第162話 敵
「あ、あ……………、な、に………が……………」
いったい誰が…………。メレンさんやアイナさんが駆けつけて撃ったというのは考えにくい。心臓を狙っているという事は殺害する事が目的だからだ。
ドサッ。
ガイルが崩れ落ちた。敵同士という事も忘れ、私が駆けつけ様子を見ると、辛うじて生きているが、かなり危ない。
魔力で治療を開始する。間に合うか…………?
「……………な、ぜ…………たすけ、る…………?」
「いくら敵でも死にかけた人を見殺しにはできませんよ。いいから黙っててください。死にたいんですか?」
「…………。」
よし、いい具合に直っている。しかし、誰が…………。
!!?
ズドン!!
咄嗟にかわしたが左腕を魔力弾が貫通した。
「ぐあああああッ!!!」
「ねえ、何で助けるの?意地悪な事するのね。」
「クーヤさん!!?」
クーヤさんが私達の前に現れた。
「な………ぜ、だ、クー………、ヤ。」
「ああ?ふざけんじゃないわよ。アンタ、ヒノちゃんを殺そうとしたでしょ。やけに帰ってくるのが遅いと思って様子を見に来たら…………。」
「あ………いつは、う………裏切り者、だぞ………。」
「だけど、殺せって言われてないよね?私の友達を勝手に殺そうとするなんて許す訳ないでしょ?」
クーヤさんが倒れているガイルさんの首を踏みつけグリグリと踏む。
「ぐああ……………!!」
「ああ、そうそう。レリカからアンタを殺していいって許可もらってるから。だからアンタはキッチリ殺して帰るからね。」
「止めてください!!クーヤさんッ!!」
「貴方の命令なんて聞かないわよ。こちとらコイツを殺すためにわざわざきたんだから。嫌なら力ずくで止めてみたら?」
くっ、私は女性を傷つけないって決めてるのに…………。
「おねえちゃん………、やめて…………。」
!!
「おい、大丈夫か、ヒノ!!」
「わたしは………大丈夫………。」
「ヒノ…………。一応行っておくわ。貴女達とあたし達はもう敵なのよ。貴女はあたしと仲良くしてくれたから、殺されないように助けにきてあげたけど…………。」
「だって、おねえちゃんたちがわるいひとって、わかっても…………やさしくて、わたし、ほんとにだいすきだったもん…………。」
「……………。じゃあその認識は改めときなさい。あたしみたいなのは好きになるべき人間じゃないから。」
「………………。」
と、その時、向こうから兵士達が次々と走ってくる。
「…………さて、あたしはそろそろ行かないと。」
「あ、待ってください、クーヤさん!!俺も貴女と話したい事が…………。」
「…………貴方、あたし今はそういう気分じゃないって事、察してほしいわ…………。」
「……………。」
「どういう内容かは想像つかないけど、次会った時にでも聞いてあげるわ。じゃあね。」
消えた…………。
兵士達が次々と駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか!!」
「私は大丈夫です。それより、ジェルスさんとヒノさんを。あと、あの方も。」
倒れているガイルさんを指さす。
「あの方は………貴方達と戦った敵では…………。」
「死にかけてるんですよ!!?敵だの味方だのは関係ありませんッ、早く助けてやってくださいッ!!!」
「は、はい!!」
「皆、大丈夫!!?」
メレンさん達もようやく到着。
「はい。私とカインさんは無事ですが、あの二人が…………。病院で集中治療すれば一晩で治ると思いますが………。」
「いやアンタも腕ブチ抜かれてんじゃん!!」
「ああ、こんなもの昔肝臓を…………いや、止めときましょうか。」
「フロウ、貴方、一体何が…………。」
「………もう昔の話ですよ。それに、秘密は美女だけのものではありません。私みたいないい男にだってあるものです。」
「何よ、カッコつけて。いいからアンタも病院行くわよ!!」
メレンさんに引っ張られて病院に連れていかれる。幸い神経は逝ってないようで、塞がれば大丈夫とのこと。
「正直私病院苦手なんですよ…………。」
「何子供みたいな事言ってんのよ。」
「いや、そうじゃなくて、薬の臭いが………。結構鼻にくるんですよね………。」
「ああ、犬だから?」
「狼ですよ。しかも、沢山の薬があるから、その混ざった臭いがキツいんですよね…………。」
「いーから我慢して。魔力弾貫通してんだから。」
「あー、はい。分かりました。では、せめてその前に貴女の…………て、嫌ですねーカインさん。冗談ですって冗談。だから病院のメスなんて物騒な物持ち出さないでくださいよーアハハ」
「すいませんコイツの去勢手術お願いしまーす」
「すいません去勢はやめてくださいそれ以外なら何でもやりますから去勢だけはああああああ」
「男って本当バカ……………。」