第121話 敗北後
(カイン視点)
「……………う、うう……………。」
俺が気がつくと、辺りはすっかり日が落ちていた。レリカは……………いない。
「う……………ッ!!痛ぇ………………ッ!!」
レリカから喰らったダメージが深く残っている。あんなガキだったのに、何てパワーなんだ……………。しかも、剣を素手で受け止めるというにわかに信じられないような事をいとも簡単にやりやがった………………。
全く叶わねぇ……………どうすりゃいいんだよ、あんな化物……………。
…………とりあえず、今は皆の無事を確認しよう。
「おい、メレン!!大丈夫か!!」
「うう………………カイン?」
「よかった……………。」
俺はホッ、と胸を撫で下ろした。
「…………全然叶わなかった……………アイツ、レリカ……………。」
「その話は後だ。今は皆の無事を確認してくれ。」
「うん。」
メレンがアイナさんを起こしに行く。
「おい、ジェルス!!おい!!!」
「ん…………………んん…………………。」
ジェルスが静かに起き上がる。
「おい、大丈夫か?」
「ん?ああ…………、………ッ!!キュリアッ!!!」
ジェルスがそういってキュリアちゃんの元へ一目散へ駆け寄った。
「キュリア!!キュリア!!!おい!!!キュリア!!!しっかりしろ!!!なぁ、キュリア!!!」
ジェルスは揺さぶりながら声を掛ける。
「……………………ジェルス…………さん……………?」
「!!!ああ…………………ッ!!キュリア、よかった……………ッ!!よかった…………………ッ!!!」
ジェルスがキュリアちゃんの無事を確認し、涙を流す。キュリアちゃんが僅かに微笑んだ。
さて、もう一人起こすか。
「おい、フロウ!!大丈夫か!!」
「う、うう………………あ、カインさん……………?」
「よかった、フロウ。無事か?」
「無事じゃありませんよ、あんなの喰らって………………。それにしても……………。」
「それにしても?」
「こういうのは女性に起こされ」
「大丈夫だな、うん。」
こういう時までブレねぇな、コイツ……………。
アイナさんもメレンによって起きたようだ。ここで全員集合。
「皆………………怪我は?」
俺とメレンは内臓を痛めたくらいだがジェルスとフロウは肋骨が数本折れ、キュリアちゃんは木に叩きつけられた時に左腕を、アイナさんは蹴られた時に右足を骨折していた。
肋骨なら魔法を使えば割とすぐに治せるが、手足は癖物だ。特に足は歩くのに支障が出る。
キュリアちゃんの腕は木片を当て、包帯で固定し、更に包帯を三角巾代わりに使って応急処置した。問題はアイナさんの方で、足が折れ曲がっていたのだ。
「アイナ、これ咬んで。」
メレンがアイナさんにナイフを一本渡すとアイナさんは柄を噛み締める。
「痛いけど我慢してね。……………せーの!!」
ゴキッ!!
「………………ッ!!!」
バキィッ!!
アイナさんが咬んでいたナイフの柄が砕けた。アイナさんは肩で大きく息をしている。凄まじい激痛だったに違いない。
「………………ありがと、メレン。ナイフ、駄目になっちゃたけど……………」
「大丈夫!!そんな物!!!さ、固定するからじっとしてて!!」
アイナさんの足もキュリアちゃんと同じように固定される。
フロウ、ジェルス、俺、メレンの治療も一段落したところで。
「………………どうしたモンかね、あれは……………。」
俺が呟くと、全員が黙り込む。あれはもちろん、レリカだ。あれ程戦力差があるとは、誰も思ってなかった。
しばらくして、ジェルスが言った。
「……………ま、どうするにしても、だ。あんなのがいるからって、立ち止まったり、逃げたりはできないんだろ?」
「…………それは、そうだけど……………。」
「じゃ、進み続けるしか無いんじゃないの?また修業する時間があるかもわからないし、これからはリメイカーとの戦いの中で強くなって、アイツを倒せるくらいまでになるしか。」
「……………簡単に言うのね。」
冷たく言うアイナさんにジェルスも反論する。
「じゃあ何だよ、そんな暗い台詞吐いてばっかりで何か変わるとでも言いたいのかよ?違うだろ?」
「ま、ジェルスの言う通り、だよな。立ち止まる訳にはいかねぇんだ。今はとても叶わないけど……………いつか絶対勝てるようになってやる。」
「まぁ、何にせよ、まずは東の城下町を目指しましょうか。。病院で怪我を治してもらわないといけませんし。」
「ああ。でも、今日はもう遅いし怪我人ばかりだから進むのは無理だな。今日はもう休もう。じゃあ、俺怪我浅いし、食料探してくる。」
「あ、カイン。私も行く。」
「大丈夫なのか?」
「それを言うならあなたもでしょ?何かあるかもしれないから、二人で行こ。」
「……………分かったよ。じゃ、行ってくる。」
俺とメレンは二人で食料調達へと向かった。