第110話 提案
少し時間空いて申し訳ありませんでしたッッ!!
……………こんな茶番なのも、お詫び申し上げます。
(カイン視点)
………………………?
…………………あ、そうだ、俺……………風呂場で寝て……………。そっから記憶がおぼろ気だな……………。そうだ、確か、メレンの部屋で介抱されて、自分の部屋に引きずられて…………………。……………そのまま寝た、と思う………………。
ベッドから起き上がり、大きく伸びをして…………………、…………………?
俺の服(もちろん上。下は履いている)、どこだ………………?上半身裸なんだが………………。
もしかして、脱衣場?
ここから少し距離あるな…………メイドさん(特にあの茶髪メイドのシャルアさん)に見られそうだが…………………。仕方ない。
扉を開け真っ直ぐ脱衣場に向かう。ここから脱衣場まではメレン、アイナさんの部屋がある。二人とも朝に強くないため見られる心配は多分無い。問題はメイドだろう。
しかし!!廊下を見る限り誰も居ない!!今がチャンス!!イケる!!誰にも見られず服(もちろん上。下は履いている)を着れる!!!
さあ、着いた。任務完了。
ガチャ。
あれ?ドアが勝手に開いた?誰もいな
「あ……………っ。」
「あ……………っ。」
……………めっちゃ小さい(メレン程ではない)メイドさんが中に居た。しかも、俺の服持って。
……………何と言えばいいんだろう……………。
「あ~~~~~……………えっと……………、その……………失礼しますね~~~~。」
逃げた。猛ダッシュで。俺の服持って。そりゃあそうだよな!!上半身裸の男と鉢合わせしたらできる限り一緒に居たくないわな!!だが俺の服を持っていくんじゃあないッ!!
ヤバイ、あの子、否、あの人以外と早いぞッ!!
俺も負けじと猛ダッシュ。よし、なんとか追い付けそうだな。急げッ!!
……………上半身裸の男が小さな女性追いかけるってすっごく怪しいけど、まあいい。それより俺の服だ!!
更に走り続け階段。メイドさんは既に階段を3分の1程降りている。
「逃がすかァッ!!」
グォンッ!!
ドシャアッ!!
俺はジャンプして一気に階段の下まで飛び降りて先回りした。人間本気を出せばこれくらいできる。
よっしゃあこれであの人を捕まえて服を返してもらうだけ……………。
「きゃっ……………。」
こけた。階段で。
「危ないッ!!」
とっさにメイドさんの肩を掴んで支えた。思わずバランスを崩しそうになるがなんとか持ちこたえる。
「……………セーフ…………。」
「ふえ、ありがとうございますぅ……………。」
…………………間近でみると、とても可愛いな、この人……………。
……………近い。お互いの息がかかる。メイドさんの顔が僅かに紅潮して、距離を更に詰めていき……………………。
「…………………じゃなくてッッ!!!!」
なんだこの茶番。
とりあえず服を返してもらい、一見落着。
…………だったら良かったのになぁ。
「……………シャルアさん?」
「見てましたよ、カイン様♪」
……………………。
「あの、違うんですよ、これは……………。」
「いいんですよ、否定なさらなくて、男の子ですもの、可愛い子がいれば例え彼女とヤッた後でも」
「違うっつってんだろッッ!!色々と!!!」
「でもですねー。その子、コアーちゃんて言うんですけど、」
「あの、だから違うって」
「その子、城どころか町でもとっても有名なんですよ。」
「無視かい。」
「こんな見た目で凄い痴女ですって。」
へぇ、それは意外……………。
「ち、違いますよぉ!!それは、その、確かに、ヤッた人数覚えてな」
「これ以上はアウトォォォ!!!」
なんだよこの会話!!少なくともメイドが男とやる話じゃねぇよ!!!色々とひでぇよ!!!
「ま、そういう事ですので、気をつけないと搾られますので(肉体も金も)。」
「な、そ、そんな事は…………。」
………………話の途中だけど、戻ろ。
部屋に戻りしばらくするとリディさんが朝飯を持ってきた。パンとスープとサラダというシンプルなものだ。スープはミネストローネに近い見た目……………だが。
…………味の方が……………。ホタテをまんま液体にしたかのような味がした。俺、貝類嫌いなんだよ…………。何入ってるんだ…………?
サラダの方は俺らの世界でも見るような至って普通な物。プロシュット(豚のもも肉を塩漬けにして乾燥させた生ハム。燻製を行わないのが特徴。生ハムメロンやピザに使われる)のような肉が添えられている。味もそれっぽい。
食べ終わった(スープは半分残してしまったが)後、リディさんが食器を下げに来た時、こう伝えた。
「カイン様。王が貴方様に話があるとの事です。お手数ですが、一回の玉座までお越しください。」
「あ、はい。分かりました。」
何の話だろう?……………行けば分かるか。よし、行ってみよう。
………………もしかして俺、対リメイカーの代表と思われてる?どう考えても俺そんなキャラじゃないだろ。アイナさんのほうがよっぽどそれっぽいぞ。
とりま、玉座に到着。王様が既に待っていた。
「おお、カイン殿。朝早くから申し訳ないな。」
「いえ、構いません。それで、用件とお聞きして、参りましたが…………。」
「そうだ。お主ら、次に何処へ行くとかは、まだ決めていないのであろう?」
「まあ、はい。そうですね。」
そういや方針は決めてたけど、何処へ行くかは決めてなかったな。
「そしたら、東の大陸へと向かうのはどうであろうか、と思ってな。」
「東…………ですか?」
東の大陸か……………地図で見たけど、そこまで広くはなく、山なんかも少ない所らしい。
「そうだ。東にも王国があってな、そこのリグラス王にも挨拶してはどうか、と思ったのだ。東の王国はかつてはこの世界最大の軍事国家であった。流石に今では平和であるが、何か力になるかもしれん。」
「そうですか。分かりました。訪ねてみましょう。」
こんな感じでお話し終了。これを仲間に話す。
「……………と言う訳なんだけど、どうかな?」
今、六人全員集まっている。否定する者はいなかった。そりゃそうた。何するか決めてないのだから。
「それじゃ、海を渡る為に一旦バハルに向かいましょう。アイナさん、キュリアさん。貴女達の船、乗れる人数に余裕ありますか?」
「あ、わたし達の船、ベッド一つしかないんですけど、床でいいならもう少しはいれます。」
あの船正直嫌なんだけど………文句は言ってられないか。
「分かりました。アイナさん、どうですか?」
「………………………。」
「アイナさん?」
「……………、ああ。あと一人か二人くらいなら大丈夫じゃない?ベッドないけど。」
「分かりました。では、船はあの二つで十分そうですね。」
船をもう一隻買う必要はないのか。それはよかった。
「じゃこれから少し準備。そしたら出発しよう。分かったか?」
皆から返事が聞こえた。アイナさんは黙っていたが、反対しないから構わないだろう。
こうして、俺達は一旦解散して、出発の準備に取り掛かった。
最近バタバタしておりペース低下しております。安定するまでもうしばらくお待ち頂けると幸いです。