第9話 襲撃(続き)
手下の二人が同時に俺に襲いかかった。正直、かなり不利だ。本で読んだのだが、戦闘の時は戦力の二乗が実際の戦力らしい。
そう考えると戦力は4対9。さらに相手は武器を持っている。こちらが圧倒的に不利なのは明らかなのだ。
一人が俺に向かって剣をふりおろした。それをかわして蹴りを叩き込んだが腕をかすめただけであまり効いていない。
もう一人は剣で突いてくる。俺はとっさに避けたが完全に避けきれず剣が脇腹をかすめた。血が溢れ出し、服を赤く染めていく。
俺は痛みに顔をしかめた。男はさらに剣を振り回す。
俺は何とか剣を避けてパンチやキックで反撃するが厳しい状況だ。
と、その時、男の剣が俺の左腕を深く切り裂いた。焼けるような痛みが走る。
「ッ………!!」
何とか剣をかわしてバックステップで距離を取る。腕の切創はかなり深く、左腕にうまく力が入らない。ドクドクと血が溢れ、服の左袖がみるみる赤黒く染まっていく。
それを見た男二人はニタニタと笑い、トドメを刺そうと接近する。
「カイン!!伏せてッ!!」
メレンの叫び声が聞こえて俺はとっさに地面に伏せた。すると、何か球のようなものが飛んでいき、男の一人に当たって爆発した。男がぶっ飛び、もう一人が驚いて怯む。
俺はその隙をのがさなかった。素早く怯む男に接近すると右手に魔力を込めてみぞおちに全力で右ストレートをぶちかました。
殴られた男は吹っ飛んで木に叩きつけられて気絶した。
「この………クソガキ!!」
エネルギー弾を喰らった男がメレンに剣を向けようとする。
「俺を忘れるなよ?」
俺はそいつに魔力を込めたハイキックをかました。肩甲骨に命中しバキッと嫌な音がした。そいつは痛みで失神し、動かなくなった。
よし、あとはあのデブだけか………って、あれ?あいつ、どこに行った?
俺はメレンの方を振り返り、慌ててメレンに叫ぶ。
「メレン!!後ろ!!」
あのデブが後ろからメレンに組み付いた。メレンに剣を突きつける。
「おい、小僧、こいつがどうなって」
そのデブは最後まで言えなかった。デブが一回転し、頭から地面に叩きつけられた。メレンがデブの腕を掴んでいる。デブの手から剣を叩き落とした。
メレンはデブの頭に蹴りをかまして気絶させた。
「拘束が甘いのよ。」
デブに向かってメレンがそう告げた。
俺は緊張がほどけてその場に座りこんだ。切られた腕が痛む。俺はメレンに声をかける。
「メレン、今のは………。」
「柔道。知らない?」
「ジュードー……東洋の護身術か。」
詳しくは知らないが近接格闘技術というのはわかる。
「それよりカイン、その腕、大丈夫?」
「あぁ、止血剤と包帯、あと縫合が出来ればいいんだが………。」
俺は男達の荷物を漁る。しかし、ナイフや酒、タバコ、ロープ、そして何故か蛇の死骸。それ以外入っていなかった。
「カイン、じっとして。」
メレンがそう言って、俺の左腕を握る。すると、腕の痛みが少しずつ引いていき、血が止まった。魔法での治療だ。流石に縫合はできないようだが、大分楽になった。そしてメレンは大きめのハンカチを包帯代わりに、俺の腕に巻いてくれた。
「あ、ありがとう……。」
俺がそう言うとメレンはクスッと笑った。
「どういたしまして。ところで、ネコ達はどこにいったんだろ。」
あれ?ホントだ、さっきまで居たんだが………。
「おー、終わったか。」
向こうからネコ共が歩いてくる。
「どこに行ってた?」
「隠れてた。お前ら、犬やネコを戦力にするとか考えていたのか?」
俺は溜め息をつくと、メレンに向き直った。
「さ、こいつらを縛り上げて、今日はもう休もう。ネコ。こいつらを縛り上げるから別次元に放り込んでくれ。」
「え?別次元に?」
「そうだ。できないのか?」
「いや、できるが……。」
「じゃ、よろしく。」
俺はメレンが魔法で集めた落ち葉の上に横になった。疲れたためとても眠い。
「おやすみ……。メレン………。」
俺はそう告げて、すぐに眠りについた。