第119話 副将レリカ
(カイン視点)
リィパちゃんを保護した次の日、俺達は東の城下町へと歩みを進めていた。この子のお母さんも心配しているだろう。早く会わせてやらないと。
リィパちゃんは俺がおぶって運んでいる。どうせなら体格の大きいアイナさん(女性に体格が大きい、などと言っては失礼だが)がおぶればいいのではと思ったが、アイナさんは小さな子供は嫌いなのか睨んでいた。
同じくガタイのいいフロウは………………、言わずもがな。フロウがおぶっていこうと言ったが俺が拒否した。当たり前だ。この子が汚れる。
そういや、昨日の夜フロウもこの子を見て首をかしげていたな……………、気になる事でもあったのだろうか?
で、フロウはまた探知の魔法を使っている。夜が明けたらこの子の母親が探しに来てるかもしれないからだ。
「うーん…………居ませんね…………」
うーん…………母親は何をやっているんだ?まさか、この子を捨てたって訳でもあるまいし………………。
「とにかく、城下町に早く連れていこう。リィパちゃん、お家の場所、わかる?」
「うん。」
それはよかった。
…………………?
「どうかしましたか?アイナさん。」
「……………いや、何でもない。」
その後、気にしすぎかな、とか呟いたように聞こえた。
昼になり、一旦休憩。少し開けた場所に腰を下ろす。リィパちゃんを降ろすと、腰が痛み始めた。
「痛た………………やっぱ長い時間背負ってると腰にくるな…………。」
背伸びするとポキポキと音が鳴った。それを見てメレンが笑いながら言う。
「カイン、大丈夫?」
「腰痛え……………。」
「マッサージしてあげよっか?」
「あ、できるのか?」
「ほら、落ち葉集めたからうつ伏せになって。」
言われるがままにうつ伏せになる。
「じゃ、動かないでねー。」
……………大丈夫かな…………。
………………………………。
5分後。
「ありがと。気持ちよかった。」
「どういたしまして。」
至って普通の気持ちいいマッサージだった。
「でも、カインばっかおぶるのは疲れるでしょ?アイナ、次おぶってもらっていい?」
「え?…………………いいけど。」
本当にアイナさんはどうかしたのか?リィパちゃんをやたら警戒してるように見えるんだが……………。
俺は立ち上がり再び大きく背伸びした。腰の痛みが軽くなっている。
「ほら、リィパ。」
「うん。よろしくね、アイヌゼラお姉ちゃん!」
「!!!」
アイナさんが急に距離を取り、リィパちゃんに向けて構える。
「ちょっと、どうしたの?アイナ!」
「この子……………何であたしの本名アイヌゼラってしってるの?あたしアイナとしか名乗ってないけど?」
そういえば………………。
「それに、おかしいと思ってたのよ。東の城下町の迷子が歩いて2日もかかる場所にいるとは考えにくいし、母親も見当たらない。それに、近くにいるとよく分かるんだけど、この子膨大な魔力隠してる。」
「え?何のこ」
「しかも、あなた名前をカインにたずねられた時、少し間があったじゃない?それ、偽名を考えていたからでしょ?本名は既にあたし達に聞かれているから。そして、あなたの本名はレリカ………………違う?」
レリカ…………………そういや、クーヤさんが「レリカに報告しないと」とか言ってたな………………。
「くく、くくく………………正解よ。まさか、あたしともあろう者が、こんなヘマしちゃうとはね。」
リィパちゃん、否、レリカが静かに笑い出した。さっきまでとは明らかに声色が違う。
「アイヌゼラの言う通り……………わたしはリメイカー副将、レリカ。」
副将…………こんな小さな子が?
「それにしてもあなた、鋭いのね、さすがはア」
ドカアッ!!!
レリカが喋っている途中だったが、アイナさんのキックがレリカの頭に命中した。
若干、いや、大分無理矢理なのは否めない。