第149話 カインVSヨルダ(その1)
書きたいという気持ちはあっても手が動かないってこと、あると思います。
……………あるよね?
(カイン視点)
「さて、二回の戦いを勝ち抜き、準決勝までコマを進めた4名をもう一度紹介致します!!ヨルダ・クーガー、カイン・セプル、ジェルス・ノヴァール、メレン・マチル。以上の4名ですッ!!!いずれも実力者に間違いありませんッ、いずれもいい勝負となるでしょうッ!!!」
ワアアアアア!!!
「それでは15分後、第一試合、ヨルダ・クーガー対カイン・セプルを開始します!!!」
ワアアアアア!!!
こんなナレーションの後、俺達は試合場前の通路に移動。
「さーて、いよいよきたな。ヨルダ・クーガー。」
「カイン、負けないでね。」
「ああ。リメイカーである事はもちろんだが…………それ以上にフォニカさんをあんな目にあわせたのが許せん。必ずブッ飛ばしてやる。」
「頼もしいな。頼んだぜ、カイン。」
「ああ。」
「ほお…………準決勝進出組が揃いも揃ってやがる。」
!!!
「テメェ、ヨルダ………ッ!!!」
「人の名を随分気安く読んでくれるじゃねえか。」
ヨルダがニヤけながら歩いてくる。先程フォニカさんに折られた前歯は、こっそり魔力を使ったのかくっついていた(選手は大会中魔力による回復禁止)。
「おいおい、皆で睨むんじゃねえよ。これから“試合”なんだからよ。試合ってそんな感じじゃあねえだろ?」
その言葉を聞いて、ジェルスが歯ぎしりした。
「ほざけ、リメイカー………!!!」
「そうよ、フォニカさんへの仕打ちは試合の域を越えていたわ。それなのに、今更、試合を語るなんてふざけてるの!?」
ドッ!!!
「試合じゃないってお前が言うなら、こういう事をしても構わないな?」
ヨルダのパンチを腹にもらい、メレンが膝をつく。
更に蹴りを入れようとするヨルダを俺が掴んで止める。
「テメェ…………そこまでだ。俺と試合場で白黒つけようや…………。」
「ほう…………面白い。手加減はしねえぞ。」
「それでは、試合を開始します!!!選手の二人は入場して下さいッ!!!」
俺はさりげなく封魔石の腕輪を外し、足に魔力を込める。勿論ルール違反だが、メレンを殴られた事で完全に頭に血が昇っており、バレなきゃいいかという感じになっていた。
「それはこっちの台詞だ。調子に乗るんじゃあねえッ!!」
ドゴォッ!!!
キックでヨルダを吹っ飛ばして無理矢理入場させる。観客からどよめきが起きた。
俺は腕輪をつけ直した。よしバレてない。
「メレン、大丈夫か?」
「うん。なんとか…………。」
「メレン、これ預かっといてくれ。」
リリちゃんのブレスレットを外してメレンに手渡す。
「うん。わかった。」
「じゃ、行ってくる。ジェルス、メレンを頼む。」
「ああ。勝ってこい。」
俺も入場する。
「テメェ…………ルール違反だぞ……………。」
「あ?テメェが何言ってんだ。試合が終わっても暴力を止めず、試合場の外で選手を殴ったお前が。」
「チッ…………、まあいい。この試合場で正々堂々とテメェをぶちのめしてやる。」
「やってみろ。」
「な、何やら確執があるようですが参りましょうッ!!!ヨルダ・クーガー対カイン・セプル!!!お互い当初はあまり強く見られてはおりませんでしたが、こうして準決勝まで勝ち上がり、今、相対します!!!どちらが勝ち上がり決勝へとすすむのでしょうかッ!!!」
ワアアアアア!!!
「それでは、準決勝第一試合……………始めェッ!!!」
ドォン!!!
俺達二人はほぼ同時に飛び出し、更にほぼ同時に蹴りを放つ。
「ぐっ…………。」
こちらの蹴りはやや入りが浅かったがあっちの蹴りはしっかり入っている。しかもさっきライアさんにパンチ入れられた場所だ。かなり痛い。
「ラアッ!!!」
ブンッ!
俺の右フックはバックステップでかわされ、空しく宙を切った。
ガッ、ドッ、ドゴッ!!!
「くそッ…………。」
ヨルダのハイキックを裏拳で弾き、俺の左ジャブがヨルダの胴体に命中。しかし大したダメージではなく、即座に蹴りで反撃された。
ガッ!!
更にそこから顎へのパンチ。視界が揺れて隙を晒してしまった瞬間、回り蹴りが直撃して俺は地面に倒される。
ブンッ、ガッ!
即座に起き上がって追撃を避け、パンチをかわして膝辺りを狙って踏みつけるような感じで蹴りを喰らわす。
「おおっと!!」
ヨルダがバランスを崩した隙を逃さずタックル。直撃してヨルダが後ずさりした。
そこからヨルダの腹にパンチを打ち込む。
「まだまだァッ!!!」
反撃の膝蹴りを間一髪でかわして再び蹴りがぶつかった。
くそ、やや劣勢だな…………。素の力なら奴の方が勝っているから殴り合いは分が悪い。なんとか流れを変えねえと…………。
ドカアッ!!
蹴りが押し返されて更にヨルダが一回転して顔面に蹴りを喰らわせる。
ドスッ!!!
更にふらついた俺の胴体にハンマーパンチが打ち込まれ、俺の体が地面に叩きつけられた。
ブオンッ、ドゴォッ!!!
「ぐあっ…………。」
追撃でダウンしていた俺の腹に思いきり踵落としを打ち込まれる。やべ……………負ける…………。
「カイン!!!負けんじゃねぇよッ!!!」
!!!
「…………ジェル、ス…………。」
「勝って!!!カイン!!!」
「メレン…………。」
ああ、そうだ。フォニカさんが痛めつけたコイツを、メレンを殴ったコイツを、必ずブッ飛ばすと決めたじゃねえか…………。ジェルスにも頼まれた。それなのに…………こんなんじや、かっこ悪いよな…………。
「悪いな、二人とも…………ちょっと弱気になっちまってたよ…………。」
「ほう、まだ立つのか。あのまま倒れていれば楽だったのによ。」
「へっ、テメェをブッ飛ばすって決めたからな。俺は負けねぇよ。」
「ほう、なら、徹底的にッ!!立てなくなるまでッ!!そんな口がきけなくなるまでッ!!痛めつけてやろうッ!!!」
言うが早いか、ヨルダの回し蹴りがとんでくる。
よし!!これがチャンス!!!
ガシィッ!!!
「なッ、」
「オラアアアアアアッ!!!」
ドタアアッ!!!
ヨルダの蹴り足を掴み、渾身のドラゴンスクリューが決まった。