第171話
(カイン視点)
キュヌムを病院に運んでからしばらく経つ。ここにいるのは俺、ジェルス、トルト。そこにメレン達も病院にやってきた。メレンの腹から血が流れており、俺はびっくりしてメレンに尋ねる。
「おい、メレン!大丈夫か!?」
「うん。何とか。」
「………ならいいけど。」
「そういう貴方は?アイツに殴られたんでしょ?」
「俺とジェルスは大した事ねえよ。あとトルトも。しかしキュヌムは…………はっきり言って分からん。今治療受けてる。ここでは集中治療できないから、ナースの一人が魔導石使って治療してるみたい。」
「そっか………なんか、申し訳ない事しちゃったね………。私達に関わったばっかりに………。」
トルトが僅かに笑って言った。
「…………僕も兄さんも自分から首突っ込んだんだ。君達が悪い訳じゃない。」
「でも…………。」
「いいんだ。…………、兄さんはきっと大丈夫。今も治療受けてるからね。それより、君達も怪我してるじゃん。ほら、治療受けに行ってきなよ。」
「…………うん。」
メレン達が通路の奥へと歩いて行く。
「…………正直言って、後悔してないって言うと嘘になるよ。………ま、自業自得だからね。にしてもさ、君らはあんなのと戦ってんの?」
「ああ。詳しくは言えんがな。」
「そっか。」
1時間後、メレン達が戻ってきた。メレンは腹に包帯を巻かれているみたい。
「ジェルスさん、大丈夫ですか?」
「へーきへーき。一発しか喰らってないし。」
「…………ところでフロウは?」
「ヒノちゃんの迎えと、家の壊れた所を直しに行ってる。ヒノちゃんもフロウと一緒にいるんじゃない?」
あ、呼んでも姿見せなかったのは既にメレン達の方へ行ってたからか。
「…………フロウが家壊したのか?」
「いや、私がやったけど?」
「…………なのにフロウが?」
「うん。アイツは頼めば何でも聞いてくれるから。」
「お前は下級生をパシらせる不良か…………。」
「フロウなかなか役に立つよ。言う事何でも聞くし、危ない所を間一髪で助けてくれたし。」
「ふーん、なんか創作物でしか有り得ない様なシチュエーションだったのか。実際にあるんだ………。」
そういうのってカッコいいよな。男なら誰しも憧れるよ。
「カインさん。」
「ん?何?キュリアちゃん。」
「実際にあるのかとか言ってますけどわたしカインさんにそんな感じで助けられましたよ。」
へ?
「…………ああ、ゲリズの時か?あの時は俺からでかい物音したから来てみたらアイツがいたってだけでそういう自覚なかったんだけど。」
「アンタ、そんなにカッコいい事してたの?」
「カッコつけた気はなかったけど。」
「……………ふーん。」
それからさらに2時間後、フロウとヒノちゃんが戻ってきた。
「おっす、フロウ。」
「…………メレンさん、修復終わりましたよ。全く………何で自分がやった訳でもない器物破損で怒鳴られなけりゃあいけないんですか。大変だったんですからね。」
「ごめーん。お疲れさま。」
謝る気も労う気もねぇな………。
「おにいちゃん、けがしてない?」
「うん。してない。」
「よかったぁ!」
そう言ってぎゅっと抱きつく。
「あだーーーッ!!駄目駄目、殴られた所だからまだ触ると痛いんだよ!!」
「むー、けがしてないって………。」
「外傷はないから。」
ジェルスが不機嫌そうに離れるヒノちゃんの頭をわしゃわしゃと撫でる。
「フロウ、お前、怪我は?」
「大した事ありませんよ。殴られて吹っ飛ばされて背中にガラスの破片刺さっただけですからね。ここで治療受けるまでもないかと。」
………普通に考えると結構ただ事ではないハズだが、まあフロウは桁外れに丈夫だから本当に大した事ないのだろう。
その後もしばらくゆっくりしてたが、治療室から医者がでてきた。キュヌムの診察をしていた医者だ。
「あ、先生!!兄さん、キュヌムは!!」
「…………正直に言いますと、危ない状態です。腰の骨が砕け、脊髄に損傷が。魔力で治療しているので、リハビリすれば歩く程度には回復すると思いますが、恐らく、戦うのは今後無理かと…………。」
「…………そう、ですか…………。」
「あの………トルト…………。ごめん…………。」
「いいんだよ。さっきも言ったけど、自分から首突っ込んだんだから。…………君達はもう宿屋に帰るといい。僕は兄さんと二人で話をしたい。」
「……………ああ。分かった。皆、行こうか。」
俺達はインゴー兄弟を置いて宿屋(ハンモックの安いほう)へと戻る。宿屋に入り受付の女性に金を払って適当にハンモックに腰を降ろす。
「………トルトの言う通りとはいえ………後味悪いな…………。」
「…………ですね。結果論になってしまいましたが、これ以上部外者を巻き込まないようにしないといけませんね。」
「……………。」
「どうした、ジェルス?」
「…………いや、何でもない。」
と、その時、今まで何かを考えているような様子だったアイナさんが皆に話しかけてきた。
「ねえ、皆。ちょっと話し、というかお願いがあるんだけど。」
「何ですか?」
「あのさ、これからしばらく単独行動したいんだけど、いいよね?」