第152話
(クーヤ視点)
「おかえり。ディスター、サーリッシュ。」
あたしは暇潰しに読んでいた本を閉じて二人に話しかける。
「ああ……………任務、とやらはやってきたよ。それと、アンタが言った通りさ。ほら、これ。」
ディスター担いでいたヨルダを放り投げる。
「まあ、酷くやられたものね。…………レリカに報告しないと。」
サーリッシュは黙って自分の部屋へと戻って行く。
「…………アンタに聞きたい事がある。」
「予想はできるけど。何かしら?」
「アンタ等、何が目的なんだッ!!?レリカが言うには4つの大陸の王都を落とせばいいんだろッ!!!なのに…………何が目的なんだよッ、テメエ等はァッ!!!」
「…………あたしは名目は副将だけど、実際はアンタ達と同じ様に、レリカのいう事に従っているだけに過ぎないの。レリカのおかげであたしは今生きていられるようなものだから。リメイカーの実権は“アイツ”とレリカだけが握っている。つまり…………。」
「テメエにもわからない、てことか、なら………!!!」
「止めときなさい。どうせ教えちゃくれないわ。あたしにだって何も教えてくれないんだから…………。それにアイツの気分を損なうわ。アンタもあたしと同じでしょ?」
「………………クソッ!!」
「…………しばらくは任務も出ないでしょ。報告はあたしがしておくから、あなたはゆっくり休みなさい。」
「だが、」
「休みなさい。ゆっくり寝れば落ち着くでしょう。」
「………わかったよ。」
ディスターも部屋へと戻っていった。
あたしはレリカの元へと向かう。その途中にエルニーナとすれちがった。
「あの、レリカが、ディスターさんとサーリッシュさんに、」
「あの二人は疲れてるから休んでるわ。あたしがこれから二人のかわりに報告しに行くから。」
「はい。」
あの子は本当に何者なのだろうか?あたしがここに来た時には既に居たみたいだけど、普通の人間とはどこか違う。それに、まだあどけなさの残る外見なのに、妙に落ちついている。何があったんだろう…………。
「あら、クーヤ。あの二人は?」
「あたしが休ませた。相当参ってるみたい。」
「ふーん…………。」
「ディスターが怒ってたわよ?何が目的であんな事させるんだって。」
「教えてほしい?」
「どうせ教えないんでしょ。」
「せいかーい。ま、黙って従ってりゃあいいのよ。」
「…………それはそうと、やっぱりヨルダが負けたわ。ディスターが持ってかえってきた。」
「あーあ。わかってたけど負けちゃったんだ…………。」
「始末は?どうするの?」
「うーん…………あのゴミ(ゲリズ)とは違って後々ちっとは役に立つかもね。まあ、今回は許してあげましょう。アリサに治療させといてあげて。」
「了解。」
「…………そろそろお城に連絡が行く頃かしらね。多分、カイン達もいくでしょうから…………、」
「また誰か行かせるの?ねえ、あたし行っていい?」
「………誰かお目当てがいるの?」
「あ、バレた?」
勿論カインだ。
「何?誰かに惚れた?」
「ちょっと違う。ペットにしたいのがいて。」
「アンタ………わたしによく悪趣味って言ってるけど、アンタも大概よ………。」
レリカがそう言って溜め息をつく。………普通じゃないの?可愛いのを飼いたいって思うのは………。
「と、とにかく、誰にしようかしらね。」
「ねえ、だからあた」
「アンタ以外。」
ちぇー、ダメかー。
「ねーねー、それ、アタシ行っていい?」
「あら?ヒノちゃん。いつの間に居たの?」
「ねー、いいでしょ?クーヤおねーちゃん。」
「んー、そうねえ…………いいかしら?レリカ。」
「はぁ………別にいいけど?」
「はーい!!じゃ、行ってくるね!!!」
バンッ!!!
バサアッ!!!
飛び出したヒノちゃんを見送ったレリカが一言。
「ねえ、あの子にどこ行くかとか何をするかとか何も言ってなかったけど、大丈夫なの?」
「あ!!忘れてたーーーーッ」
急いで窓を見てヒノちゃんの姿を探すが既に見えなくなっていた。
どうしよ…………。あの子迷子になって帰ってこないかも…………。
「い、一応ガイルにも行かせましょッ!!ね!!」
「はいはい…………。じゃ、呼んできて。」
「え?あたしが?」
「そうよ。この身体だと歩幅無いし歩数たくさんだし、時間かかるのよ。アンタ身長170で足も長いじゃん。呼んできて。」
「…………はいはい。」
それにしても、エルニーナも謎だがコイツも相当謎だ。実年齢は(現実世界で)大人と本人は言っていたが、それにしても外見はこんな子供。言動は(狂気じみてはいるが)大人だから多分嘘ではないと思うけど。
「わたしもねー、好きでこんな姿になったんじゃないのよ?」
「は?」
「いや、わたし元々は身長170あったしすっごいボンキュッボンだったから。あのアイヌゼラにも全然負けてなかったから。」
「それは絶対嘘でしょ…………。」
「本当。アイツのせいでねぇ…………。」
「アイツ?」
「マキナ・シルジア。聞いた事はあるでしょ?」
「…………益々アンタが何者なのか分からなくなったわ。………ガイル呼んでくる。」
あたしは部屋を出てガイルを探しに行った。