第160話 処刑
翌日、俺はフロウと共に出発の準備を行っていた。
「あの、カインさん。一つ聞きたいんですが。」
「何だ?」
「テントは使わないんですか?」
「……………へ?」
「テントですよ。テント。今まで運良く雨降ってませんでしたが、そーいう時必要でしょう。そろそろ寒くなってきますし。」
「そう、だな。」
やべぇ、何故か今までそういう発想無かったよ。フロウが皮肉っぽく笑う。
「ほら、ここに大きなテント、ギリギリ10人くらい入れそうですよ。組み立てに時間かかりそうですが、便利には違いないでしょう。」
「…………ああ。」
その後、表に出て食料品を買い出しに出る。普段は狩りをして食料を調達しているが、ここから南に広がる平原地帯にはほとんど野性動物などがいないらしい。
保存に適している別次元に保存するとはいえ、腐りやすい物は持っていけない。パンや干し肉などの保存しやすいものを大量に買っておく。次の町まで遠いうえに7人もいるのだから。
買い出しを終え、城に帰ろうとした時、何かが上空を飛んでいったのが分かった。ああ、あれは…………。
「こらーーーッ、待ちやがれーーーーッ!!勝手に出かけるんじゃないと言っただろうがァーーーーッ!!!」
「苦労してますね、ジェルスさんも。」
周りの一般人もこの奇妙な二人に対して軽く引いている。
「おい、お前らもヒノを捕まえるの手伝ってくれ。」
「いや、何かその………、今は関わりたくないというか………。」
この奇妙な二人と仲間って思われるとこっちまで変な目で見られそうで…………。
「チッ、おーい、ヒノ!!!戻ってこーーーーいッ!!!」
まあ、ヒノちゃんも飽きたら戻ってくるだろ。城に帰ろ。
と、ジェルスに背を向けて城に向かって数歩歩いたその時。
ズドン!!
!!?今のはッ!?
「何ィーーーーーッ!!?ひ、ヒノーーーーーーッ!!!」
急いで振り返ると上空を飛んでいたヒノちゃんが地面に落下していた。
ガッ、ドサアッ!
ヒノちゃんが一度屋根にぶつかった後地面に激突する。住民達が悲鳴をあげて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
俺達が追い付くと、ジェルスがヒノちゃんを抱えて揺さぶっていた。ヒノちゃんの下腹部に何かが貫通した後がある。
「大丈夫です、生きてます。屋根のすぐ上を飛んでいたのが幸いですね。」
「誰だッ、こんな事やりやがった奴はーーーーッ!!!」
「俺だ。」
!!!
すぐ近くの路地から男が歩いてきた。赤黒い長髪であり、分厚いコートのような服を着ている。
「俺はガイル。クーヤからの命令でヒノの後を追ってみればまさかリメイカーを脱退していたとはな。」
ガイル…………確か、昨日のヒノちゃんの話にも出ていたな…………。
「しばらく様子を見ていて、離反は確実なようだからな…………。俺の独断での行動だが…………。裏切り者は生かしてはおけん。そいつには死んでもらうぞ。」
「テメェ…………んな事、俺が許すかよォォオォーーーーッ!!!」
「よせ、ジェルスッ!!剣も持ってねぇだろッ!!!」
ズパアッ!!!
「ぐ…………うああ…………!!」
「頭に血が昇った奴ほど、死に急ぐ…………。」
ジェルスがロングソードで斬られ、倒れてしまう。
「………カインさん。二人を。」
「フロウ、お前が?」
「カインさんも剣を持っていないでしょう?私なら大丈夫です。」
「…………分かった。」
「貴様………確かゲリズを倒したとかいう犬ッコロか…………。」
「ああ、ありましたねそんな事。彼はお元気ですか?」
「ん?ゲリズは死んだぞ。」
え?
「レリカの怒りを買った上に使えないと判断されたからな…………、まあ、どうでもいい。うざったいのが一人消えただけだ…………。」
「なーんか、仲間意識とか、そういうの無いんですね…………。まあ、いいでしょう。女性を傷つけた落とし前はつけさせて頂きますよ。」