第99話
正直宿での休憩場面とかサブタイ思い付きません。
(メレン視点)
私たちは宿に戻り、カインとジェルスの治療をする事にした。キュリアちゃんは魔法を使えないため、ジェルスの治療は私がロビーで行う事にした。
アイナにも手伝って欲しかったが、寝る、とだけ言って自分の部屋に入っていった。私が無理矢理起こしてクーヤさんと戦わせたため、文句は言えない。
カインはフロウに任せよう。フロウも魔法の腕は相当高い。
ドンッ。
「痛…………。お前、どうしたんだよ…………さっきから………。」
カインが不平を言ったが、私は気にせずジェルスの治療の為にロビーへと向かう。
「じゃ、治療するから、じっとしてて。」
そう言って拳に魔力を纏わせ、ジェルスの治療を開始する。去年は魔力を溜めるのにも少し時間がかかったが、今は大気の魔力も利用して一瞬で開始できる。
「……………そういや、アイナが治すのが急すぎると痛みがあるとか言ってたっけ……………。」
「…………優しく頼むよ…………。」
「…………………。」
…………………。
「…………………ま、いっか!!」
フルスピードで治しちゃえ!
「おい、たいじょ…………、!!あーーーーー!!痛い痛い痛い!!もっと優しく!!待って!!ちょっと待って!!ストップ、一回ストップ!!んんんああああああああ!!レエエェェェイオォォォォォォォフ!!!」
「あ、あわわ…………。」
チッ、しょうがないなあ…………。
「はー、はー、痛かった…………。」
「だ、大丈夫ですか!!?」
キュリアちゃんが泣きそうな顔でジェルスに駆け寄る。
「メレン、お前、何か怒ってる?」
「………………別に。」
キュリアちゃんがこっちを見て首をかしげる。何か考え込んでいるみたい。そして何かに気づいたかのようにハッとした表情になり、クスクスと笑う。
「…………何?」
「いいえ?」
……………治療再開しよう。今度はゆっくりと。
それにしてもかなり酷い傷だ。全身エネルギー弾で撃たれて傷だらけ。特に右足がボロボロだ。骨折が無いのは奇跡だろう。ジェルスがここまで強くなった証かも知れない。
「……………ま、今日はここまでかな。明日の治療で完治するから。今日はゆっくり休んで。」
「うん。サンキュー。じゃ、キュリア、行こうか。」
「はい。」
ジェルスが部屋に戻り、キュリアちゃんが後をついていく。小走りで横に並びジェルスの右腕にしがみついた。ジェルスは少し恥ずかしそうだったが、微笑みあって部屋へと入っていく。仲のいいこと。
…………………。
なんだか胸にもやもやしたものが広がる。…………部屋に戻ろう。
部屋に戻ると、アイナが寝息を立ててベッドで寝ている。起こさないようにドアを閉めて、私は椅子に腰掛けた。
思わずため息が出た。何だろう、この感じ。嫉妬?羨望?
あの場面が頭の中で何度も繰り返される。クーヤさんがカインの耳元で囁き、頬にキスをする。
あれを思い出す度、胸のモヤモヤが広がっていく。何よ、キスされて顔真っ赤にして……………。しかも、その後もずっと赤くなりっぱなしで。
「……………何イライラしてるの?」
急に声をかけられてビックリした。振り返るとアイナがすぐ後ろにいた。
「…………起きてたの?」
「ついさっきね。あなた、どうしたの?帰る時から機嫌悪かったけど……………。…………ま、大体予想はつくけど。」
「……………。」
「……………妬いてるの?」
「へ?」
「だから。ヤキモチやいてるの?」
「………………わかんないの。」
「わかんない?あなた、カインの事が好きで、それであの……………名前何て言ったっけ?」
「クーヤさん。」
「敵にミズを付けて呼んでるの?…………ま、いいけど。で、そのクーヤに嫉妬してるんじゃないの?」
「……………違うの。私、カインを好きって訳じゃないんだけど……………胸にモヤモヤした感じがして……………。」
「……………本当?ま、嘘をついてもしょーがないし、嘘じゃあないか。それにしても…………何なのかしらね…………。」
「……………………。」
モヤモヤは晴れてくれない。リリちゃんがカインに寄り添っていた時もこんな感じだった。でも、今回はあの時よりも酷かった。
………………もうこの感じに耐えられない。少し動けばすっきりするかもしれない。
「……………私、ちょっと出掛けてくるね。」
「どこに行くの?」
「ちょっと体動かしてくる。」
それだけ言って私は外に出た。そのまま港の外に出て近くの森の中に入る。
よし、ここなら何やっても迷惑にはならないだろう。
私は気の向くままに走り回った。全力で。時折叫び声を上げ、魔力を込めたキックで大木を蹴り倒し、なんとかこのモヤモヤを晴らそうとひたすらに体を動かした。
それから30分くらい経っただろうか?とにかく、しばらくして、疲れて私は立ち止まり、大きく息をする。
少し休憩した後、私は宿へと戻った。体は疲労で所々痛み、体は汗でびっしょりと濡れていた。しかし、このモヤモヤした感じは消えてはくれなかった。