第156話 悪魔の国
卒業テストも終わり、ポ○モンの厳選に飽きたら投稿する日々。
(カイン視点)
「………で、本当に連れていくのか?」
「ああ。この子の家が見つかるまでだ。どこにあるかは知らんけど。」
「…………それって見つからない時は?」
「ずっと一緒って事になるのかなぁ…………。」
「おいおい…………、ノープランで連れてきやがって、全く………。」
あの後、俺らはついてくる事となったヒノちゃんも馬車に乗せ、再びルーテに向かう事となった。しかし、この子いつまで一緒に来るのだろう?それこそ家が見つからなかったらどうすんだ?
………まあ、先の事考えても仕方ないか。家がどこか分からんのに放っておく訳にもいかないってのは確かだし。俺がコイツの立場でもきっと連れていくって言ってただろうしな。
馬車の中はさっきよりも一層空気が張り詰めている。当たり前か。馬車を襲ってひっくり返した奴を連れていくんだから。武器を手に持って、いつでも戦闘できる準備をしてる奴もいる。まあ元リメイカーにとっちゃアリンコみたいなモンだろうけど。なんたってジェルスと互角にやりあったんだからな。
ヒノちゃん本人は自分が警戒されている事なんて露知らず、のんきにジェルスの膝の上。しっかし2時間前まで殺りあってたのによくここまで打ち解けたな。
俺は手を伸ばしてヒノちゃんの頭を撫でる。綺麗な銀の髪はさらさらとしており心地いい。しっかし、こんな可愛い子になつかれるなんて、ちょっと羨ましい。
手をずらし手が翼に触れた途端、翼がびくっと動く。
「もー、このつばさはかざりじゃないんだよー?」
「ああ、ごめん。」
ヒノちゃんが不機嫌そうに言った。どうやら敏感な部分らしい。斬撃を弾いていたのは魔力で防御していたからなのだろう。
「ん?どうした?キュリア。」
「あ、い、いえ!!何でも!!」
キュリアちゃんは先程からジェルス、というより膝に座っているヒノちゃんをぼーっと眺めていた。何かあったのか?
…………俺がこんなの考えてもしょうがないか。
次の日。ようやく俺達はルーテにたどり着いた。
「………こ…れは…………。」
「酷くやられてんな、こりゃあ…………。」
ここから見ただけでも相当やられている。外壁からしてボロボロに半壊しており、壁の向こうの建物も崩れているのが確認できる。
「とにかく、中に入らないとな……………。いくぞ、ジェルス。」
「ああ。…………おい、キュリア。ここでヒノと遊んでな。」
「え?わたしも行きま
「いいから。ヒノ!ここでキュリアと遊んでて。」
「えー?いっしょにい」
「テメーもか!いいから遊んでな!!どっかに飛んでいったりするんじゃないよ!!!」
「む~、わかった。はやくかえってきてね~。」
多分この子は俺達がなぜここに来たかも分かってないんだろうな………。
とにかく、入り口から中に入る。普段居るはずの見張りの兵士もいない。
ここから見ると被害がどれ程のものかよくわかる。殆どの建物はもはや修復不可能なまでに破壊されており、瓦礫が散乱して道は歩きづらい程だ。これを、あの二人がやったのだろうか……………。
兵士達の中には既に瓦礫の撤去にとりかかっている者もいる。しかし、この大損害。撤去だけでもどれくらいかかるだろうか。ましてや、復興となると…………。
誰もいない瓦礫だらけの大通りを歩き続け、俺達は城まで辿り着いた。城は殆ど壊れてはいなかった。
中に入ると、多くの人々が城の中に居る事がわかった。皆、ここに避難しているのだろう。疲れた顔をしている。
「………おい、アンタら、都の兵士じゃねえようだが…………。」
兵士と思われる悪魔族の男がこちらに話しかけてきた。スキンヘッドで背が高い。
「ああ、はい。護衛みたいなものです。」
「…………そうか。見ねぇ格好だったもんでな。しかし、同行してるということは、王が相当信頼なさっているようだ。」
「あの、話を聞かせてもらっていいですか?」
「……………ああ。報告にいったやつから聞いたかもしれんが、金髪で方目を隠した痩せた女と、黒髪を束ねた筋肉質の男だった。服装も見たことのない変わったものだったな。俺はその時門で見張りをしていたんだ。そしたら二人がやってきた。兵士の俺が言うのもなんだが、こんなへんぴな所に徒歩で、しかも変わった格好だったから怪しいとおもったんだがな。二人はただ通してくれ、と。で、中に入れたらいきなり武器を取って……………。」
男がチッ、と舌打ちした。
「止めようとしたけどな、全く敵わなかったよ……………。一瞬で叩き伏せられて気絶しちまった。目を覚ましたら城のベッドの上。町はこの有り様、て訳だ。」
「そう………ですか。」
やはり、兵士ではリメイカーには敵わないか……………。多分、他の兵士も駄目だったのだろう。
「にしても、誰も勝てないとは、強い奴等だ…………ルイズ兵長すらも…………。」
「ルイズ兵長?」
「ああ。俺らのリーダーで超人級の人さ。都の兵士達に全体の規模は負けてるが、個人の実力はフォルス兵長を凌いで大陸最強と言われている。で、その兵長だが、俺が気絶している間にそいつらに復讐する旅に出ちまったらしいんだ。」
「…………そう、ですか。」
………きっと敵わないだろう………。
「で、耳貸してくれ。」
「はい?」
「実はそれに、この国の王女であるタバサ様も同行されたらしいんだ。」
「はぁ!?」
「しーッ!!声がでかい!!!タバサ様は王女でありながら凄い実力をお持ちでな。国の危機には自ら先陣をきる程なのだ。きっと復讐に向かったルイズ殿に頼んでついていったのだろう。お前らは都の王が信頼してるようだから話すが国民には絶対に話すなよ!!」
「は、はい。と、ところで、もう一つ聞きたい事があるんですが、被害状況を教えて頂けませんか?」
「ん?…………被害状況なら、それを調べていた奴がいるが、ああ、あそこだ。おい!クルード!!こっち来てくれ!!」
「………聞いてたぞ、ラウド。そこの二人に教えてやればいいんだろう?こっちに来な。」
俺たちはクルードと呼ばれた男の元に近づいた。
「まぁ、結論だけ言えば、死者はゼロだ。」
?
「え?町はあんな有り様なのに、誰も死んでいないんですか?」
「ああ。俺たち調査班が全員に聞いたから間違いない。金持ちのお嬢様から、路地裏のチンピラまでな。まあ、チンピラ共は大人しくしてもらってるが、とりあえず死者ゼロ。」
「と、すると、皆運良く致命傷にならなかったんですね?」
「いや、ここからが奇妙でな。重傷者…………というより怪我人がほとんど出なかったんだよ。皆、崩れた瓦礫の欠片で怪我したとか、つまずいて怪我したとか、それだけだ。」
え?
「俺も驚いたよ。こんな事、偶然ではあり得ない。明らかに、人を傷つけないよう、人が出ていって無人になってから建物を破壊している。…………何が目的なんだろうな?」
何だって…………?アイツら、誰も殺していない……………?
「ジェルス、これは…………。」
「ああ…………。まるで人を傷つけるのを恐れていたかのような…………。何が目的だったんだ?それとも、これが命令か、もしくは…………。独断で誰も殺していないのか…………。」
…………とりあえず、帰ったらアイナさん達にキチンと伝えよう。