第155話 ジェルスVSヒノ(その2)
さーて、コイツに何とか話を聞いてもらわねばならんが…………。動きを止めないといかんよなあ…………。暴力を止める為に暴力を振るうなんて、本末転倒な気がするが、まあいいや。
ギン!!ギンギンギン!!!ガキィンッ!!!
ヒノの刃ブーツの連続蹴りを何とか受け止め続ける。コイツは空を飛んでいる為に両足を使えるのが利点だよなぁ。
というか、好守両方に使える翼、空を駆け高い機動力、これってかなり強いと思う。
「とてもつよいねー、お兄ちゃん。じゃ、これはどう?」
と言って距離を取る。
「いっくよぉーーーー!!!羽根暴風雨ッ!!!」
ドゴオオオオオオッ!!!
翼と魔法で風の刃と羽根の刃を混じらせ嵐のように飛ばしてくる。範囲広すぎてかわせねぇなこりゃ!!
ごく狭い範囲、ピンポイントでいい!!吹き飛ばせれば…………!!!
「斬撃ッ、回転十字!!!」
ズガアアアアアッ!!!
…………よし、防げたな。パッと思いついたのをやってみたけど上手くいって良かった。
「すごーい、あたしの一番つよいわざなのに…………。」
「十分すぎる威力だよ、全く……………。馬車を引っくり返したのはこの技か?」
「うん!!すごいでしょー?クーヤお姉ちゃんもほめてくれたもん!!!」
「そりゃ大した技だ。」
ガキィン!!!
それにしてもどうするかなぁ…………。剣は届かないし、遠距離攻撃は弾かれるし、サブウエポンはロクに用意してないし……………、ん?これは……………。
「斬撃、鷹!!!」
ブォン!!!
突然、視界からヒノが消える。……………上!!
「急降下兜割り!!!」
上空から急降下する勢いをつけた踵落としか!!!
ドスッ!!!
俺の左肩に刃が刺さり血が吹き出す。焼けつくような痛みが走った。
「ジェ、ジェルスさんッ!!!」
「大丈夫だ、キュリア………!!」
ガシッ!!!
肩に突き刺さっている足を左手で掴む。
「へへ…………捕まえたぜ…………、まともにやりあうと叶わねぇがな、仕方ない、これを見ろッ!!!」
右手に握った物を見せつける。
「これが何だか分かるか?手榴弾だ。もうテメーは逃げられねぇ!!!コイツでこっぱみじんだぜーーーーーッ!!!」
「え?い、いや…………。ま、まって、まってよ、そんな事したら、お兄ちゃんも…………。」
「うるせーッ、リメイカーを道連れにできるってんなら俺は喜んで吹っ飛んでやる!!!そら、栓を開けるぞ!!!」
「ジェルスさん!!?何やってるんですか!!?」
キュリアの驚いた声が響く。が。
パキン!!
「ッしゃあ栓開いたぁッ!!!これであと5つ数えたらあの世行きだァッ!!!」
「い、いやッ、いやァッ!!!」
「5!!」
「や、止めてッ!!!はなしてぇッ!!!」
「4!!」
「ちょ、ちょっとジェルスさん!!?本気なんですか!!?」
「3!!」
「いやーーーーッ!!あたししにたくないッ!!!」
「2!!」
「止めてくださいジェルスさん!!!止めてッ!!!」
「1!!」
「いやァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
「ドッカーーーーーーーンッ!!!!」
と、掴んでいたヒノが急に重くなった。
「おっと。」
恐怖で失神したヒノを受け止める。うわ、失禁してるよ…………。
「ジェルス……………さん?」
「ん?どうした?」
「いや、あの…………。どうした、じゃなくて、爆発…………。」
「嘘に決まってるだろ。」
「へ?」
「いや、だから。この手榴弾はフェイク。そしてさっきのアレはブラフ。」
「は、はは………嘘………。」
途端にキュリアが涙目になる。
「わ、悪かったよ。心配させて。とにかく、コイツを…………キュリア、替えのパンツ持ってるか?」
「え?なんでですか?…………!!も、もしかして…………!!!」
顔を真っ赤にしてもじもじするキュリア。
「何を想像してんだお前はッ!!!コイツが恐怖で漏らしたんだよッ!!!」
「あー、忘れちゃいました。」
「……………困ったなあ。あと女性って他に……………。」
『……………あ。(二人同時に)』
いるじゃん。あと一人。あの大きな人。
「…………キュリア、替えがあるか聞いてきて。あったらもらって。」
「えぇ!?わたしがですかぁ!!?」
「当たり前だろ!!男の俺が替えのパンツあったらくださいとか頼めるかッ!!!」
と、そんな言い合いをしていると…………。
「あの……………。」
『うわーーーーーーーーーーッ!!!!(二人同時に)』
10分後……………。
……………とりあえずパンツを替えて(もちろんキュリアがやった。)、刃ブーツを脱がせて寝かせる。パンツのサイズが全然違うけど、余った部分はキュリアが結んだみたいだから大丈夫だろう。
「そういやカインは?」
「あ。止血はしたんですが…………あの、包帯の巻き方が分からなくて……………。」
キュリアがカインの方を指差す。
「うわぁ…………。」
………………。
「カイン、大丈夫か?」
「前が見えねえ…………。」
「大丈夫。怪我のせいじゃないから。」
まあ、コイツは大丈夫でしょ。
それから10分くらいして、ヒノが目を覚ました。
「ん……………。」
「おお、気がついたか。」
「あれ…………あたし…………、ばくはつで…………。」
「ああ、驚かせてごめんな。大丈夫だよ。生きてる。でさ。ちょっと話したいんだ。」
「……………?なぁに?」
「君、レリカから暴力は楽しい事って言われたんだろ?」
「うん。」
「暴力はな、いけない事なんだよ。レリカ達は、暴力で、皆に自分達の言う事を無理矢理聞かせようとしているんだ。」
「え?うそよ。だって、なかよくしてくれたもん、やさしかったもん……………。」
「それはな、君を騙して利用するためについた嘘なんだ。君は強いから、それを利用してやろうってだけで、本当は優しくなんかない。」
「……………そんな……………。やさしかったもん…………レリカちゃん…………クーヤお姉ちゃん……………。」
「………簡単には受け入れられないかもしれないけど、これは本当の事なんだ。」
「そんな………、そんな…………。」
「今ならまだ戻れる。お家に帰って、家族と仲良く、やり直せるよ。」
「ほんと?ママにまたあえる?」
「ああ。だから、暴力は辞めるって約束できる?」
「……………ママにあえるなら、やくそくする。」
「よし!!じゃあ、レリカから何か貰わなかった?」
「うん。あるよ?イヤリング。友だちのあかしだって。」
そう言って左耳を見せてくれた。確かに、あのマークのついた球体の飾りのついたイヤリングをつけていた。
「これはレリカ達の仲間って事を表すマークなんだ。もう暴力をしないなら、これ、捨ててくれると嬉しいんだけど…………、どうかな?」
「………………うん。わかった。」
そう言ってイヤリングを外して放り投げた。
「よし、じゃあ、お家に帰ろう。君のお家、どこ?」
「あたしのお家……………。…………………。……………どこ?」
「何故聞き返した。」
「うう、分かんないよぅ…………。」
「……………参ったなぁ…………。じゃあ、しばらく俺達についてくる?俺達は世界中色んな所にいくから君のお家も探して、見つけたら帰るってことで。」
「…………うん!!」
「よし!!じゃ、よろしく、ヒノ!!!」
「うん!!!よろしくね!!!お兄ちゃん!!!」