第140話 繋がり
アルビスの元兵長という設定は(アイナが実力者として知っているのに)何も設定ないのは何か嫌だなと思い急遽後付けしたんですが無理矢理でした。反省しております。
(ジェルス視点)
さて、とうとう俺の出番か。
「あの、ジェルスさん。あの…………頑張ってください。」
キュリアは律儀に闘技場入り口までついてきてくれた。コイツを家に帰すのは……………うん。諦めた。少なくとも今は無理だ。俺が守ってやるけどな。ちなみにカインとメレンは客席。多分、俺は負けないだろうとか思っているんだろう。俺もカインが負けるとか微塵も思ってなかったし。
「ああ。大丈夫だって。勝ってみせるよ。例え相手がこの大陸の兵長だとしてもね。」
「いえ、もちろん勝ってもしいっていうのもあるんですけど……………怪我とかしないか心配で……………。」
「………………大丈夫だよ。心配すんなって。」
そう言って軽く頭を軽く撫でる。本当、優しいな、コイツ……………。
「んー、仲良いんだね。」
フォニカさんが俺達の様子を見てたずねる。
「ああ、まあ………………。」
一年間ずっと一緒に居たからなぁ。コイツの事は妹みたいに想っているし、何だかんだで今コイツと居られてよかったと思っているし。
「ところでさ。この一年でアンタ達何があったの?人数は増えてるし、去年とは明らかに違うじゃん。傷痕とか、体つきもなんか逞しくなってるし……………。」
ここで俺はキュリアにこっそり耳打ち。
「リメイカーの事とか一年間修行した事は言わないで(超小声)」
キュリアが小さく頷いた。素直で助かる。
「まあ色々と。あちこち行ってましたし、体は自然と鍛えられたと思いますけど。仲間に関しては……………フロウとアイナはカインやメレンが連れて来たから知らないんですけど、この子は………………。」
ヤバイ。考えてなかった。早くそれっぽい事をでっちあげないと………………。妹は流石に駄目だよな…………。
「ん?どしたの?」
「し、親戚!!親戚の子です!!久しぶりに会ったからしばらく一緒にいる事にしまして!!」
「え?ち」
「いいから合わせて!!(超小声)」
「そ、そうです!!ジェルスさんはあちこち行っててなかなか会えなくて!!」
よし。
「?……………ま、いいか。」
よっしゃ誤魔化せた。
「……………ちょっとトイレ行ってくるね。」
そう言ってフォニカさんはトイレへと言った。
「親戚………………。」
キュリアがボソッと呟いた。
「まあ血は繋がってないけどな。でも一年間ずっと一緒に居たし、そこらの親戚よりかも絆は深いかもな?」
「はぁ、そうですね……………一年間一緒に強くなりましたし…………。でも、やっぱり血の繋がりがあったほうが………………。」
「絆は深い、か?確かにそうかもしれない。でもな、そんな物無くたって、人は強く繋がる事ができる。俺はそれを知っているから。」
「………………?」
俺は不思議そうに見つめるキュリアの頭をわしゃわしゃと撫でる。キュリアも気にしない事にしたのかきゃーと声を出しながら笑う。
そんな事をやっていると通路の奥からフォルス兵長が歩いてきた。
「……………。」
その表情は暗く、何も喋らない。当然だろう。大先輩が負けてしまった。しかも瞬殺、意識不明。尊敬しているであろう人が負けたのだ。動揺しない訳がない。
キュリアも兵長の様子を見て、どうすればいいかわからず、戸惑っているのが分かる。
ここで兵長が俺に向かって言った。
「……………正直、貴方と戦うのが嫌でしょうがない。ただでさえ貴方達は強いのに、直前にアルビス殿のあのような姿を見せられては………………。」
「兵長……………。」
「フッ、私は兵を束ねる者として失格だな。本当ならこんな事でも動揺せず、いつも通り戦うべきなのに………。こんな失態を部下達が見たら何と思うか……………。」
「アンタを笑う、もしくは馬鹿にする、と言うか?……………どうだろうな。」
「……………どういう事だ?それは…………。」
「それでは、選手のお二方は入場してくださいッ!!!」
「じゃ。キュリア。行ってくるよ。」
「…………………。」
ワアアアアアア!!!
闘技場に入ると大きな歓声が俺達を出迎える。
「な…………………これはッ!!!?」