第134話 無様
ホルス・ペッショ→バルド・ペッショへと名前を変えました。(ジェルスもだけど)フォルスと字面が被るからね。
「さあこのチャンピオンに挑むのはヨルダ・クーガーッ!!」
ヨルダが入場してきた。観客の歓声が彼を出迎える。
前の席で観戦しているため選手の二人が何をやって何をやっているかがよく分かる。
ヨルダはリムが倒した虎をチラッと見て、バカにしたように鼻で笑う。
「ヘッ、大した事ねぇな。チャンピオン。あの程度の獣ぶっ飛ばした程度とは。」
「おや、不満かね?ヨルダ・クーガー君。」
「あんなの俺だって勝てるぜ。いや、もっと強い奴でもいけるな。アンタはあの程度が限界かい?」
「おや、クーガー選手、チャンピオンを挑発ゥーーーッ!!」
「ほう…………では、私の実力、君の体で味わわせてあげよう。本来なら本気をだす予定じゃあなかったが……………特別だッ!!!」
リムが怒りを表情にだしながら言い放つ。それを聞いてもヨルダはニヤニヤと笑う。自信の現れなのか……………?
「両者、位置についてッ!!!」
アナウンスが響く。
「時間無制限、一本勝負ッ、ノックアウト、ギブアップ、場外、このいずれかで勝負が決まりますッ!!!」
あ、外の堀ってそういう役割なのか。
ワアアアアアアッ!!!
「やれーーーーッチャンピオンッ!!!そんな奴、叩き潰せーーーーーーッ!!!」
「うおーーーーーッ、頑張れ、ヨルダ・クーガーッ!!!」
「それでは……………試合、始めェッ!!!」
ドォン!!!
開始を告げる鑼がなり響く。間髪入れずにリムが飛び出しす。早い。太い腕を降りかぶり殴りかかる。
ブォン!!!
「のろいぜ……………。チャンピオン……………。」
ヨルダは少し頭を下げて回避した。その顔は先程と変わらず笑っており、表情が必死なリムとは対称的だ。
確かに、先のパンチは怒りに身を任せたのか、降りかぶりが大きく、隙があった。しかし、こうも易々とできるものか。
「フン、今のはほんの小手調べだ……………。これならどうだァッ!!!」
首筋を狙うハイキック。当たれば大ダメージは免れない。
バシィッ!!!
おお、両手で受け止めた。
「あーあ、つまんねぇな。チャンピオン。」
ヨルダがニヤリと笑う。
「見とけよ観客共。お前らがチャンピオンと讃えた男の負ける姿をッ!!!」
ゴキッ!!
「ギャアアアアアアアッ!!!」
あいつ、膝を破壊しやがった。ルール無しとは言え、えげつない野郎だ。観客の女性の数名が悲鳴をあげる。リムは膝を折られた激痛で地面を転がり回る。
「無様だな、チャンピオン。ま、所詮大会で一回優勝しただけで舞い上がったバカってことだな。」
ドゴォッ!!!
ヨルダが転げ回るリムの顔面を思いきり踏みつけた。リムの動きが止まる。
「しょ、勝負ありッ!!!」
アナウンスも動揺も隠せない。観客も歓声をあげるものがいない。
「なんという事だッチャンピオンがいきなり破れてしまったッ!!!強い!!!ヨルダ・クーガー!!!は、早くッ、救護班。リム選手を病院へッ!!!」
担架を持った男達がリムを担架に乗せ運んでいく。2mを超える巨漢のため大変そうだ。
「ハハハハハハハッ!!!アーーッハッハッハ!!!見たかよ観客共!!!あんなに応援していたチャンピオンがなあッ!!!あ、“元”チャンピオンか。ハハハハハハハハハハハハッ!!!ハハハハハハハハハハハハハ!!!」
担架で運ばれていくリムをひとしきり笑い、退場していくヨルダ。観客は皆呆然としていた。