第136話 男対女(その1)
(メレン視点)
ワアアアアアア!!!
「強えーーーーッ!!」
「すごいぞ、フォニカーーーーッ!!」
観客が歓声をあげるなか私達は観客席から闘技場へと入る入り口へと移動する。
私たちは退場して通路へと戻ってきたフォニカさんを出迎える。
パァンッ!!
フォニカさんは私達とハイタッチを交わす。
「見事でした。フォニカさん。(カインの台詞)」
「ありがとっ!でも一回戦くらいはかたないと面目ないし、結構緊張したんだよ?ま、相手がよかったかな。」
気絶したトゥム・レンスが担架で運ばれていく。にしても、こんな大男を失神させたって……………。
「蹴りの隙をついて距離を詰めカウンター……………素晴らしかったです。あれは相手の動きが分かっていても簡単にできる事じゃない。(ジェルス)」
「えへへ、酔っぱらい達との喧嘩でああいうの慣れてたから。」
喧嘩していた酔っぱらいも相当強かったのかなあ……………。
「第三試合に出場する選手の二人は準備してくださいッ!!!」
アナウンスが聞こえてすぐ、足音が近づいてくる。
茶色く短い髪で身長190程の20くらいの若い男性。引き締まった体をしている。双子の格闘家の兄、キュヌム・インゴーだ。アイナもインゴー兄弟を知っていたようだし、かなりの実力のハズだ。
「談笑中悪いが、ここは次に戦う者の為の場所だ。引き取り願おう。」
「…………キュヌム・インゴー……………。」
キュヌムがカインを見て微かに笑う。
「ほう…………カイン・セプルだな。確かに見てくれは悪い…………だが、その体を見ればよく分かるな…………相当鍛えてある。見た目以上の強さだ。予選を突破した事がそれを証明しているな。」
「アンタも体は細いが筋肉がバランス良くついている…………体の傷は人間によるものじゃないな?」
「ほぉ、大した観察眼だ。その通り。俺達は格闘家だが魔物の討伐でよく生計を建てている。」
「そして、普段は獲物を使っている。」
「そうだ。だが、素手戦闘でも敗けはせんさ。もし君が勝ち上がれたら次に戦うのは私だな。」
「…………大した自信なんだな。」
「当たり前だ。相手は女だぞ?先の戦いでもレンスがそこの女にやられた。二連続で女が勝ち上がったら男の面目が潰れる。トゥム・レンス…………噂は聞いていたが、たいした事のない男だな。疑うなら見ているといい。」
「そして、男の面目丸潰れ、と。」
「うわあッ。」
いつの間にかカインの後ろにライアさんが立っていた。ビックリしたカインが声を上げる。
「ほう…………ライア・テスバか。随分大きな口を叩くじゃあないかッ!!!」
「そりゃあね。貴方に勝てる自信あるし。態度が大きいあなたも同じでしょ?」
「わかった。女とてこのキュヌム・インゴー、容赦せん!全力で叩き潰す!!!」
「落ち着きなよ。兄さん。」
キュヌムの後ろからキュヌムによく似ている男が歩いてくる。トルト・インゴーだ。
「その女の人は兄さんを怒らせるのが狙いだ。冷静さを失うと隙ができるよ。そんな挑発に乗っちゃダメだ。」
「あら、バレた?その人単純そうだからやってみたけど…………あなた、なかなかやるじゃない。救われたわね、貴方。弟さんが優れた人で。」
なるほど。中国の諺にある“兵は詭道なり”ってことね。
「フッ、そうだな。お前と決勝で戦う約束をしている。ここで敗北る訳にはいかん。勝ってみせようッ!!!見ていろッ、トルト!!!」
「ああ。応援しているよ。兄さん。ずっとね。兄さんを応援しなくなるのは……………決勝で戦う時だけだ。」
「私もだ。トルト。お前と戦う瞬間まで、お前を心から応援しているぞ。」
「それではッ、第三試合を始めますッ。選手のお二方は入場してくださいッ!!!」
「よしッ、では行ってくるッ!!」
「フフッ。」
二人が闘技場へと入っていく。
「…………じゃ、客席に行こうか。」
移動。
「キュヌム・インゴー!!!近年その名が有名となった格闘家にして魔物討伐をしている兄弟、その兄ッ!!魔物討伐が中心で魔物の討伐はスピア(歩兵用の槍)を使っておりますが、格闘家をしているだけあり素手の戦闘も圧倒的ッ!!!今大会でかなり期待できる男ですッ!!!」
ワアアアアアアッ!!!
「本物のインゴーだ!!!会いたかったーーーーッ!!!」
「ライア・テスバ!!!西の大陸でダンサーをしている女性ですッ!!戦闘についてのキャリアは一切不明ですが、美しい物にはトゲがあると言わんばかりの強さッ!!見る者を魅了する華麗な体術ッ!!!戦闘力は決して男性ファイターに劣らないでしょうッ!!!」
ワアアアアアアッ!!!
「ステキーーーーーッ!!!」
「一本勝負、時間無制限、ノックアウト、ギブアップ、場外により勝負が決しますッ!!!」
ワアアアアアア!!!
「それでは、一回戦第三試合……………始めェッ!!!」
ドォン!!!
ダッ!!!
鑼が鳴った瞬間、キュヌムが飛び出す。ライアさんはいきなりの攻撃に不意をつかれたようだ。
ドゴッ!!!
「キュヌムの拳がライアの胴体に入ったァーーーーッ!!!」