第153話 馬車
皆さん、新年ハッピーうれピーよろピクねー。
これをやりたかっただけです。
(ジェルス視点)
ガタゴトと揺れる車内。俺らの周りには緊張した表情の兵士達。兵士の全員が鎧をしっかりと着込み、武器を持っている。
俺、カイン、キュリアの三人は兵士達と共に馬車に乗り、ルーテという国に向かっている。このルーテという国は東の大陸の中でも小さな国家で、悪魔達が暮らしているという。
悪魔といっても、俺らの世界のお伽噺のような悪い存在ではないらしい。蝙蝠の羽や先端が矢印のような尻尾。その外見からそう呼ばれているだけだ。獣人のように種族の一つでしかない。
で、何で俺達が兵士と一緒に悪魔の国へと向かっているのかというと……………。
(以下、回想)
フォニカさんと別れた直後、城へ帰る途中の俺達はざわめく人達の声に気づいた。
「…………あれ、悪魔族じゃないですか。珍しいですね。首都まで来るなん…………おや?何か様子がおかしいですね。」
見るとやつれた様子の、蝙蝠の羽と矢印のような尻尾をした兵士のような男4人が馬車で城方向へと向かって行く。
「王に何か御用ですかね?追いますか?」
「余計な事はしなくていい、とは思うけど、確かにただ事ではなさそうね。追いかけましょう。」
俺達は馬車を追いかける。やはり馬車は城へと向かっていった。馬車に追い付き、門に居た見張りの兵士との会話を聞くと、非常事態だ、王様と話したいと言っていた。
「非常事態…………悪い予感がするな………。俺らも話しを聞こう。」
そして玉座へ。
「そなた等、ルーテの者か、何があった。」
「はい。ルーテの国がッ、何者かに………ッ、襲撃されましたァッ!!!」
『ッ!!!?』
「な、ど、どういう事だッ、襲撃されただとッ!?」
「はい、男女二人組がルーテにやって来て…………いきなり武器を構え、破壊活動を…………!!!」
男女二人組……………、ッ、まさかッ!!!
「アイツ等二人………もしかして東の大陸に用があるって言ってたのは…………。(カイン)」
「まさか、ディスター達かッ!?」
「それで、被害状況は!!」
「人民への被害は特定できておりません…………しかし、建物は少なくとも半数以上が全壊、軽度の損壊を含めると7割は超えております。」
なんてこった……………。
カインが兵士の一人に訪ねる。
「…………その二人組、黒髪を束ねた男と、金髪で片目を隠した女で、どちらとも俺等と同じくらいの年の二人組じゃありませんでしたか?」
「な、何故それを!?何か知っておられるのですかッ!?」
やはりか…………。
と、その時、アイナが口を開いた。
「はい。その者達は、この世界を掌握すべく暗躍しているという組織の者です。」
「はっきり言うんですか?(小声で)」
「実害出たから言わなきゃ混乱するでしょ。反国家デモとでも言うの?」
フロウの問いにあっさり答える。
「実は、わたし達はその組織を壊滅させるべく活動しているのです。まあ、全くと言っていい程実情を掴めていないのですが…………。」
ああ、言っちゃった。いや、何も問題無い(と思う)けど。
「そうなのですか…………。」
「ふむ…………では、瓦礫の撤去や復興のため、こちらの兵士をそちらへ送ろう。物資も送らねばならんな。フォルス兵長。兵士を集め、準備を。」
「了解致しました。」
と、そこへ悪魔族の兵士のリーダー格と思われる男が王様に言った。
「あの、もしかしたら、その世界を支配しようとする輩は、こうやって首都を手薄にさせて、その間にここへ攻めこむ予定では?」
「!!、何と………それなら警戒してここにも兵を置いて置きたいが……………。ここの兵の数は多いのだがな、遠方へ出ている者が多くて首都に要るのは全体の6割弱なのだ。そちらへ支援に送ると確かに手薄になるな……………。」
ここで俺達は小声で話す。
「なあ、どう思う?」
俺の呟きに真っ先に答えたのはフロウだ。
「多分ないと思いますよ。実際に攻めてくるにしてもリメイカー幹部クラスならこんなまどろっこしい真似しなくても直接攻めてくると思いますし。」
「ここの一般兵士なんて幹部に比べたらミミズみたいなモンでしょうし、居てもほぼ変わらないからね、襲ってこないんじゃない?」
「では何故ルーテを襲ったんでしょうか?」
キュリアの問いにはメレンが答える。
「恐らく見せしめでしょうね。小さい国や村を沈めて、リメイカーに従わないとこうなる、という。」
「まあ、用心に越した事はないだろ。襲ってこないっていう証拠もないし。」
そのカインの呟きを聞いてアイナが言った。
「まあ、それもそうね。」
そう言うと、王様に向かってアイナが言った。
「ここに攻めてくるというのなら、わたし達も加勢致します。」
「本当か、アイヌゼラ殿ッ!!」
「はい。その組織の前では兵士などほぼ役にたたないと思いますし。」
………ハッキリ言うなあ。まあ、事実だろうけど。
「…………ま、まあよい!!とにかく、加勢してくれるのは有難い事だッ!!!よろしく頼む!!!」
「分かりました。………メレン、ジュランガ君。貴方達はあたしとここでリメイカーが来たときの為に残るわよ。」
「分かった!」
「仰る通りに。」
「セプル君、ノヴァール君、キュリアの三人は兵士達に同行してルーテに行って。何があるかわからないからね。護衛と、あと被害状況も詳しく聞いてきて。」
「はい。」
「了解!」
こうして、俺等は二手に別れて行動する事になったのだった。
(以上、回想)
という訳だ。馬車は俺達が乗っているこれだけではない。兵士が乗っている馬車4台。物資を詰んだ馬車4台。大所帯で移動している。
キュリアは緊張感からか落ち着きがなく、おどおどしている。周りがむさ苦しい大男ばかりだからかも。こういう人達をキュリアは苦手としている。あの村の皆優しい人達ばかりだったからなあ。
もしくは女性がキュリアだけだからだろうか。一応女性の兵士も居ない事はない。数名いる。この馬車集団にも一人いる。しかし、まあそれがリンゼイ・ハワード(身長206cmの巨体を持つ女性プロレスラー。自動車を持てる程の怪力でありながらモデルとして通用する程の美人。)をムキムキにしたような、とにかく凄まじい人であったため、キュリアが一目で怯えてしまった。その女性はちょっと悲しそうだったな…………。
…………俺、あまりにも緊張感無さすぎだろうか?まあ、あんな話聞かされても、実物見てないから何とも……………。
そんな事を考えていると。
ドガアアアアアッ!!!
何かが吹き飛ぶような大きな音が、外から聞こえてきた。