第101話
(カイン視点)
メレンに支えてもらい、やっとの事で宿まで戻ってこれた。クーヤさんと戦ってた時、正直無事に帰れるか超心配だった。
……………無事に帰ってこれたというのに、メレンはなぜか超ご機嫌ナナメ。あれ以降一言も言葉を発していない。
「じゃ、フロウ。あとよろしく。」
ドンッ。
「痛…………。お前、どうしたんだよ…………さっきから…………。」
しかしメレンはそんな俺の事なんぞ完全無視して下へと降りて行ってしまった。チラッとこっちを見たが、建物の間に寝そべるホームレスを見るかのよーな冷たい視線だった。
「何だよアイツ……………俺が何したって言うんだよ……………。」
俺後ろから抱きつかれて蹴られて無理矢理キスされただけなんだけど……………。
2つはちょっと嬉しかったけど…………って、そうじゃねぇ!!
俺はした側じゃないんだよ。された側なんだよ。なのに俺にイライラぶつけるのはお門違いだと思うんだ。俺は。
「女性は繊細な生き物ですから……………。」
フロウがこんな事を呟いた。
「…………は?」
「……………もしかして、気づいてません?」
「……………何を?」
「失礼ですが、朴念仁とか言われた事ありません?」
「……………ある。」
メレンにも言われたし、母さんにも言われたし、クラスの女子からも言われたし、あいつからも……………。
……………………。
「……………お前は分かってんのかよ?」
「まあ…………なんとなく。女性とは長い付き合いですので。」
女性の心分かってるなら何故セクハラで追放されたんだ……………。
「…………セクハラはまぁ……………本能?」
読まれたッ!!?
「……………とりあえず、入りましょうか。治療しましょう。」
「…………ああ。」
部屋の中に入り、怪我を治療してもらう。怪我と言っても一発蹴られただけだが。
「うわ、蹴られた跡見るとキックの威力が分かりますね……………」
「どれほどのものがよく分からんけど…………例えるなら?」
「銃弾(この世界には火縄銃程度の銃はある。キュリアちゃんのアレは特別な物だろう)並のスピードで蹴られたって言えば伝わりますか?」
……………この世界の銃がどんなモンか知らんが拳銃並みだとして大体秒速300メートル?普通の人間なら勢いで体が千切れ飛んでいるだろう。なんて威力だ…………。
それを喰らっても骨折すらしない俺も相当な物だと自分でも思う。
……………俺人間辞めてるんじゃねえかと感じてなんか悲しくなってくるがまあいい。
フロウが治療して、瞬く間に痛みが引いた。
「まぁ、骨折も内臓破裂も起こさなかったので放っておいても大丈夫だとは思ったんですけどね…………。」
あんなバレットキック喰らって大丈夫っておい…………。あんなモンはアンディ・フグ(身長180cm、体重98kgのヘビー級のキックボクサー)にだってできないぞ。……………やっぱり俺人間辞めてる?
「ま、これで完治しましたし。もう心配ありません。今日はゆっくりと休んでください。」
「ああ。」
ゆっくりと休むかぁ………………男と狭い部屋で二人きりかァ…………。修行中はシニアさんの家で寝泊まりしてたからな(ルルカちゃんの遊び相手と、シニアさん曰く、フロウに感化されるといけないから。らしい)……………。
「男の方と二人きり………ですか。」
コイツも同じ事考えていたらしい。
「男女同じ数いるんですから男女ペア三組にすればよかったじゃあないですか~。」
「お前みたいなセクハラ野郎がいなけりゃあ採用したかもな……………。」
「別にいいじゃあないですか~。キュリアさんと一緒に寝れるジェルスさんがうらやましい~、アイナさんと一緒に寝たいです~。」
本当にコイツは……………。
「よぉし、当たって砕けろとか言いますし、ここは一回部屋に言って頼んでみ…………てちょっとちょっとカインさん?やだなー、冗談ですよぉ、冗談。だから離してください。お願いし」
「そおい!!」
「ワーーーーーーッ!!!」
再び窓から投げ飛ばして黙らせた。少し遠くにさっきの受付の女性がいて、この光景を見て怯えた顔になる。
「あ、さっきの方じゃないですか。仕事終わりですか?どうです?これからご一緒しませんか?」
頭から血を流しながらフロウがナンパしようとする。
「斬撃、螺旋!!」
「アンギャアーーーーーーーッッ!!」