第118話 迷子の女の子
(メレン視点)
東の大陸にたどり着いた翌日、結局私達はこれから一旦東の城へと向かう事となった。ま、北の王様も挨拶したらどうだとか言ってたみたいだし、これでいいでしょ。
アイナが持っていた地図によると、ここから東のお城まで最短ルートを進むと4日程だが危険な深い森を進む。何もない草原を進むルートもあるけど、そこを進むと時間は倍かかってしまう。
もちろん、私達は森の中を進む事になった。ちょっとくらい危険でも乗り越えられる自信あるし。
私とキュリアちゃんは既に出発の用意は済んでいる。しかし、アイナが起きない。まあ、3日ほぼ徹夜で船動かしてたから当然か……………。
アイナが起きたのは昼近く。しかし、まだ眠そうで、部屋から下に降りてきた時も大欠伸し、髪もボサボサ。髪長いけど、ケアとかちゃんとやってんのかな…………。魔法でなんとかなるのかな?
アイナにも森を通ってお城に向かう事を話し出発。…………あのハデな船、悪戯とかされないよね?
深い森だがこっちにはコンパスもあるし、フロウが魔法で調べられるという事もあってサクサク進んでいる。時々魔物が襲いかかってくるものの、一年間修業した私達にとっては何ともなく、捕らえて晩御飯に。
そんな感じで二日後。ご飯のあと、ゆっくりと休んでいる。
本当、少し拍子抜けな程順調だ。RPG(ロールプレイングゲーム。対戦車ミサイルじゃない。)とかなら、新しい場所に着くと、何かイベントがあるんだけど、現実ってこんなものなのかな。
こうして夜も更けていく。私やキュリアちゃんはうとうとしてきた。ふわあ……………眠い……………。
アイナに寄り掛かってもうすぐ意識が夢の世界に旅立とうとした瞬間。
パン!!パン!!パン!!
!!!これは、何者かがこの近くに侵入したって事!!?
私は瞬時に飛び起きて両手に魔力を込めた。他の人も臨戦体制に入っている。
「………………おい、何か聞こえないか。………これ、すすり泣く声か…………?」
カインがこう言った。私も耳をすましてみる………………。確かに聞こえる。すすり泣く声みたいなのが。
「近づいてきてる…………おい、カイン。念のため、警戒は怠らないように。」
武器をしまいかけたカインにジェルスが忠告した。泣く声はもうはっきりと聞こえる。
「……………、おい、女の子だ。ジェルス、キュリアちゃん、武器をしまえ!」
小さな女の子だ。5、6歳くらいかな?明るい茶髪のショートヘア。それを見てカインが駆け寄った。膝をついて女の子に目線を合わせながらたずねる。
「どうしたの?何でここに?」
カインが限りなく優しい声で語りかける。そういや、私と初対面の時も、あんな声出してたなあ。
「ひっく、おうち帰りたいよぉ……
…。」
迷子?
「ママが居なくなっちゃったの……………。会いたいよぉ……………。」
そう言って泣き出してしまう。女の子をカインが抱き寄せる。この子、お母さんと………………。
「よしよし。怖かったでしょ?もう大丈夫だから。」
なんかカインらしくない口調。
「…………この子どうする?」
いつもの口調でカインが私達にたずねる。
「どうするって…………親の元に帰さないと!この子のお母さんだって心配してるハズよ!!」
「……………ああ。その通りだな。」
カインが女の子に語りかける。
「君、お家は?どこ?」
「お城の近く…………」
「城下町ですか。丁度いいですね。送っていってあげましょうよ。」
フロウも賛同した。
「あ、フロウさん。」
「はい、何でしょう。キュリアさん。」
「この子のお母さん、この子を探してるんじゃないですか?」
「ああ。そうですね。では、探知の魔法でこの近くに人の気配が無いか探してみましょう。」
そう言ってフロウが目を閉じる。女の子がフロウをじっと見ていた。
「……………おや?この森の中には人の気配がありませんが……………」
「きっと兵士に捜索願いを出してるんだろ。夜の森は危険だ。普通の女性が一人でうろつう場所じゃない。」
そんなものなのかな。心配ならば、危険でも自分で探すと思うんだけど………。
「とにかく、今日はもう遅い。この子を街に送るのも明日からだ。」
「じゃ今日はもう遅いからここで寝ようか。明日、お家に帰してあげるよ。」
「明日ママに会える?」
「うん。もう大丈夫だよ。……………君、名前は?」
「…………………………リィパ。」
「じゃ、リィパちゃん。今日はもう寝ようか。」
「うん。」
それにしてもカインって年下の女の子に慕われてる気がする。
ま、いいや。もう寝よ………、………?
「どうしたの?アイナ?」
アイナだけはリィパちゃんをじっと見ていた。そういや、アイナだけ一言も喋ってなかったなあ。アイナは私にひそひそ声で話す。
「いや……………なんかあの子から魔力を感じるの。」
「そりゃあ、素質があるんじゃないの?」
「そうじゃなくて。なんか、膨大な魔力を隠しているような感じがして……………。」
「私は別に……………。」
「………………気のせい………なのかしら。」
アイナはその後も首を捻っていた。