第154話 ジェルスVSヒノ(その1)
大きな音に驚いたのか馬車が急停止した。車体が大きく揺れる。
「きゃあああああッ!!」
キュリアが驚いて悲鳴をあげる。俺は咄嗟にキュリアを抱いて支えた。
揺れが収まる。
「な、何があったんだ…………。」
「おい、皆大丈夫か!?」
兵士の誰かが叫ぶ。カインが剣を持ち、立ち上がった。
「皆さん、構えててください。」
カインが言って外へと踏み出す。それから約10秒後、
「ぐあああああッ!!」
「え!!?」
「おいッ!!何があった!!?カイン!!!」
俺も剣を持ち外へと出る。まず目に飛び込んできたのはひっくり返された馬車。どうやら物資を積んだ車のようだ。そして、倒れたカイン。カインの顔のあちこちから血が流れている。鋭利な刃物のようなもので切り裂かれたような傷……………ん?
「なんだ、これ?」
地面に落ちているのは白い鳥の羽根。結構大きく、長さは俺の顔くらいある。あちこちに落ちており、いくつかには血が付いている。
もしかしたら、カインはこれで?……………ッ!!
俺がその場から飛び退くと、地面に白い羽根が突き刺さる。上かッ!!?
「なんだ?アイツは…………。」
そいつは地上10mくらいを飛んでいた。見た目は俺と同じくらいの女の子。胸が貧相、銀色のショートカットで登頂部からアホ毛が飛び出ている。なかなか可愛らしい子だ。
で、そいつが普通の人間と違うのは、肩甲骨辺りから白い翼が生えている事。翼をバサバサと羽ばたかせている。
「おい、君が馬車をひっくり返して、コイツ(カイン)に傷を負わせたのか?」
俺がたずねるとその子はにっこりと笑って答える。
「うん~、そうだよ~?あたし、ヒノ・シルヴィー。クーヤお姉ちゃんがレリカちゃんと話してて~、なにをするのかは聞かなかったけど~、東のあくまのおしろがどうとか言ってたから~、とりあえず、そこに向かってる人をこうげきすればいいのかな~って。」
「攻撃………?いや、それよりも、クーヤとレリカの名前が出てくるってことは、リメイカー!!!」
「あ、知ってるんだ~、もしかして~、お姉ちゃんが言ってた三人ってお兄ちゃんたちのこと~?」
「ああ。………おい、聞きたい事がある。リメイカーは何故ルーテを襲ったんだ?」
「ん~?あたし知らな~い。レリカちゃんがなにも話してくれないんだも~ん。ルーテをおそったのだって~、あたしがやった事じゃないし~。」
チッ、知らねぇのか……………。こういう子供っぽいのは多分嘘をつかないだろうから本当かなぁ…………。しかもコイツ、何をするのか聞いてないって…………。だからルーテを向かうのを攻撃する………?何なんだ、コイツ…………。
「ね~、お兄ちゃんが三人のうちの一人ならさ~、あたしと遊ぼうよ~、ね?いいでしょ~?」
「あ?遊ぶって………。」
「羽根弾丸!」
「やっぱりそういう事かいッ!!!」
羽根が凄い勢いで飛んでくる。咄嗟に避けるが左肩を掠め、血が吹き出す。
これ、魔力で硬化してるな………。まるで、鋭利なナイフの様だ。
「キュリアッ!!カインを頼むッ!!」
「は、はいッ!」
「チッ、やるしかねぇか!!斬撃、散弾!!」
広範囲の攻撃なら避けづらいハズだ。
「翼盾!!」
ヒノの翼がぶわっと広がり、体を包み込む。
ガキィン!!
やっぱ、散弾じゃ弱くて防がれるな…………。
「じゃ、いっくよ~!!」
無邪気にヒノが言って上空から突っ込んでくる。
「うおおッ!!」
そのまま繰り出される蹴りを思わず剣で受け止める。
ガキィィン!!!
は?金属音?
そのまま連続で繰り出される蹴りを次々と受け止める。と、そのうちの一発が右腕に当たる。
ズパッ!
切れた……………?そうか、コイツ、ブーツに刃仕込んでいるのか!!金属音も剣と刃がぶつかった音!!
「チッ、オラァッ!!!」
ギィィンッ!!!
ヒノの両足の蹴りと俺の剣二本がぶつかる。先程の傷から血が滲み出す。
「あははッ、楽しいね~?」
「楽しい、だと?」
「うん~。レリカちゃんが言ってたもん、こういうことは楽しいことだって~。物をこわしたり~、リメイカーいがいの人をいじめたり~。」
「お前、何言ってんだよ!!?レリカに言われて…………!?」
「そうだよ~、あたし、おさんぽしてたらまいごになってお家に帰れなくなって~、そしたら、レリカちゃんに会って、レリカちゃんのお家にとめてあげるって。そしてお友だちになったの~。」
ハァ!!?迷子になったらレリカと友達になったって、もしかして、コイツ、自分がどんな事に加担してるかも知らずに行動しているんじゃ!!?
「おい!!!ちょっと話を聞いて!!!」
「もう、楽しもうよ~。つまんな~い。」
クソ、なんとかリメイカーの実態を説明して、こんな事を止めさせないと!!まずは話を聞いてもらわないと…………。