者: 迦楼羅カイ
第3部 戦いに生きる人造人間
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第177話 餌

アイナさんが登場して初のアイナさん視点。

(アイナ視点)


あたし達は瞬間移動で薄汚い建物へ辿り着いた。ここは人造人間の研究所。と言っても研究をしているスペースはほんの僅かで殆どは職員やあたしの生活スペースだが。


到着した瞬間、チェリによって手錠をかけられた。封魔石でできた手錠でこれであたしは魔法を使えなくなった訳だ。あたしは魔力で動いているのも同然(人造人間を造るのに足りない技術を魔法で補っているため)のため、封魔石に触れるとどうなるのかわからなかったが、どうやら普通に活動できるらしい。別にここで動けなくなって死んでも構わなかったのだが。どうせもうすぐ死ぬのだから。


「………こんな事をしなくたって、あたしは逃げませんよ。」


「念には念を、てやつだ。」


「どうしてリメイカーに?人造人間は悪人から人々を守る存在のハズでは?」


「おや?リメイカーは悪ではないぞ?リメイカーは腐敗した世界を救う救世主なのだからな。」


「悪人達は言葉だけは美しいですね。言葉だけは。」


そう言った瞬間、アーテス所長に思い切り蹴飛ばされた。魔力での防御も叶わず、あたしはよろめいて倒れる。


「馬鹿にするんじゃあない。そもそも、リメイカーを倒そうなんてお前達が勝手に危険だと決めつけてるだけなんだ。こんな素晴らしい存在が悪?危険?馬鹿馬鹿しい。リメイカーが戦うのだってリメイカーの思想を分かってくれず、すぐ暴力に走る愚か者たちのせいだよ。話しを聞いてくれないから仕方なく戦うんだ。」


「変わりましたね、アーテス所長。あたしがここにいた時は優しくていい人だったのに。」


「何とでも言え。さあ、無駄話は終わりだ。歩け。」


チェリに手錠を引っ張られ歩く。研究所の中に入り、少し狭い通路を歩く。見覚えのある通路だ。こんな形で再びここに来るなんて思いもよらなかったけど。


そのまま階段を登り、二階へ。二階は職員達の生活スペースだ。今はあらゆる物が片付けられており、広いだけの寂しい空間と化している。


三階へと続く階段の手前の部屋に入ると、既に先客がいた。どれも知った顔だ。


ディスター、サーリッシュ、ポーテンの三人がいる。他に誰かいるのかはわからない。


「………そいつが件の人造人間か。この前ちょろっと見た時には三人の誰が人造人間かわからなかったが………そんな美人が人造だったとはね。」


「もうちょっと感動せんか‼︎私の傑作だぞ‼︎人間を造るという領域!!神の所業に等しいのだ‼︎」


「興味ないね。俺からしたらそいつが人造人間であるかないかなんて関係ない。アンタに対して道徳的な事をあれこれ言う気もない。ただクーヤの命令に従ってここにきただけだ。」


「フン‼︎つまらん奴だ。チェリ、次に命令するまで好きにしていいぞ。」


所長がそう言うとチェリは手錠から手を離し、近くの壁にもたれ掛かって目を閉じ眠りはじめた。


「さあ、お前は歩くんだ。三階の奥の部屋だよ。」


あたしは三階へ行ったことがあまりない。だからどういう構造なのか殆ど覚えてなかった。通路を真っ直ぐ進み、大きな扉を開けた。重い扉が耳障りな音をたてる。やはりがらんとした広い部屋だが、部屋の奥の壁に気になる物があった。


「………あれに?」


「そうだ。」


あたしは大人しく従って奥まで歩き、壁に背中を向ける。アーテス所長が私の両手足と首を鎖でつなぐ。当然ながらこれも封魔石でできている。


「ここで待っていろ。」


「すぐに処分するんじゃないんですか?」


「黙って従え。」


そう言うとアーテス所長は部屋を出て行く。あたしは独りこの部屋に取り残された。


………メレン………。ごめんね。でもああしないと貴女がチェリに殺される。セプル君にも、悪い事しちゃったな………。


ああ、会いたい。メレンに、皆に会いたい。アーテス所長に従った時はもう会えなくてもいいと決心したのに、今は会いたくてたまらない。あの時は皆を守るために処分されていいと思ってたのに、独りになると命が惜しい。


でも。もう喚いても何も変わらない。このまま解放される事もない。皆に会える訳でもない。処分されるのを受け入れるしかない。今はなるべく楽に処分してくれる事を祈ろう。


………。


あたしがここで独りになってどれくらいだろう?お腹が減ってきたし、喉も渇いた。もしかして、あたしを餓死させる気か?たちの悪い処分法だ。いくらあたしが要らない存在だからといって放置とは。もっと慈悲の心を持ってくれてもいいじゃない。


と、そんな事を考えていると扉が開いた。とうとう処刑の時間がやってきたのかと思ったが、所長がでっかい剣や斧を持ってくるわけでもなければ、チェリが殺気立って殺しにきたわけでもない。


「おう、起きてたか?」


ディスターがお盆を持ってきた。お盆にはパンとコップに入った水が乗っている。


「寝てないみたいだな。お前がここに来てから7時間経っている。よくそんな状態で耐えられるモンだな。」


ディスターがあたしの目の前に座り、パンをちぎってあたしの口元に持ってきた。


「………要らないわよ。」


「毒なんて入ってねぇよ。食べないと体力を消耗するぞ。」


「どうせすぐ死ぬんだもの。構わないわ。」


「まあ、最後の食事になるかもしれないんだ。贅沢なモンではないが、食っとけ。それとも毒がない証明がいるか?」


ディスターがちぎったパンを口に入れ、水を少量飲む(口は付けてない)。


「ほら、毒じゃねぇだろ。」


そう言ってあたしの口にパンを押し込む。喉に詰まらせそうになるがなんとか飲み込む。


「なんでお前処分されに来たんだ?」


あたしに水を飲ませながらディスターが言った。


「あたしだって死にたい訳じゃない。………ここに来た時は死んでもいいって思ってたけど。」


「どうせ仲間の為なんだろ?おチビちゃんか?青髪の銃少女のためか?………まあいい。感動的なシチュエーションじゃねえか。」


「そういうのはいいわ。感動的とかなんとか言ったって、ここであたしが死ぬだけなんだから。」


「それはどうかな?」


「アーテスが言ってたぜ。奴ら………カイン達は必ずここに来ると。」


‼︎⁉︎


「どうして⁉︎探知の魔法を妨害する魔法をかけてたのよ‼︎あたしの魔力はジュランガ君より強いから追跡できないハズ………。」


「そう、追跡できない…………あの狼男はな。」


「………まさか、キュリアッ‼︎」


「そう、あの小娘、どうやら魔力とは違う方法で生物の気配なんかを掴めるんだろ?都でサーリッシュが斬撃を放つ前に攻撃を予測してたからな。」


「くそ、考えが浅かったわ………。」


「とにかく、あいつらはここに来る。アンタを助けにな。アンタはさしずめ、あいつらをおびき寄せる餌ってとこだ。」


「そんな………。」


「そう言ってるが、アンタ、本当はこれを望んでいるんじゃないのか?」


「………どうしてそう思うの?」


「さあ?なんとなく、というか………。勘だ。………恐らく、あと半日以内にはくるだろう。心の準備はしておけ。」


「あの、聞きたい事があるんだけど。」


「どうした?」


「貴方はどうしてリメイカーに?」


「………あっちの世界で色々あったのさ。俺がカイン達と同じ世界の人間って知ってたか?この世界に来てリメイカーになって良かったのか悪かったのか………それはわからない。ただ、時折、ふと虚しくなるんだ。なぜそうなるかはわからないが…………。………話し過ぎた。じゃあな。」


それだけ言ってディスターは行ってしまった。

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